2018年4月10日 07:50
今週4月4日~6日の予定で、東京ビッグサイトで開催されている「4K8K機材展」。実は今年初めて行なわれる展示会だが、行ってみたらなかなか面白かった。ご存じのようにビッグサイトの展示会は、関連する複数の展示会とガッチャンコしてひとつのフロアを埋めるという展示が多いのだが、今回の機材展も「映像伝送EXPO」「光通信技術展」「次世代モバイル通信展」という、全部で4つの展示会が同時開催となっている。
言うなれば、4K8K機材展はフロア全体の1/4しかなく、小規模ではあるのだが、いきなりバーンとだだっ広いInterBEEよりひとつひとつのブースをゆっくり見て回れるという意味では、充実した展示会となっている。
タイミング的には、もう来週からNAB2018がスタートするので、主たる企業の新しい機材はみんな米国へ渡っている。そういう意味では、NABで発表するネタがここで見られるわけではないのだが、逆にNABに出すほどは完成していないというプロトタイプもコッソリ見ることができる。ある意味、裏展示みたいな扱いとして、面白いポジションである。
この中でプロ機材ではなく、コンシューマでも注目の機材があったので、ご紹介しておこう。
4K HDR時代のチューナー登場
4Kの本放送は、今年の12月1日からBSおよびCS110度左旋放送でスタートする。左旋というのが聞き慣れない言葉だと思うが、今現在放送しているのは「右旋」。不思議な話だが、電波がらせん状に右回転しているのである。反対に左旋というのは、左回りの電波だ。同じ周波数帯域でも、右回転と左回転で別の信号が送れるのである。
ただし左旋の電波を受信するためには、従来のアンテナではダメだ。左旋のアンテナか、右旋左旋両対応のアンテナを取り付ける必要がある。そしてその先には、専用のチューナーが必要になる。
現在発売中の4Kテレビは、パネルの解像度が4Kなだけで、4Kチューナーは搭載していない。外部入力及びネットコンテンツのみ4K対応しているだけである。例年新型のテレビは、早くて3月、遅くて6月に投入されるが、6月モデルぐらいからは4Kチューナー内蔵モデルが出てくるのではないかと思われる。
ただ、そのタイミングでテレビを買い換える人はいいだろうが、すでに4Kテレビを買っている人は、4K放送を受けるには別途チューナーを用意する必要がある。すでにプレスリリース等で発表はされているのだが、ピクセラがこの外付け4Kチューナーに一番乗りを果たした。4K8K機材展で、このチューナーの動作を拝見することができた。
現在も4Kは試験放送中で、アンテナを立てれば受信できる。ただし東京ビッグサイトには左旋BS/CS110のアンテナが取り付けられていないため、会場ではRF信号発生器を使って、録画コンテンツをRFに変換し、それをチューナーで受信するというデモが行なわれていた。
「4K Smart Tuner」という名前のチューナーは、黒いボックス型で、サイズ的には昔の3.5インチ外付けHDDケースぐらいのサイズ。ただし中身は恐ろしく軽い。実動実機を触らせていただいたが、モックなのかと思われるほど軽量にできている。
4Kチューナーだけでなく、地デジ及びBS/CS110度の2Kのチューナーも搭載しており、CS114度のようなプレミアム局以外は全部受かるチューナーとなっている。特筆すべきは、4K HLG放送にもきちんと対応し、HDR表示もできることだろう。こうしたフルスペックのチューナーが、実売価格で3万円を切るというから、大したものだ。
さて、外観を見て何か不思議なことに気づかないだろうか。よく見るとB-CASスロットがないのだ。これはチップ化されたCASを採用していると考えるのが妥当であろう。
加えてネット放送も受信可能になっており、Netflixに標準対応しているほか、YouTubeなどのネットコンテンツも見られる、いわゆるAndroid TV的な機能もある。さらにはGoogleアシスタントにも対応しており、リモコンのボタンを押して喋ると、テレビ側のスピーカーを経由してボイスコマンドに対する反応を返す。つまりスマートスピーカーの機能を積んだテレビが出来上がるというわけだ。
おそらく、かつてのAndroid TVが夢見たことが実現できるわけだが、当時は数十万円のテレビ内蔵というビジネスモデルだった。それが3万円以下のデバイスで実現できる時代になったわけだ。
スマートスピーカーもそうだが、やはり本気で「こういう世界観」を普及させようと思ったら、誰でも買ってみようかなと思えるような値頃感が実現できてこそだろう。
最初に登場する4K外付けチューナーがこの機能、この価格で出てくると言うことは、競合他社は相当やりにくいと思う。機能を削ってシンプルにして1万円程度にするか、別機能を盛り込んで同等の価格帯でやり合うか、ということになるだろう。
もちろん、ゆくゆくはテレビに内蔵されるものではあるのだが、本放送開始のタイミングからすぐに見られる手段としては、今のところ一番リーズナブルだと言える。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。
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2018年4月6日 Vol.167 <新しいやり方号>
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