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日本初HDR 1000液晶モニタや4K放送チューナ、痛4K中継車も。「4K・8K機材展」

 4K/8K映像の撮影/編集や放送向けの最新機器などが展示される「第1回4K・8K機材展」が4月4日に東京ビッグサイトで開幕した。期間は4月6日まで。放送や映像制作などの商談向けとなっており、入場には招待券が必要。

「第1回4K・8K機材展」が東京ビッグサイトで開催

 放送/配信だけでなく医療、製造業などでの利用も見込まれる4K/8Kカメラや、ディスプレイ、デジタルサイネージなどが多数出展。12月開始の新4K8K衛星放送に向け、ケーブルなどを含む周辺機器も4K/8K向けの製品が披露されている。なお、同会場では「映像伝送EXPO」や「モバイル通信展」、「光通信技術展」も併催されている。

初のHDR 1000モニターが今春フィリップスから

 フィリップスは、液晶モニタの新製品として、4K/HDR対応でVESA規格「DisplayHDR 1000」(HDR 1000)に対応した日本初のモデル「436M6VBPAB/11」と、「DisplayHDR 400」(HDR 400)対応の「436M6VBRAB/11」を展示。いずれも5月末に国内発売予定。価格はオープンプライス。映像制作などの業務向けだけでなく、コンシューマ用途も見込んでいる。両機種とも画面サイズは42.5型で、モニター用のためチューナは搭載しない。

HDR 1000対応ディスプレイなどを展示したフィリップスのブース

 HDR 1000は、VESAがディスプレイのHDR品質基準として'17年12月に策定した「DisplayHDR version 1.0」のハイエンドクラス、HDR 400はエントリークラスとなる。最大/最低輝度や色域などの基準をカバーすることで、よりHDRを忠実に再現できる機器として認定されるもの。

 新機種のHDR 1000対応「436M6VBPAB/11」が輝度720cd/m2、ピーク時1,000cd/m2。HDR 400対応の「436M6VBRAB/11」は450cd/m2(ピーク時も同じ)で、コントラスト比は5,000万:1。いずれも3,840×2,160ドットのMVAパネル搭載で、表面はノングレア。色域はBT.709カバー率100%、DCI-P3カバー率97.6%以上。10bit色階調表示に対応する。

 HDMI 2.0×1とUSB Type-C(DP Alt Mode)のほか、HDR 1000モデルはミニDisplayPort 1.2、HDR 400モデルは通常のDisplayPort 1.2端子を備える。画面の下にLEDを配置し、コンテンツに合わせて色や明るさを自動調整して画面周りを演出する「ambiglow」も備える。

ピクセラの低価格4Kチューナ披露

 ピクセラは、既報の通り新4K8K衛星放送に対応したAndroid TV搭載チューナ「4K Smart Tuner PIX-SMB400」を10月初旬より発売。想定3万円未満という低価格でシンプルに4K放送を観られる製品として会場でも注目されている。今回のブースでは信号発生器からの映像を入力して映像を表示している。

ピクセラ「4K Smart Tuner PIX-SMB400」

 4Kだけでなく、既存の地上/BS/110度CSデジタルチューナも内蔵するため、新放送が開始される前も利用可能。Netflixの4K映像も視聴でき、それ以外の4K映像配信への対応は現在検討中としている。

4K映像の視聴デモ
本体背面
付属リモコン(左)と、テンキー付きの別売リモコン

配信やVRなど様々な8K活用提案

 110型などの8K液晶ディスプレイを展開し、NHKにも納入しているBOEジャパンは、放送以外の8K用途を想定した「8Kデコード・プレイヤー」を披露した。現在受注生産を行なっているという。

BOEの110型8K液晶

 同社はサイネージなどに向けた映像配信クラウドも展開しており、同社の配信システムを活用し、クリエイターや医療など高精細映像に需要がある分野への8Kの普及を目指して開発されたもの。クラウドなどの配信の仕組みと8Kプレーヤーなどを組み合わせたシステムとして提供を見込む。8Kストリーミング時の回線速度は下り280Mbpsを推奨する。

