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ゴジラをHololensで迎撃!! 東宝とMSがコラボ、AIで“映画の街”日比谷を変革
2018年5月24日 14:45
東京・有楽町の日比谷シャンテで、新しい「ゴジラ」の体験と近未来の消費体験を創造するプロジェクト「HIBIYA 2018」。そのショーケースとして東宝と日本マイクロソフトが連携して5月24日からスタートする、HoloLensを使った屋外アトラクション「ゴジラ・ナイト」を体験した。なお、事前受付は既に終了している。
日比谷シャンテは「東宝日比谷ビル」内のショッピングセンター。劇場や映画館の集まる街・日比谷の中心地に位置する商業施設として展開してきたが、開業30周年の今年3月23日にリニューアルオープンした。「リニューアル以降、入館者数が前年より倍増し、売上も3割増」(東宝 不動産経営部 東宝日比谷ビル営業室長の安武美弥氏)としている。
旧・合歓の広場は「日比谷ゴジラスクエア」となり、映画・演劇の街“日比谷ブロードウェイ”に沿うように、近隣の劇場で開催される舞台のチケットなどを販売・発券する「ローチケHIBIYA TICKET BOX(日比谷チケットボックス)」がオープン。すぐ近くには映画「シン・ゴジラ」をベースとした新たなゴジラ像(高さ3m)が建っている。
HoloLensでゴジラを迎え撃つ!! ゴジラ・ナイトを体験した
マイクロソフトのヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」を使った初の屋外アトラクション「ゴジラ・ナイト(Godzilla Nights)」が、日比谷ゴジラスクエアで5月24〜29日まで開催される。時間は18時30分~21時で、1回30分の体験型イベント。ただし、事前応募・抽選制で応募受付は既に終了、当選した140人のみが参加できる。なおゴジラ・ナイト会場はHIBIYA TICKET BOXのすぐ脇にあるため、体験している人の様子やHoloLensに映ったゴジラの映像は、近隣を歩いている人も楽しめるという。
参加者は「シン・ゴジラ」劇中で組織された巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)の一員として、東京駅に向かうゴジラを日比谷で迎え撃つ「日比谷ゴジラ迎撃作戦」の特殊任務部隊に加わることに。戦略会議を経て、血液凝固剤を内蔵したミサイルを上空の戦闘機からゴジラに打ち込んで迎撃する……という一連の展開を、現実の日比谷の風景にMR(Mixed Reality:複合現実)映像を重ねて体験できる。
アトラクションは戦略会議と迎撃作戦の2部構成で、各15分程度。5名の参加者に加えて、迷彩服を着用した巨災対の指揮官らが登場。戦略会議ではHoloLensと、マイクロソフトのクラウドサービスを活用したAIを用いて、ゴジラの現在地と侵攻状況の把握、作戦で使う戦闘機やミサイル「ラプチャー」などの武装確認を行なう。はじめに指揮官から厳しい顔つきで「今日ここに集まったのは各部隊の精鋭と聞いている。日比谷の未来は君たちにかかっている」と告げられる。イベントと分かっていても周囲に緊張感が走る。
マップやゴジラのミニチュアは目の前に現実にある物体だが、ゴジラの周囲に描かれる侵攻状況や戦闘機などはホログラムで、現実の風景に重ねるようにして描かれる。さらに、巨災対スタッフが会議中ボードに手書きしたミサイルの名前をAIが認識し、HoloLens内にミサイル外観や各種情報のホログラムを映し出す。SF映画で見かけるようなサイバー感のある会話が指揮官たちの間で次々と繰り広げられ、次第に興奮が高まってくる。
日比谷にゴジラ接近の報を受け、巨災対の指揮官に率いられて、参加者はゴジラ迎撃作戦の実行場所(ステージ)へと移動。ここにもHoloLensが用意されており、装着してほどなくすると、日比谷シャンテ向かいにある東京ミッドタウン日比谷のビル影から、ゴジラが姿を見せる。全長100メートル超、不気味な赤い光を放ちながら姿を表わしたゴジラは尻尾を眼前に打ち下ろす仕草まで見せてくれる。現実の日比谷に重ねてみると、映像と分かってはいても映画館とは全く違う迫力があって恐ろしい。
