小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第839回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

自撮り棒は卒業して次はこれ! 安くて軽くなったDJI「Osmo Mobile 2」

あの名作がリニューアル

 スマホ向けスタビライザーとは、スマートフォンで動画を撮影する際に、手ぶれを補正して安定した映像を撮影するための器具で、おそらくもう少し流行ってもいいジャンルの製品だ。自撮り棒の次はこれが来ても全然おかしくないと思うのだが、そこまでには至っていない。

DJI「Osmo Mobile 2」

 理由はいくつか考えられるが、個人的にはDJIの「Osmo Mobile」があまりにもよくできていて、これを超える、あるいは並ぶのが難しいということ。そのOsmo Mobileが37,800円(税込)と、比較的高額であることが大きいと思う。現在キャンペーン中で直販価格24,800円(税込)に下がっており、ますます他社がこの価格でOsmo Mobileの性能を超えられる可能性は低くなってきている。

 そんな中、DJI自身がOsmo Mobileを超える製品をリリースする。「Osmo Mobile 2」がそれだ。価格は大幅に引き下げられ、公式サイトでの予約価格が16,800円(税込)。この価格なら、スマホアクセサリーとしても全然高くない。発売開始時期は2月末だ。

 初代Osmo Moblieは、筆者もレビューしたあと、自分用に購入し、様々なレポート動画で使用してきた。特徴や効果などもよく理解できているつもりだ。

 動画でもスマホ撮影が当たり前になる中、戦略的価格で普及を狙うOsmo Mobile 2を、早速試してみよう。

納得のコストダウンポイント

 Osmo Mobile 2の評価は、初代に対して価格以外にどういう違いがあるのか、コストダウンした部分はどれぐらいデメリットになるか、というところがポイントになるだろう。今回は主にその部分にフォーカスしてみたい。

 まず大きく違うのはカラーリングだ。初代の黒からグレーに変更された事で、見た目が安っぽくなったことは否定できない。これは主に、素材の変更によるところが大きい。初代はアーム部が金属製だったが、Osmo Mobile 2は高強度の変性ナイロンとなった。

スマホスタビライザーの名機がリニューアル、Osmo Mobile 2
アーム部が高強度変性ナイロンに

 このため重量は、初代が501gであったのに対し、485gと軽量化されている。たった16gではあるが、実際の使用時にはそれ以上の差が出る。

 初代Osmo Mobileが登場した時、iPhoneの主力モデルはまだ6s/6s Plusであった。いわゆるPlusモデルが登場したのは6からで、サイズ的にはすでに今のPlusモデルと同じだったが、カメラは6と同じシングルだった。したがって、撮影に積極的にPlusモデルを使う必要性が薄かった時代である。

 ところがiPhone 7 Plus以降、デュアルカメラが装備され、スマホ撮影の主力がPlusへ移った。初代Osmo Mobileも、Plusが装着できるだけのマージンはあったが、実はそのままではバランスがとれない。したがってPlusモデルを使用する場合、アーム部に何らかのカウンターバランスを取り付ける必要がある。筆者は53gの金属製フックを取り付けてカウンターウエイトとしている。

双方でPlusモデルを装着。左が初代、右が2

 一方Osmo Mobile 2は、最初からPlusモデルで撮影することを視野に入れて再設計されているため、カウンターウエイトなしでもバランスが取れるよう、アームの長さ等が初代とは違っている。したがってトータルでは、本体の重量差+カウンターウエイトの重量 = 約70gほどの違いが出る事になる。この重量差は、片手を伸ばした状態で撮影する際に、かなり効いてくる。

 アーム部の作りを見ておこう。スマートフォンを挟み込む部分は、初代が背後のネジで挟み込みを開閉する仕組みだったが、今回は単なるバネ式となっている。自撮り棒と同じ構造になったとも言える。

ホルダー部はバネで挟み込む構造に

 その代わり、背面のネジはスマホホルダー部のローテーションを固定するための機構となっている。初代はスマホを横方向にしか固定できなかったが、今回は縦位置にもできるのだ。セルフィー動画は縦撮りが多いが、それに対応したという事だろう。

背面のネジは、スマホの向きを90度回転する際のロック機構となった

 アームの可動範囲は、パンが±160度、チルトが±155度(横向き時)となっている。特にチルトは、前作が-125度 to +35度だったので、下向きにかなり大きく振れるようになった。

 グリップ部も、似ているようでかなり違う。太さは同じだが、初代が滑り防止の合皮が貼ってあるのに対し、2は全部が樹脂製である。

グリップ部は全部樹脂製に

 コントロール部もかなり違う。まず初代にあったトリガーボタンが省略された。これは動作モード切り換え、ジンバルのリセット、イン・アウトカメラの切り換えを行なう為のボタンだ。

 この機能は、正面の電源ボタンに移植された。その電源ボタンも、初代は静止画撮影ボタンだったものだ。だが静止画を撮るためにわざわざジンバルを使うというケースは少ない。これは元々、カメラヘッド付きのOsmoからそのまま継承された機能であり、Osmo Mobileではあまり使用されなかった。したがってここを電源及びモード切り換えボタンとしたのは、合理的だ。

静止画ボタンが電源とモードボタンの兼用となった
左脇にはズームレバーが付いた。スマホの電子ズームをここでコントロールできる

 電源周りは、かなり大きく変わった。本体にMicro USB端子が付き、ここから内部バッテリーに充電できるようになった。従来は専用ケーブルを使って充電しなければならなかったので、このケーブルを忘れて出張などに来るとかなり痛いことになっていたものだ。

MicroUSB端子による本体充電

 また2では本体にUSB A端子が付き、ここからスマホ等へ充電ができるようになった。今はモバイルバッテリもあるので、わざわざジンバル側からスマホを充電することはないと思うのだが、そういう慣習があるのか、なぜか中国メーカーのこの手の製品には、スマホへの給電端子を付けるのが定番のようである。

