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AI活用の新Adobe CC。VR強化のPremiere Pro、PhotoshopはiOSのHEIF写真対応
2017年10月19日 12:46
アドビシステムズは、「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」のアップデートを提供開始した。動画や写真によるコミュニケーション、VRコンテンツの普及を背景に、映像制作ツールを含むほぼすべてのソフトウェア・モバイルアプリケーションを改善・改良。アプリケーションとサービス全体にAI機能を組み込み、作業の効率化を図っている。Adobe CCユーザーは無償でダウンロードできる。
Adobe CCの利用料金は、各ソフトにつき月額2,180円。Photoshop CCやillustrator CCも含む20種類以上のソフトやツールが利用できるコンプリートプランは月額4,980円。20GBのクラウドストレージ(グループ向けは100GB)を利用できる。また、月額1,980円でPhotoshop CCやLightroom CCなど写真関連ソフトと1TBのクラウドストレージが使える「Creative Cloud フォトプラン」なども用意する。
Adobe Senseiで「ユーザーが作業に集中できる環境」を作る
同社は米ラスベガスで現地時間18日からクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2017」を開催。世界62カ国から約12,000人の参加者が集まる大規模イベントで、この中で発表したAdobe CC新バージョンのテーマの1つが、“Smarter with Adobe Sensei”。アドビが開発したAIと機械学習のフレームワーク「Adobe Sensei」の活用をさらに広げるもので、機械学習による自動化・効率化を積極的に採り入れながら「ユーザーにしかできない作業に集中できるようにする」ことが狙い。
映像制作関連では、波形編集ソフト「Audition」や、2Dキャラクターをアニメ化できる「Character Animator」でAdobe Senseiの技術を活用する。Auditionは音声に合わせてBGMの音量を調整する「自動ダッキング」機能に対応。Character Animatorはリップシンクの精度向上を図り、発音と口の動きをより正確に合わせられるようになる。
PhotoshopやLightroomは既に、Adobe Senseiの画像認識技術をフォトレタッチ機能などで活かしているが、後述の新クラウドフォトサービス「Lightroom CC」での写真の検索・整理で活用する。
ストックフォトサービス「Adobe Stock」も、機械学習と画像認識技術を用いたスマートサーチ機能の強化を行ない、写真の被写界深度の深さ(ボケ具合)、色味の鮮やかさの度合いといった項目で画面のスライダーを左右させ、膨大なストック素材から使いたいものを絞り込んだり、例えば写真に「鳥」や「インコ」とタグ付けされていなくても、キーワード検索すると単語の意味に合わせて素材をリストアップできるようになる。
Premiere ProはVR強化。PhotoshopがiOSのHEIF写真サポート
Adobe CCの映像制作ツールのアップデート内容は下記の通りで、IBC 2017に先駆けて予告していた内容とほぼ同一。なお、Premiere Pro CCは新たにソニーによる16bitシーンリニアデータの独自HDRフォーマット「X-OCN」のネイティブ編集にも対応する。
- 360度映像の編集時のビデオデバイスで、Oculus RiftとHTC VIVEをサポート
- 360度映像用のイマーシブエフェクトとトランジションを追加
- 複数プロジェクトを開いて同時作業が可能に
- 「チームプロジェクト」正式版。プロジェクトファイルのアクセス管理する「ロック」機能を追加
- モーショングラフィックステンプレート機能を強化。レスポンシブデザイン対応
- X-OCNフォーマットのネイティブ編集が可能に
Premiere Pro CC
- インフォグラフィック(データ駆動型アニメ)の素材としてJSONファイルに対応
- イマーシブVR編集の強化
- GPU活用によるパフォーマンス向上
After Effects
- 映像のBGMなど音のタイプ別でミキシングレベルを自動調整する「自動ダッキング」搭載
Audition
- ベータ版から正式版「Character Animator 1.0」に
- リップシンクの精度向上
- キーボードやMIDIデバイスによるジェスチャーコントロール対応
Character Animator
写真関連ソフトではクラウドベースのフォトサービス「Lightroom CC」を新たに用意する。ユーザーは1TBのクラウドストレージにフル解像度のRAWデータをバックアップして、PC/モバイル/Webアプリで時間や場所を選ばずどこでも写真管理・現像が可能となる。従来のPCソフトのLightroomは「Photoshop Lightroom Classic CC」に改称し、ライブラリを共有しつつより詳細な現像機能を利用できる。
Photoshop CCとLightroomは連携を強化して、スタート画面から写真ライブラリにアクセスできるようになる。また、どちらも新たにiOS 11の新写真フォーマット「HEIF」をサポートし、撮影画像の読み込みが可能になる。そのほか、全天球カメラ「RICOH THETA」などで採用されている正距円筒図法(エクイレクタンギュラー)の360度写真編集を強化し、VR表示の状態でスポット修復などが行なえようになる。
このほか、UI/UXデザインツール「XD」、特別な知識なしに3D CGプロダクト/ビジュアルデザインが行なえる3Dツール「Dimension」、直感的なグラフィックやWebページデザインができる「Spark」が登場する。