ニュース

世界初、RGB印刷方式の21.6型4K有機ELパネル。日本発のJOLEDが開発

 JOLED(ジェイオーレッド)は17日、RGB方式では世界初となる、印刷方式の21.6型4K有機ELパネルを開発。4月よりサンプル出荷を開始した。当初は医療用モニターから、順次製品展開を進めるという。サンプル価格は顧客によって異なるが、60~100万円としている。

4月からサンプル出荷される21.6型4K有機ELパネル

 RGB全ての有機EL材料を印刷で塗り分けるRGB印刷方式を採用した4K/3,840×2,160ドット(204ppi)の有機ELパネル。有機EL材料を大画面に均一に一括塗布する設備技術(パナソニックと共同開発)や、プロセス技術を実用化したことで開発した。

21.6型パネルを使った医療用ディスプレイのイメージ

 光取り出し効率が高いトップエミッション構造を採用。同社は「21.6型で4Kの高精細画面で、優れた色再現性や広視野角を実現する有機ELパネルの製品化を進める」としている。東入來信博社長は、会見で「株主でもあるソニーに採用が決まる方向」と述べた。

パネル厚は1.3mm。このパネルを使ったディスプレイ試作機は最薄部3mm
JOLEDの有機ELパネルの特徴
JOLEDの東入來信博社長

 21.6型の画面寸法は478.1×268.9×548.5mm(幅×奥行き×高さ)、ピーク輝度は350cd/m2、コントラスト比は100万:1、パネル厚は1.3mm。重量は500g。パネルの消費電力は14.6W(40%window、6500K)。寿命はLT95@W350cd/m2(初期の輝度から5%減少までの時間)が1,000時間。

21.6型4K有機ELパネルの主な特徴
開発中の21.1型フルHDのフレキシブルタイプや、54.6型4Kなどのデモも行なった
左が19.3型4K、右が12.2型フルHDのパネル

「Samsung/LGとは戦いません」。医療の次はゲーミングも

 JOLEDは、産業革新機構(INCJ)とジャパンディスプレイ(JDI)、ソニー、パナソニックの4社が、有機ELディスプレイパネルの量産開発加速と早期事業化を目的として'15年に設立した。既報の通り、JDIが6月下旬に連結子会社化することを予定(当初の3月31日から延期)している。

JOLEDの有機ELへの取り組み。3月にドイツ・ハノーバーで行なわれたCeBIT 2017にも出展。安倍首相とメルケル首相は、残念ながらブースの中には入ってこなかったとのこと
パナソニック、ソニーの技術や人員などを継承して開発を続けてきた

 印刷方式による有機ELパネルの研究開発は、JOLEDがパナソニックやソニーの技術を引き継ぎ、研究開発と量産に向けた検証を進めてきた。

 有機ELパネルのEL層を形成する技術には、蒸着方式と印刷方式があり、現在の主流となっている蒸着方式は、真空環境で材料を加熱、気化させてEL層を形成する。必要な部分にのみ膜を形成するため、マスクと呼ばれる遮蔽板を使用する。また、パネルの大型化に伴い、均一な膜を形成することが難しいという課題もあった。

 一方、JOLEDが採用する印刷方式は、材料を直接印刷してEL層を形成するため、真空環境やマスクが不要となり、パネル大型化への対応も容易だという。必要な場所にのみに、必要な分量を塗布するため、材料ロスが少なく、材料利用効率が高いといったメリットもある。

 蒸着方式と印刷方式のコスト差について東入來氏は「調査会社のレポートでは43%(印刷方式が低コスト)と出ている。そこまでではないと思うが、今の感覚としては1割5分~2割という差は当然あっておかしくない」としている。

 印刷方式については、パナソニックが長く研究開発を行なってきた一方、ソニーは印刷方式をやめて蒸着方式へ移行した経緯があり、東入來氏は「議論はあったが、難しい印刷方式を貫くことが成功につながる一点と考えた」と述べた。

 現状、グローバルで有機ELパネルの生産は大型がLG(白色EL蒸着法)、小型はSamsung(FMM-RGB蒸着法)が中心という状況だが、東入來氏は「Samsung、LGとは戦いません」として、まずは蒸着方式での製品化が難しいとされる中型市場から参入し、市場創出を図る方針を示した。テレビやサイネージなど大型市場への参入は、過去の蓄積技術も活かしたアライアンス戦略を検討。小型市場についても「課題は多い」としながらも、高精細化技術の開発を進めて印刷方式パネルの製品化を目指す。

有機ELの現状
JOLEDは中型から参入し、大型、小型についても検討

 医療用以外では、ゲーミング向けモニターや、スマートフォン、スマートウォッチなどのウェアラブル端末、家庭用のテレビ、デジタルサイネージ/ウォールディスプレイといった幅広い分野を視野に入れ、印刷方式の有機ELパネル開発を進める。最初に展開する医療用分野では、超音波診断装置のモニター向けを皮切りに、ヘルスケア全般への採用を見込む。その次の分野として東入來社長は「ゲーミング」、「車載」を挙げている。

ゲーム向けのデモ「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」

 生産枚数について東入來氏は「“量産する”というイメージではなく、月2,000枚ほどの投入量。その範囲でできるマーケットの皆さんとお話ししており、将来の布石として車用なども開発している」と説明。「JOLEDは開発会社であって、事業会社へ移行するわけではない。売上は微々たるものだが、それをベースにして、次のステップへ進むには戦略的な判断、パートナーが必要。資金的なパートナーについても考えていく。おそらく日本では“新たな工場をもういっぺん作る”といったことはもうない。今ある物を活用しながら、技術的に進めるための投資をしながら前に進んでいく」と述べた。

 また、パネル以外に製造設備の外販の可能性については、「装置や、それに合うインク、デバイス設計などのプロセスノウハウなどを含めて、要望があれば提供したい」とした。

開発中のパネルを展示