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パナソニック有機ELテレビは“匠”が作る。ジャパンプレミアムは宇都宮から
2017年6月1日 07:00
パナソニックは31日、テレビの“マザー工場”となる栃木県 宇都宮市の「ものづくり革新センター」を報道向けに公開。6月16日発売の4K有機EL VIERA「EZ1000/EZ950シリーズ」の製造工程やその生産体制などを説明した。
液晶/有機ELテレビ「VIERA(ビエラ)」のうち、有機ELのEZ1000/950シリーズと、液晶上位モデルのDX850/DX800、EX600シリーズ、および19型などの小型モデルを、ものづくり革新センターで生産している。このうち、EZ1000/950シリーズとDX850シリーズは、日本設計・日本生産の「ジャパンプレミアム」シリーズとしてアピールしている。
有機EL VIERAは、最上位「TH-65EZ1000」が月産300台、EZ950シリーズの65型「TH-65EZ950」が250台、55型「TH-55EZ950」が1,000台で、合計の月産台数は1,550台と発表されているが、5月31日時点では、6月発売に向けて300台/日の規模の生産体制を構築していた。
宇都宮は「テレビのマザー工場」
ものづくり革新センター(宇都宮工場)は、1967年に操業開始し、今年で50周年を迎える。同センターでは、VIERAのほか、CATV用STBや、Technicsオーディオ製品を生産しており、5月から有機ELテレビの生産を開始した。パナソニック アプライアンス社 テレビ事業部 ものづくり革新センターの阪東弘三 所長は、「プラズマ、液晶、CRTと有機ELの4つのデバイスを扱った世界でも稀有の工場。ハリウッドの色忠実再現とTechnicsの音を組み合わせたプレミアムテレビを作り出せるのは、『経験とノウハウ』、『市場の声』、『高い技術力』があるから。パナソニックの、日本のものづくり、を象徴する工場がものづくり革新センター」と語った。
開発と製造の関係が近いほか、技術のノウハウが蓄積されているため「テレビのマザー工場」と位置付けており、生産技術の開発や人材育成も強化している。ここで得たノウハウや知見を世界の7拠点に展開しており、「それがものづくり革新センターのアイデンティティ」という。
各製造ラインや工程ごとにスタッフの専門技術の認定試験も実施しており、一定の技術が認められ、経験を積んだスタッフは「匠」としてより高度な製造ラインに配置する。例えば、有機EL VIERA「EZ1000」の場合は、同社認定の“黒帯”以上の技術をもつスタッフのみが工程を許されているという。この認定試験は、事業所内の「ものづくり道場」で日々行なわれており、ビス止めの時間や正確やフレキケーブルの扱いなどの工程ごとに、技術を認定。認められたスタッフのみが生産工程に参加できるようになる。
匠の仕事は、生産だけでなく、検品や品質評価にも及んでおり、液晶の黒点や輝点のチェックや均一性の確認など、画質に関わる部分にも、匠が確認する工程が設けられている。
5月から生産開始した有機ELテレビについては、従来の工程に加えて、エージングの工程が追加されたほか、色度などの表示品質検査が強化されており、「液晶の約2倍」の時間がかかっているとのこと。有機ELテレビでは、パネルの投入から、組み立て、梱包までで約1時間という。
匠が作る有機EL VIERA。画質も細かく確認
今回見学できたのは、テレビの組み立てラインと、半導体やコネクタ、チューナなどの基板への実装ライン。
有機ELテレビの組み立てラインは、まず、納入された有機ELパネルを開梱し、基板と接合、外装へのネジ止めやケーブル接続等を作業スタッフが行なう。ここで基本的な組み立てが完了する。一部はロボットを用いているが、基本的に人力で組み立てられており、ラインを流れていく製品について、各工程に割り当てられたスタッフが、指定時間内に作業を完了する。1つの作業に割り当てられている時間(タクトタイム)は、110秒(EZ1000の場合)とのこと。
組み立てられたテレビは、検品作業が行なわれる。まずはレーザーでパネルの反りを確認。その後、エージング工程に移る。このエージング工程は、有機EL専用のもので、約30分間画面を表示する。その後で、独自に開発した画質確認プログラムを用いて、暗い輝度や中間輝度での色度や色ずれの少なさ、ホワイトバランス、ガンマなどが規定範囲に収まっているか確認。加えて、“匠”の認定を持つスタッフが目視で確認し、不具合がないか確認する。
完成工程では、端子の装着や各部の接続状況など、組み立てに問題ないかを確認。バックパネルの見ずらい部分などは、カメラを用いて検品する。問題がない製品については、梱包され、最後にバーコードを打刻。何月何日何時何分に製造したかまで記録しておき、製造履歴を管理する。これにより、万一不具合が出た場合などでも、対象製品や購入者を絞り込みやすくする、「トレーサビリティ」を高めている。
基板生産はほぼ自動化
EZ1000シリーズの基板には、1,582点の部品が使われており、1mm×0.5mmの超小型のものから、45mm×48mmまで様々なサイズのデバイスを基板に実装している。これらの部品を基板に実装するのが、基板生産ライン。
基板の組み立ては、機械により自動化されており、基本的には各部品をクリーム半田を用いて接合する。
プリント基板に番号を振り(トレーサビリティ対策)、小型の部品の実装、大型部品の実装や、リフロー炉での加熱(7段階)によるはんだの接合などの工程は、全て機械で行なわれる。これらの製造装置の多くもパナソニックグループで開発している。唯一人間が関わるのが検査。まずは、機械で厳しめに良・不良を判定。その後で、機械で不良判定したものだけを、本当に不良かどうかを人間が確認するという方式を採用。これにより、人が関わる検査を減らしているという。
匠が作る有機EL VIERA。有機ELによるリアリティを追求
5月31日時点の生産規模は300台。これだと有機EL VIERAの月産目標(1,550台)を大幅に超えてしまうことになるが、実は有機ELと液晶の生産ラインは、エージングと画質確認の工程を除けばほぼ共通化されているため、翌日からは液晶に切り替えることも可能だという。
ものづくり革新センターで働く“匠”の数は非公開だが、31日時点では24人が有機EL VIERAの生産ラインに入っていた。なお、Technicsは11人のスタッフが担当しており、基本的にはテレビと分業しているが、生産状況にあわせてTechnicsのスタッフがVIERAの生産に携わることもあるという。
説明会場では、2006年のプラズマVIERA「TH-50PX600」と「TH-65EZ1000」の画質比較を行なったほか、65型有機ELを4枚敷き詰めて、夜空を作り出す大画面マルチスクリーンや、本物の花の中に、55型「TH-55EZ950」を埋め込んで、その映像が本物の花のように見えるというデモを実施。有機ELによるリアリティある映像をアピールした。