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KDDI研究所、8Kマルチアングル映像対応のリアルタイムエンコーダを開発

 KDDI総合研究所は、マルチアングル映像に対応した8Kリアルタイムエンコーダの開発に世界で初めて成功し、8Kマルチアングル映像のリアルタイム伝送を実現した。同技術により、将来的にスタジアムでの競技映像をもとに、家庭やモバイル環境でのフリーナビゲーション視聴の実現を目指す。

 マルチアングル映像は、例えばサッカーの競技会場に置かれた複数のカメラで撮影された映像をまとめて配信し、ユーザがカメラ選択してディレクター感覚で自分の好きなアングルの映像体験ができる、というもの。フリーナビゲーション映像は、競技会場で走り回るサッカー選手や審判、ボールなどの追跡情報をマルチアングル映像に加えて配信することで、ユーザが見たいアングルや被写体を任意に選択し、ゲームプレイヤー感覚で映像体験するもの。

 これらの実現のためには、複数の4K/8K映像配信を低コストで実現するための圧縮効率の大幅な改善が必要となるが、8Kマルチアングルでは、1アングル当たりのデータ量が4Kの4倍になるほか、60pや120pの高フレームレートへの対応を見据えた符号化性能の改善が不可欠となる。さらに8Kでは、画面ごとの処理負荷の差異が増大し、画面単位の均等なタスク分割で膨大なCPUリソースを要するという、8Kリアルタイムエンコーダに特有の技術課題が残されていたという。

 今回、KDDI総合研究所はエンコーダ制御最適化技術と処理速度改善技術の考案・導入により、H.265/HEVCマルチビュー拡張方式に準拠した8Kリアルタイムエンコーダの開発に成功。

 符号化性能は、実験で扱った8Kスタジアム映像(実際にサッカーの試合を4台の8Kカメラで撮影)の特徴を分析し、選手領域の分布を考慮したブロック分割と予測方式選択を導入することで視聴品質を損ねることなく、4台の8Kカメラによる60fpsのマルチアングル映像を160Mbpsに圧縮できることを確認した。現行技術では4台で320Mbpsの帯域を必要としていたため、1/2の圧縮率(2倍の圧縮性能)に相当するという。

 加えて、CPUごとの符号化タスクの割当てを、画面間の動き量を基準に動的に行なうメカニズムを新たに導入。単純な並列処理に比べて所要のCPUリソースを1/4に低減できたという。

 今後は2018年度中の実用化を目指すほか、120fpsの高フレームレートへの対応や更なる圧縮効率の向上も進めていくとしている。