スマホへの給電も対応

 加えてバッテリ周りの大きな違いは、バッテリ交換ができなくなったことだろう。従来は底部を開けてそこからバッテリが引き出せるようになっていたため、予備バッテリに入れ替える事ができたのだ。

 ただ新モデルは、2時間充電15時間動作という電力設計なので、数時間でバッテリを使い果たすようなことはないだろう。また途中でバッテリが少なくなれば、モバイルバッテリを使ってMicoro USB端子から充電すればよい。

 当然、ハンドル底部の作りも、フタがなくなったことで変化がある。底部に三脚用ネジ穴が付いたのだ。従来機はハンドルの横部分にネジ穴があったため、三脚などもヘッドが90度倒せるタイプでなければ、固定できなかった。

底部に三脚穴が付いた

 なぜこんなところにネジ穴があったかというと、底部はフタとして開閉するため、三脚穴としての強度がとれないことも一つだが、そもそも横のネジ穴は、Osmo(カメラユニット付き)で撮影する際に、スマホホルダーを取り付けてモニターとして使用するためにあったものだ。だがスマホ撮影ではカメラとモニターは一体なので、この機構は不要となった。これが三脚ネジ穴として残ったわけである。

機能的にはほぼ一緒

 ではOsmo Mobile 2での撮影をテストしてみよう。撮影には専用の「DJI GO」というアプリを使用する。ただスタビライズ機能自体は、本体電源を入れれば使えるので、他のカメラアプリでも動作には変わりない。セルフィー用に「盛れる」アプリを使いたいという場合でもOKだ。

 ただしDJI GOアプリと組み合わせることで、特殊な撮影ができる。スロー、タイムラプス、モーションラプス、ハイパーラプスの4モードだ。これらはすでに初代Osmo Mobileから利用可能になっており、2になったから違うという点はない。各モードの動作については、初代のレビューを参考にして頂きたい。また前述の通り、ズームスライダーでのズーム操作も可能だ。

 おそらくタイムラプスとハイパーラプスの違いがわからないと思うが、タイムラプス撮影時にはOsmo Mobileは単なるスマホ固定具になるだけだ。つまり、カメラを動かしてもスタビライズしない。

 だがわざわざOsmo Mobileを使って単なるタイムラプスを撮るメリットはあまりない。というのも、やはりモーター駆動で静止しているだけなので、強風を受けると動いてしまう。これならOsmoに頼らず、普通のスマホ固定器具を使って固定した方が安定するだろう。

 初代Osmo Mobileを使ってタイムラプスしたのが、この記事のiPhone 7 Plusでのタイムラプス動画である。記事中でも書いているが、風にあおられてジンバルが動いてしまっているのがわかる。

 一方ハイパーラプスは、撮影中にもジンバルのスタビライズ機能が動作する。せっかくOsmo Mobileを使ってタイムラプスをやるなら、こちらのモードを使うべきだろう。

 もう一つの特殊機能は、「アクティブトラック」である。これは被写体の中の特定ポイントを追いかけ続ける機能で、これがスマホとジンバルを組み合わせる機能の真骨頂と言える。

 この機能を使って撮影したのが、「GoPro Karma」の記事中にある、離陸の模様の動画である。筆者は両手でドローンを操縦しているわけだが、このアクティブトラック機能を使い、ドローンを自動的に追尾させて撮影している。このように、人手が足りないが被写体をフォローする必要があるといった時に、かなり便利だ。

GoPro Karma sample 離陸の模様

 加えてOsmo Mobile 2にしかない機能としては、縦撮りがある。初代が発売された時に比べると、動画撮影も圧倒的にセルフィー需要が増しており、すなわちそれは縦撮りの需要も爆発的に増加した事になる。

 実際にセルフィーで縦撮りしてみると、構図的にも無駄がなく、収まりがよい。動画の消費が、スマホ - ネットサービス - スマホで完結するようになった今、もうそろそろ縦撮りと横撮りは、頻度が並ぶようになるのではないだろうか。

縦撮りの動画はセルフィーやレポートに最適

 縦撮りのもう一つのメリットは、iPhone底部のLightning端子にアクセスできるようになるため、外部マイクも使えるようになることだ。これまで横撮りでは、ちょうどスタビライザーの根元で端子を塞いでしまうため、マイクが使えなかったのである。

縦撮りなら外部マイクも使用できる

 ショーイベントでも動画レポートが多くなってきているが、今後は縦撮りのレポートがそこそこ増えていくのではないだろうか。

総論

 元々DJI Osmoというのは、ドローン搭載用に開発されたカメラとジンバル部を取り外し、ハンドルに取り付けてハンディ撮影できるようにしたものだ。次いで発売されたOsmo Mobileは、このOsmoのハンドル部分をベースに、ジンバル+カメラ部分をスマホ向けに設計し直したものである。

 すなわち初代Osmo Mobileまでは、ドローンのカメラ機構 → Osmo → Osmo Mobileといった具合に、設計的には継ぎ足し継ぎ足しでやってきている。一方Osmo Mobile 2は、最初からスマホ向けジンバルとして設計し直しており、無駄に過去を引きずってコスト増になっていた部分をバッサリ切ったことで、この価格を実現したのだろう。

 特殊機能はすべてアプリで実現するので、初代に劣る部分はほとんどない。強いて挙げればバッテリ交換できないところだろうが、内蔵バッテリーで15時間動作するので、実用上は問題ないだろう。

 縦撮りもサポートしたことで、いよいよ動画セルフィー時代の必須アイテムとして、敵なしの様相を呈してきた。

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DJI Osmo Mobile 2

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。