2017年12月5日 08:15
11月27日、日本レコード協会(RIAJ)が公開した、2017年第3四半期(7~9月)の有料音楽配信売上実績は、なかなかに興味深い情報となった。ストリーミング・ミュージックの売上が約67億円で、ダウンロード販売の売上(約68億円)とほぼ同額に達したからだ。
日本のストリーミング・ミュージックはまだ「マス」とはいえないのだが、それでも、順調に成長している。2月に発表された2016年の累計販売実績値では、ストリーミング・ミュージックは約200億円で、全体(528億8600万円)の4割だった。そこからさらに伸ばし、ついに、年末から来年にかけて、日本でもダウンロード販売を超えることが視野に入ってきた。
ただし、これでも「音楽全体」となると、まだまだ小さな値である。RIAJの統計では、2016年のCD/レコード売上は約1777億円。ネット配信全体でもその3割に満たず、ストリーミング・ミュージックはようやく11%程度だ。
10月の段階では、ディスク全体の販売金額は、前年同期比で95%となっている。
2016年が2015年に対し97%だったので、仮に95%で終わる、と推定すると、1688億円になる。それに対して、ダウンロードとストリーミングは前年比111%程度だから、2017年の売上は約578億円と推定できる。この場合で、ネット比率がディスクの約35%、ストリーミングが約17%程度……というところだろうか。
ディスクの減少に歯止めはかからない。ネットはストリーミング・ミュージックの順調な伸びで全体としては年率10%を超える伸びになっているものの、音楽市場全体の累計だと、微減、もしくは横ばい、という値になりそうである。
日本においては、ストリーミング・ミュージックの伸びがまだ小さい。これが、音楽市場の成長を阻害しているのは明らかだ。アメリカの場合、全米レコード協会(RIAA)の調べによれば、2016年の売上は全体で77億ドル(約8557億円)。もっとも多く売り上げているのがストリーミング・ミュージックであり、全体の半分以上を占める(以下図版はRIAAの資料より抜粋)。
アメリカの音楽市場は年率11%の割合で成長しており、その成長源泉は、完全にストリーミング・ミュージックによる消費の拡大となっている。もちろん、アーティストひとりあたりの売上が小さいのでは……という問題も指摘されているが、ストリーミング・ミュージックやYouTubeから生まれる新しいスターも出てきており、この形が「これからの音楽産業」であるのは間違いない。
では、いかに日本はトランジションするのか? スマートスピーカーのような存在は、いかにストリーミング・ミュージックの成長に影響を及ぼすのか?
一部インディ系アーティストでは、特に海外を中心としたヒットとして、ストリーミング・ミュージックからヒットを飛ばす動きも出てきている。
・【 2017年最大の衝撃】大阪出身でSpotifyグローバルチャート1位、Jojiとは何者か
そこにどう続くのか? 音楽出版社がそのヒットをどう持続的・安定的なものにするのか? そこが、2018年の大きなテーマになる。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。
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2017年12月1日 Vol.152 <誰がために鐘は鳴る号>
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01 論壇【小寺】
検討が進むリーチサイト規制の今
02 余談【西田】
日本でも「ダウンロード越え」が見えたストリーミング・ミュージックだが……?
03 対談【西田】
トリニティ・星川哲視氏と語る「スマートフォン関連市場の今」(2)
04 過去記事【小寺】
家庭内の「家事ハラ」事情を考える
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと