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注目高まる「4Kテレビ」の現状と課題

満足度の高い大画面への要求が4K化を後押し

 2013年6月、ソニー「BRAVIA X9200Aシリーズ」、シャープ「AQUOS UD1シリーズ」、東芝「REGZA Z8Xシリーズ」と、3社から相次いで4Kテレビが発売開始された。テレビ市場において“4K”というキーワードがにわかに盛り上がりを見せている。

 もっとも、4Kテレビが初めて市場投入されたというわけではない。2011年発売の東芝「55X3」以来、東芝はすで第3世代目の4Kテレビ。ソニーも'12年冬に84型の「KD-84X9000」を、シャープも'13年2月から262万円の高級機「ICC PURIOS(ピュリオス) LC-60HQ10」を発売している。それら製品とこの夏の新製品の違いは、50〜70型のテレビの主力シリーズの一部として4Kモデルがラインナップされ、価格的にもインチ1万程度と、従来よりは手が出やすくなったことだ

 東芝はREGZA上位シリーズの代名詞「Z」の「REGZA Z8Xシリーズ」として4K対応。シャープのUD1も特別な「PURIOS」ではなく、「AQUOS」ブランドでの発売となる。ソニーや東芝の50型台は50万円を切る価格になってきており、高価ではあるものの、“特別な人向け”ではなく、量産モデルの最上位モデルが4Kになったというラインナップ展開といえる。

BRAVIA「KD-65X9200A」
AQUOS UD1「LC-70UD1」
REGZA Z8Xシリーズ

 ただし、テレビの4K化については、懐疑的な声もある。代表的な例としては、「フルHDで十分」、「3Dと同じで普及しない」といったものが、詳しい人の中では「HDMIで4K/60pが使えない状態では買えない」、「4Kの後は8K放送も控えているので、4Kは待ち」といった意見もある。

 各社が普及に取り組む4Kテレビの現状と可能性、課題についてまとめた。

「4K」とはなにか

 4Kとはなにか。4K/2Kとも呼ばれ、約4,000×2,000ドットの解像度をもつディスプレイやフォーマットの略称として、「4K」というキーワードが使われている。現状、テレビにおいては、フルHD(1,920×1,080ドット)の4倍となる3,840×2,160ドットの解像度をもつものが主流だ。アスペクト比がフルHDと同じ16:9であること、解像度もフルHDのちょうど4倍となるため、スケーリングなどの処理がシンプルになるため、テレビにおいてはこの解像度がスタンダードとなっている。

ソニーのCineAlta 4Kカメラ「PMW-F55」

 一方、デジタルシネマ向けのDCI規格は4,096×2,160ドットで、アスペクト比は1.90:1となっている。映画製作や放送向けのカメラや編集機材、業務用ディスプレイなどは、4,096ドットサポートのものが多いが、多くは3,840ドットにも対応しているので、一般的なテレビ利用であれば解像度の違いを意識する必要はあまりないだろう。

 ちなみに、NHKを中心に進めてきたスーパーハイビジョン(SHV)についても、4K/8Kを含めてSHVと呼ぶようになったほか、国際電気通信連合(ITU)では、4K/8Kテレビを「UHDTV」と命名するなど、4K以上の解像度を持つテレビ受像機についての呼称は、国や地域によって異なっている。

 映画製作においては、ハリウッド大作を中心に4K化は進んでおり、上映環境についても、国内でも多くの劇場が4Kに対応している。そのため映画製作用のデジタルシネマカメラや業務用ビデオカメラなどでも4K対応が進んでいる。4Kのコンテンツについては、徐々に増加傾向で、特に映画製作においてはかなり進んできている。

 ただし、コンテンツの伝送という点においてはまだ発展途上といえる。まず、放送は4K伝送についての規格化の最中で、日本国内においては2014年度の放送開始が見込まれているという状況。パッケージビデオメディアについても、Blu-ray Discの4K規格は検討段階であり、対応の見通しは立っていない。

 また、テレビとの映像出力機器のインターフェイスにおいても問題がある。というのも、現在テレビのデジタルビデオインターフェースの主流はHDMIだが、最新規格のバージョン1.4で1本のケーブルで伝送できるのは、4Kの24fps/30fpsまで。次世代(バージョン2.0といわれている)HDMIについては、規格化作業が遅れており、2013年7月9日現在まだ決まっていない。