ゴジラが立ち止まるタイミングを見計らって、全員で「ミサイル発射!」の号令をかけると、HoloLensと音声認識AIが連携してミサイルが次々発射され、ゴジラの体に当たる。煙幕に包まれたところでおとなしくなるゴジラ。「やったか!?」という安堵もつかの間で……。
アトラクションそのものは事前応募に当選した人しか体験できないが、参加者以外の人も、HoloLensと新・ゴジラ像と撮影ができるフォトブースを用意。また、HoloLens内に映るゴジラの映像を楽しむこともできる。
ゴジラ・ナイト開催にあたり、HoloLensやMR事業のゼネラルマネージャーであるマイクロソフトのロレイン・バーディーン氏は、「HoloLensの活用は世界中で勢いを増しているが、日本のエンジニアリングチームは最先端テクノロジに慣れており、デベロッパーコミュニティも勢いがある。そして日本はコンテンツIPの世界的なリーダーであり、ゴジラのような人気キャラクターと組み合わせてこのようなイベントが実現できた。MR事業を6年手がけてきたが、HoloLensを屋外で体験するイベントは初めてだ。本当のゴジラに会えるのを楽しみにしている」と話した。
日比谷シャンテでAIが映画をレコメンド。注文・会計待ち無しで食事
東宝と日本マイクロソフトはこれ以外にも、“近未来の消費体験”の実現に向けた取り組み「Future Retailing」で連携。日比谷シャンテ館内で、AIを活用したサービスを提供開始している。
そのひとつが、AIによる映画のレコメンド機能を備えたデジタルサイネージ。マイクロソフトのAIプラットフォーム「Cognitive Services」を組み込んでおり、人が目の前に立つと、上部のカメラで利用者の年齢や性別、表情を画像認識してAIが分析、オススメの映画予告編を見せる。人がサイネージ前に立っていない時は、通常のデジタルサイネージとして映画の予告編を流している。
このデジタルサイネージを1基、地下2階の休憩スペースに設置する。設置当初はAIにあらかじめ組み込まれたデータと利用者を画像認識した情報を照らし合わせてオススメするに留まるが、将来的には学習機能を備え、サイネージの利用者が増えることでレコメンド精度の向上が期待できるとする。さらに、サイネージに表示された予告編の映画チケットをローソンチケットやHIBIYA TICKET BOXなどで購入できるよう、バーコードを表示する仕組みも検討している。
もうひとつは、シャンテ内の飲食店の待ち時間を可視化するサービス。「飲食店を選ぶ際に重視するポイントとして『入店時に待たないこと』と答えた人が7割近くに上った」(日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズビジネス本部の浅野智本部長)という調査結果を踏まえ、飲食店の空き状況をリアルタイムで表示するデジタルサイネージを館内に5基導入した。
空き状況の把握のため、飲食店13店舗にセンサーを設置し、マイクロソフトのクラウドサービス Azureで構成したリアルタイム空席管理データベースを通じて、館内のデジタルサイネージに各店の現在の混雑状況を表示。スマホやPCのブラウザで、館外からもチェックできる。訪日外国人でも利用できるよう、日本語と英語に対応する。
また、レジ待ちや注文待ちの時間を無くす仕組みを館内の「リンガーハット」に導入、6月1日から一般提供開始する。店舗に向かう前にスマホの専用アプリで食べたいメニューを注文し、アプリに登録したクレジットカードなどで即時決済。店に着くと出来上がった食事をすぐに食べられるとする。Microsoft Translatorにより、注文・支払いは12言語に対応。店舗側は、この注文データを元に人が来る曜日や時間帯を予測し、食品や在庫が余らないように管理・調整できるとする。
東宝とマイクロソフトは、AIを活用した消費体験を利用者に提供しながら、顧客データを蓄積することで今後のデータ分析に活かし、さらに新しいコンテンツやサービス企画に活かす考えだ。
東宝の太古伸幸 専務取締役は、「東宝グループは、中期経営計画『TOHO VISION 2021』で、ゴジラをはじめとキャラクタービジネスをグローバルに展開、日比谷の街づくりも積極的に行なっていく。今回のイベントでは、大事なIPであるゴジラと、東宝のホームグランドである日比谷を組み合わせた。MRやAIを活用して、新たな楽しみ方を提案できたり、近未来のショッピング体験が可能になる。これを足がかりに、最先端テクノロジを活用したエンタメ体験にチャレンジしたい」とコメントした。