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LUMIX史上最高の高感度性能、Cinema4K/60p対応ミラーレス「GH5S」の裏側
2018年1月23日 08:15
パナソニックが1月25日から発売するミラーレス一眼カメラ「LUMIX DC-GH5S」。高感度撮影に強いだけでなく、世界初のCinema4K(4,096×2,160)/60p動画も撮影できるなど、動画撮影をメインに楽しむユーザーにも注目のモデルだ。その性能について同社が22日、メディア向けの説明会を開催した。
LUMIX史上最高の高感度性能を実現するために
詳細は既報の通りだが、「DC-GH5S」の価格はオープンプライスで、店頭予想価格は30万円前後。発売中の「GH5」の型番末尾に「S」が付いたモデルで、後継機種と思いがちだが、「後継機ではなく、兄弟機種。スペシャルな特別仕様モデルという意味と、LUMIX史上最高の高感度性能を備えた“センシティビティ”という2つの意味を含んでいる」(アプライアンス社イメージングネットワーク事業部の商品企画担当・香山正憲氏)という。
LUMIXは従来から、高画質、AFや連写などの高速性能、小型・軽量、そして動画性能の4つを基幹技術としているが、GH5Sは「マイクロフォーサーズの唯一の欠点として我々も認識しているのが高感度画質。そこを強化しようというのが大きなテーマ」(香山氏)だという。
高感度画質を高めるために、GH5は有効画素数2,033万画素の4/3型Live MOSを搭載しているところ、GH5Sは約半分の有効1,028万画素となっている。高解像度化をあえて抑える事で、センサーのセルサイズはGH5の約1.96倍となり、高感度性能を高めている。
ピクセルピッチだけではなく、「デュアルネイティブISOテクノロジー」を搭載しているのも特徴。一般的なセンサーでは、ピクセルの受光部1つに対して、1つのゲインアンプを搭載し、そのアンプでISO感度を上げると、ノイズも一緒に増えてしまう。
そこで、1つの受光部に対して、ゲインアンプの前段に、「低ISO感度回路」と「低ノイズ・高ISO感度回路」を配置。「低ノイズ・高ISO感度回路」は、ISO800までの低い感度は不得意だが、それよりも高感度域を得意とする回路で、設定にあわせてこの2つ回路を切り替える事で、ノイズを抑えた高感度撮影を可能にしている。同様の機能は、パナソニックの業務用カメラのVARICAMで採用されており、その技術をGH5Sにも投入した形となる。最高ISO感度はISO 51200、拡張ISO感度はISO 204800を実現した。
説明会の中では、GH5とGH5SをISO 12800で撮り比べたデモ映像なども表示。GH5でも、ISO 6400までは、ややノイズは増えるものの、おおむねクリアな映像を撮影できているが、それ以上になると暗部にザワザワしたノイズが目立ってくる。
GH5Sでは12800でも、そうしたノイズがほぼ感じられず、キリッとクリアな描写を維持。他社製品では高感度になると少し色が抜けたような映像になるものもあるが、GH5Sは高感度でも鮮やかな発色で撮影できる事も確認できた。
ボディ内手ブレ補正を搭載していないのはなぜか
GH5とGH5Sの違いとして、GH5にはボディ内手ブレ補正を搭載しているが、GH5Sには搭載していないという違いがある。手ブレを抑えられる機能は、高感度に強いGH5Sでも有用な機能だと思われるが、香山氏によれば、あえてGH5Sには搭載しなかったという。
ボディ内手ブレ補正は、カメラが揺れても、センサーが揺れないように内部で保持する機能だが、動画撮影においては、その機能が裏目に出て、予期せぬ動きが映像として記録されてしまう事があるという。
「例えば車にカメラを装着して走りながら撮影すると、Gがかかって外れてしまったり、音楽ライブの撮影で、低音の振動の揺れの周波数が、他のカメラと違った動きとして撮影されてしまい、(複数のカメラで撮影した映像を組み合わせる)編集時に揃えるのが難しいといった声が、映像制作で使っている方々に聞くとあったため」だという。
また、映像制作ではカメラを三脚にしっかり固定したり、ブレを抑えるためのジンバルに装着して撮影することが多い事も考慮。「三脚やジンバルが必要になりますが、それらを使った時に最高の画質・性能が手に入るカメラとして開発した」という。
こうした違いから、GH5は「高解像度重視。手持ち撮影に強く、より身軽な撮影スタイル向き」として訴求。一方のGH5Sは「高感度重視。三脚・ジンバルを用いた、本格的な映像制作向き」と位置づけている。
Cinema4K/60p記録や、30pでの4:2:2 10bit記録に対応
センサーはGH5と比べて、約1.3倍の高速読み出しを実現。ローリングシャッター歪みを抑制するほか、高速連写や4Kフォト・4K/60p動画記録にも活用。AF追従性能の進化や、VFR(バリアブルフレームレート)機能によるスロー効果など、表現力の進化にも寄与している。
これを活かし、映画製作で用いられるCinema4K(4,096×2,160ドット)での60p動画記録を実現(4:2:0 8bit)。激しい動きのある被写体でも、ローリングシャッター歪みを抑えながら滑らかに撮影できる。3,846×2,160ドットでの60p撮影も可能。
また、60pは非対応だが、Cinema4K(4,096×2,160ドット)の30pでは、4:2:2 10bitの記録も可能。4:2:0 8bitと比べ2倍の色情報、全体として128倍の情報量を持っており、カラーグレーディング時の微妙な色調整や、昼間を夕方に変えてしまうようなダイナミックな色調整などにも活用できるという。