 PCを中心に採用が進んでいるDisplay Portでは4K/60pに対応しているほか、HDMIでも4本のケーブルを使ってフルHDを同時に4枚送り込む方法などで4K/60p対応する製品もあるが、購入したテレビの拡張性などを考えると、このHDMIの次世代バージョンへの対応が望まれるところだ。次世代HDMI対応のLSIなどの開発も進んでいるようだが、とにかく規格が決まらないので、対応時期なども告知できないという状態。'14年には4K放送が見込まれ、これらは専用STBで対応する見込みであること、また、'13年年末にはPlayStation 4のような4Kビデオ対応機器の登場も予定されており、購入したテレビがその後もある程度拡張できるような安心感の提供も、望みたいところだ。

“大画面化”の要求が4Kを後押し

 なぜ、2013年に入ってから各社が4K対応を強化してきたのだろうか? それには液晶パネルの供給が整い、低価格化が進んできたことや、映像処理技術の進化などの要因に加え、市場の変化が挙げられる。

 現在のテレビ市場は停滞しており、特に日本国内においては、2011年の地デジ完全移行に伴う駆け込み需要の反動をうけ、2012年度は前年比34.7%の576万6,000台まで縮小(JEITA発表)。テレビメーカーは各社とも事業構造の転換を迫られている。

 そうした市場環境下で、台数ベースでも金額ベースでも伸びている唯一の領域が、50型を超える「大画面」市場だ。ジーエフケー マーケティングサービス ジャパン(GfK)の調査によれば、家電量販店における薄型テレビ2013年5月の販売構成比において、50インチ以上が9.6%を占めたという。

 この拡大する大画面市場を狙った施策の一つが「4K」といえる。

 50型を超える大画面になると「(フルHDだと)画素が見えやすい」という問題がでてくる。つまり、「大画面で感動的な体験を」とアピールする一方で、画素が見えてしまうと、画質に物足りなさが残る。4Kで高精細化することでこの問題を解決し、大型モデルの付加価値を向上するのが4K化の狙いといえる。

 4Kのコンテンツについては、放送やパッケージメディアの対応が遅れていることから、基本的にフルHDのBDや放送の4Kアップコンバートを前提としている。

 つまり、現在販売されている4Kテレビは、「4K解像度のコンテンツを見る」というよりは、「フルHDのコンテンツを大画面で高画質に楽しむ」ことを最重要視しているものだ。そのために、各社は映像処理技術の強化や、4K対応のLSI開発に力を入れている。

 ソニーは、BRAVIA X9200Aシリーズに4K超解像技術を搭載した「4K X-Reality PRO」という映像エンジンを搭載。X-Reality PROとXCA8-4Kの2つのLSIで構成されるもの。独自のデータベース型超解像処理などを応用し、高精細な4K映像を出力する。また、色域や階調表現を向上した「トリルミナスディスプレイ」を採用している。

4K X-Reality PROを搭載
トリルミナスディスプレイ
磁性流体ユニットを搭載したサイドスピーカーもBRAVIA X9200Aシリーズの特徴

 東芝は、REGZA Z8Xシリーズで新開発の「シネマ4Kシステム」を搭載。4K用に新開発の映像エンジン「レグザエンジンCEVO 4K」を、メインボードとタイムシフト用基板のそれぞれにテレビ用LSIの「レグザエンジンCEVO」を搭載。シネマ4Kシステムでは、「デジタル放送」、「BD映画」、「ネイティブ4Kコンテンツ」の高画質化を目標に開発したとする。

REGZA 65Z8X
シネマ4Kシステム。3つの基板で構成される
タイムシフトマシンでざんまいプレイ

 シャープも新開発の映像エンジン「AQUOS 4K-Master Engine PRO」で、入力されたフルHD信号を4Kにアップコンバートする。さらに映り込みを抑える独自の「モスアイパネル」を4K対応とし、4K映像を周辺光や映り込みの影響により画質を損なうこと無く楽しめる点も特徴といえる。