8Kデコード・プレイヤー

 映像コーデックはHEVC/H.265で、7,680×4,320ドット/60p、10bit、4:2:0に対応。ビットレートは120Mbpsから。8K映像はHDMI 2.0×4本で入力する。音声はAACの48kHzで2ch。光デジタルやステレオミニの音声出力も備える。外形寸法は390×188×60mm(幅×奥行き×高さ)。

98型8K液晶(左)も披露した

 キヤノンは、55型や29型の8K HDR対応液晶ディスプレイを参考出展。昨年のInter BEEで展示していたものより輝度を向上するなど性能を改善したという。表示するコンテンツは医療や文化財などの映像をデモ。放送以外の用途にも8K活用をアピールしている。

キヤノンは8Kの29型液晶(右)などを展示
8Kの55型も

 アストロデザインは、8K映像をVRに活用する撮影システムを参考出展。インタニヤの魚眼レンズとアストロのカメラを組み合わせた撮影の研究を進めている。

アストロデザインの8K VRカメラシステム

 カメラなどの機材を単体で販売するのではなく、撮影システムなどを含めたトータルのサービスとして提供することを想定。今後の5Gなど大容量ネットワークを活用して高品質なVR映像を配信することを見込んでいる。

インタニヤの魚眼レンズを装着
撮影システムの内容。なお、8K対応ゴーグルはまだない

 また、8K活用の一つとしてHDや4Kへの切り出しシステムを紹介。マルチメディアスキャンコンバータ「MC-2086」などを使って、ジョイスティック操作で任意の部分/解像度でリアルタイムで切り出し、別のモニタで確認可能。セキュリティへの採用が期待され、従来は複数のカメラで撮っていたものを1つのカメラに置き換えられるという。

8Kから4Kの切り出し。左が切り出し後の映像
8Kから2Kの切り出し
切り出しシステムの概要

 ミハル通信は、8K HEVCエンコーダを参考出展。放送だけでなく、8K内視鏡を病院内で配信するなど医療用途も紹介している。このほかにも、新4K8K衛星放送対応のRFアナライザーやISDB-S3変調器などを展示しており、いずれも'18年内の発売を予定している。

ミハル通信の8K HEVCエンコーダ
新4K8K衛星放送対応のRFアナライザー(左)とISDB-S3変調器(右)

300型8Kで羽生結弦やサカナクションのライブ

 NHKは300型の「8Kスーパーハイビジョンシアター」を設置。レーザープロジェクタ4台と22.2ch音声で楽しめる点は昨年のライブ・エンターテイメント EXPOでの展示と同じだが、今回はアンプやスピーカーなど音響機材を新しいものに変更し、より高音質で22.2chを聴けるようになったという。

NHKの8Kシアター

 コンテンツも新しいものを用意。平昌オリンピックの羽生結弦ショートプログラムや、サカナクションライブ2017「ミュージック」、紅白歌合戦2017ダイジェストを用意。開幕直後から多くの参加者が観覧していた。

300型8K映像と22.2ch音声で鑑賞
スピーカーなどの音響を刷新

“痛4K中継車”がHDR対応

 会場内で異彩を放っていたのは、長野県のビビッドによる4K中継車の“痛車”モデル。4K対応の中継車はまだ数が少ない中で、同社は1日の基本利用料80万円でレンタルするというリーズナブルな料金設定を特徴としている。スポーツやイベントなどの中継で活用されており、'18年からは新たにHDR制作にも対応したのが特徴。

ビビッドの4K/HDR中継車

 車体の外観にイメージキャラクター「長野紗鈴」(ながのしゃりん/ドライバー/23歳/好物は駒ケ根ソースカツ丼)などを描いた痛車仕様にしたことで、イベント会場などでも注目され、来場者が一緒に記念撮影することも多いという。

緑色の髪のキャラクターが長野紗鈴

 同社は4K/HD中継の技術請負や、新車特装車の設計製造、撮影機材のレンタルなどを行なっており、中継車に合わせて制作のスタッフを派遣するといったサービスも提供できるという。

内部の様子。スタジオや控室として使えるスペースも用意