動画フォーマットはMOV(H.264/MPEG-4 AVC)、MP4(MPEG-4 AVC/H.264、H.265/HEVC)。AVCHD Progressive、AVCHDでの撮影も可能。
快適なノンリニア編集が可能なALL-Intra動画記録にも対応。最大400Mbpsでの高ビットレートで記録できる。
また、HDMIからは4:2:2 10bitの4K/60pで出力でき、外部レコーダと組み合わせて、より高画質な記録も可能。4K/30pまでのSDカード動画記録中には、HDMI端子から4:2:2 10bit映像を同時に出力できる。放熱設計技術により、すべての記録方式で時間無制限での動画記録が可能。
HDR撮影にも対応しており、ハイブリッドログガンマをサポート。4K/フルHD、LongGOP/ALL-I圧縮方式を含む、全ての4:2:2 10bitモードで対応する。映像制作の編集工程で自由度の高いカラーグレーディングを可能にする「V-LogL」機能もプリインストール。12-stopの広いダイナミックレンジを活用できる。
なお、GH5SではV-LogLを静止画撮影でも選べるようになっている。これは、インターバル撮影で静止画を沢山撮影し、それをつなぎ合わせてタイムラプス動画を撮影するユーザーのため、ビデオ用ガンマで撮影できる機能となっている。
撮影したHDR映像は、パナソニックのVIERA・2017年モデルのEZ1000、EZ950、EX850、EX780、EX750、EX600シリーズとHDMI接続して表示可能。2016年のHDR対応モデルも今後のサポートを予定している。
「VFR(バリアブルフレームレート)記録」では、フルHDで240fps、Cinema4K/4K(3,840×2,160)で60fpsの撮影も可能。クイックモーションからスローモーションまで、映像表現の幅を広げられる。
ユニークな機能として、業務用ハイエンドカムコーダーやシネマ用カメラで標準搭載される、BNC端子によるタイムコードのIN/OUT機能拡張にも対応。フラッシュのシンクロ端子に接続すると、反対側がタイムコード用のBNC端子になっている変換ケーブルが付属しており、これを用いて、GH5S自身がマスターカメラとなり、複数台のカメラとタイムコード同期を取った撮影が可能。ノンリニア編集での細かな映像タイミングの調整が不要になる。
「フラッシュのシンクロ端子は、動画撮影のユーザーにはあまり関係ない端子であり、そこから同軸のパルスが出ているのであれば、タイムコードに使えるのではというアイデアから搭載した機能」(香山氏)だという。
どのアスペクト画角でも、レンズの焦点距離そのまま使える
静止画撮影機能も強化されており、RAW静止画撮影時には、記録ビット数を14bitと12bitから選択可能。14bit記録では、豊富な階調や色彩を記録でき、12bitでは連写速度を優先するといった使い分けができる。
さらに、4:3、3:2、16:9、17:9の各アスペクトで、装着レンズの焦点距離をそのまま使用できる、マルチアスペクトに対応。これは、ボディ内手ブレ補正を搭載しない事で、GH5よりも大型のセンサーを搭載できた事を活かした機能。例えば35mm換算で24mmのレンズで撮影した場合、GH5は4:3のアスペクト比ではレンズの焦点距離そのままで撮影できるが、3:2では少し狭い25mm、16:9では26mm相当になってしまう。
しかし、GH5Sでは全てのアスペクト比で24mmでの撮影が可能。写真の画角だけでなく、4K・Cinema4K動画や、4:3アナモフィック動画でも、このマルチアスペクト機能は利用できる。これはGH1やGH2時代には搭載していた機能であり、復活を望む声も多かったという。
静止画の連写性能は、14bit RAW撮影でAF追従連写 約7コマ/秒、AF固定連写 約11コマ/秒を実現。12bit RAW撮影でもAF追従連写 約8コマ/秒、AF固定連写 約12コマ/秒の連写が可能。ディープラーニング技術による人体認識機能を使い、人物の認識精度を大幅に向上させた「顔・瞳認識AF」も備えている。
動画から静止画を切り出す「4Kフォト(約8メガ)」機能は、秒間60コマの高速連写を行なっており、肉眼では捉えられない瞬間を撮影可能。4Kフォトモードで撮影した写真を1枚選んで保存する際には、ポストリファイン機能を使うと、高速で動く被写体の撮影時に発生しやすいローリングシャッター歪み現象を補正可能。高感度撮影時のノイズを低減できる「時空間ノイズリダクション」の補正処理も活用し、「決定的瞬間の一枚をさらに美しく自然な描写で仕上げることができる」という。
ファインダーは、約0.76倍で約368万ドット、アイポイント21mmの有機EL(OLED)を採用。モニタは、RGBに加えてWも含んだ画素構造で、屋外での視認性が高い3.2型約162万ドットのフリーアングルタッチモニタを搭載する。
UHS-IIスピードクラスに対応した、2基のSDカードスロットを搭載。順次(リレー)記録、バックアップ(サイマル)記録、振り分け記録から選択できる。防塵・防滴設計も採用。マイナス10度までの耐低温設計も取り入れている。筐体はマグネシウム合金フレーム。シャッター耐久回は数20万回。
外形寸法は約138.5×87.4×98.1mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は本体のみで約580g、バッテリやメモリーカード1枚を含めると約660g。