AQUOS UD1「LC-70UD1」
モスアイ(左)と通常のパネル(右)の映り込み比較
THX 4Kディスプレイの認定証

 各社とも、今あるフルHDコンテンツの高画質再生にかなり重点を置き、チューニングを行なっている。また、ソニーでは、「アメイジング・スパイダーマンや「メン・イン・ブラック」などの4Kマスターかつ広色域対応の「Mastered in 4K」のBDソフト10枚をX9200A購入者にプレゼントするキャンペーンを実施している。

 また、動画で4Kコンテンツが少ないこともあり、静止画/写真対応をうたうメーカーも多い。3,840×2,160ドットという4Kテレビの解像度は、画素数にすると約829万画素。2,000万画素を超える画素数を持つものも珍しくない現在のデジタルカメラからすれば標準的な解像度のため、4K超の写真は当たり前のもの。多くの4Kテレビでは、USBやSDカードスロットを備えているので、大型フォトフレームとして楽しむ方法などを各社が訴求し、写真専用の画質モードなども備えている。また、AQUOS UD1では13枚の4K写真をプリインストールしている。

 液晶テレビの上位シリーズということで、各社の4Kテレビでは4K以外の機能も充実している。代表的な特徴は以下のとおり。

ソニー BRAVIA X9200A

  • 4K X-Reality PRO
  • トリルミナスディスプレイ
  • 磁性流体ユニット採用の大型サイドスピーカー
  • S-Masterアンプ(総合65W)
  • 3D対応(パッシブ型)
  • Sony Entertainment Network

シャープ AQUOS UD1

  • 4Kモスアイパネル
  • THX 4Kディスプレイ認定
  • AQUOS 4K-Master Engine PRO
  • 4Kフォトフレーム(400MBメモリ内蔵)
  • 3D対応(アクティブシャッター)
  • 2.1chフロントサラウンドシステム

東芝 REGZA Z8X

  • シネマ4Kシステム
  • 6チャンネル全録「タイムシフトマシン」
  • レグザクラウドサービス「TimeOn」
  • ゲーム対応(4Kゲーム・ターボ)
  • 世界初HybridCast対応
  • 3D対応(84/65型はパッシブ型、58型はアクティブシャッター)
ソニー シャープ 東芝
シリーズ BRAVIA X9200A
/X9000
AQUOS UD1 ICC PURIOS REGZA Z8X
サイズ 84型:KD-84X9000
65型:KD-65X9200A
55型:KD-55X9200A
70型:LC-70UD1
60型:LC-60UD1
60型:LC-60HQ10 84型:84Z8X
65型:65Z8X
58型:58Z8X
解像度 3,840×2,160ドット
映像エンジン 4K X-Reality PRO AQUOS 4K-Master
Engine PRO
ICC シネマ4Kシステム
特徴 トリルミナス
ディスプレイ(65/55型)
大型サイドスピーカー
(65/55型)
4Kモスアイパネル
THX 4Kディスプレイ認定
光クリエーション技術 タイムシフトマシン
TimeOn
価格
(7月9日現在)
84型:168万円
65型:約75万円
55型:約50万円
70型:約85万円
60型:約65万円
262万5,000円 84型:約168万円
65型:約75万円
58型:約50万円

4Kテレビ元年?

 カメラなどの周辺機器連携をアピールするソニーや、タイムシフトマシンなどのREGZAシリーズの魅力の延長線上に4Kを加える東芝など、機能や販売戦略の違いはあるものの、「大画面テレビの満足度向上」と、それに伴う販売単価のアップという狙いにおいては、各社の4Kテレビに大きな差はない。55型〜70型を中心に、この夏のテレビ商戦でも一定の地位を得つつある。

 ただし、各社とも4Kテレビがすぐに主流になる、とは考えていない。2013年度の販売目標について、ソニーは非公開だが、東芝はZ8Xシリーズの月産台数を3,000台と見込んでおり、単純に計算すると4Kテレビの販売数は3万台規模(モデルチェンジなどを考慮せず)。シャープは、'13年度の4Kテレビの国内市場規模を約5万台と予測。「その中の2〜3割を取って行きたい」とコメントしており、同社の販売台数は10,000〜15,000台規模と見込んでいる。'13年度の国内テレビ市場が昨年度に近い600万台規模と想定すると、台数ベースでは1〜2%と予想される。ただし、単価も高いので金額ベースでの存在感は高まっていくだろう。

(臼田勤哉)