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“移動する”Crystal LED、有線で長時間空撮ドローン。ソニーが映像制作向け新提案
2018年6月14日 16:17
ソニーは、4月に米国ラスベガスで行なわれた国際放送機器展示会「NAB 2018」に出展した4K制作機器などを展示する内見会を、放送局や映像制作などの関係者に向けて6月14日~15日に開催。3板式で8K撮影に対応したフラッグシップカメラ「UHC-8300」などに加え、有線接続のドローンを使っての長時間空撮など、新規ソリューションも紹介している。
8K対応フラッグシップカメラ、シネマ用「VENICE」も
カメラ展示の注目は、2017年10月から発売しているフラッグシップ機「UHC-8300」。1.25型、3板式のイメージセンサーを採用。高解像度8K(7,680×4,320ドット)で最大120pの高速撮影や、広色域かつHDRに対応した撮影が可能という。なお、センサーを1.25型としているのは、センサーが大型になると被写界深度が浅くなり、8K撮影時のピント確認などが困難になるためだという。
多彩なフォーカスアシスト機能を備え、既に様々なスポーツ大会や、リオのカーニバル撮影などで活用。8K/4K/HD映像の同時出力にも対応。8K映像から4K映像をカットアウトする機能も備えている。
デジタルシネマ用カメラ「CineAlta」の最上位機種として2月から発売しているのが、新開発の36×24mm、6Kフルフレームセンサーを搭載した「VENICE」だ。有効画素数は約2,440万画素、総画素数は約2,470万画素。センサーの最大幅を活かし、横36mmの6K解像度で撮影できるほか、Super35mm(24.89x13.18mm)や、Super35mm 4パーフォレーション(24.89x18.63mm)を使った4K解像度での撮影も可能。1台で多様な映像制作に活用できるのが特徴。
WOWOWの「連続ドラマW 闇の伴走者~編集長の条件」のメインカメラとして、既に使われたという。
会場には今後の展開として、レンズのマウントとセンサーの部分をカメラから分離、有線で接続した試作機も展示。狭い空間での撮影などに使える機能として、開発しているという。
12月からスタートする「新4K8K衛星放送」に向け、従来は東京がメインだった4K撮影ニーズの声も、全国へと広がっているという。それと同時に、従来のHD映像も同時に収録できたり、HD撮影と同じ使い勝手で4K撮影がしたいといった声も高まっている。
そこでソニーでは、2017年12月にXDCAMメモリーカムコーダ「PXW-Z450」に、新ファームのVersion 3.0を提供。4K/60pでHDR撮影に対応するほか、システムカメラで培った「SR Live」もサポート。さらに、4K HDRとHD SDRの同時収録もできる。
さらに、2018年7月には1/2型 3CMOSを採用したハンディタイプのカムコーダ「PXW-Z280」を、9月には1/3型 3CMOSの「PXW-Z190」を発売予定。コンパクトさを維持しながら、4K撮影ができるだけでなく、明るさやピントの合う範囲など、従来のHDハンディカムと同じ使い勝手を実現したという。
新たに、フォーカス補助機能として登録顔優先オートフォーカスも装備。あらかじめ登録していた人の顔に、素早くAFを合焦できるとする。
また、4K BS放送向けの製品として4Kレコーダも参考展示。4K BS放送の番組搬入フォーマット「XAVC-L422 QFHD 200」に対応しており、ストレージとして2TBのSSDを搭載。新開発のコーデックチップを備え、高画質・低レートを実現。XAVC-I 600Mから、搬入フォーマットであるXAVC-L422 200Mへのトランスコード機能も搭載。SxSメモリーカードも使え、4K撮影した映像の再生機としても使える。
“移動できる”Crystal LED
ネットワーク上で映像、音声、制御のデータをIP伝送し、全体のシステムを効率化したり、人員・コストの削減、リソースシェアや、遠隔操作での撮影などのリモートプロダクションといった新しい付加価値を提案する製品も増えている。
放送局では従来、撮影するスタジオと制御するコントロールルームは1対1の関係だった。そこにIPライブシステムを導入し、例えば2つのスタジオを1つのコントロールルームで制御する事が可能になる。既に三重テレビなどに採用されており、効率的な設備投資と、フレキシブルなシステム運用が可能とする。
スポーツ中継でも、カメラの近くにコントロールルームがある必要が無くなる。スタジアムで撮影した映像と音声を、ネットワークを介して放送局内のスタジオサブに伝送、そこから中継放送も可能。3月10日には静岡放送が、ヤマハスタジアで国内初の地上波リモートプロダクションも実施された。
ディスプレイ関連では、光源サイズ約0.003mm2で“漆黒に近い黒”を表現できる「Crystal LED」ディスプレイシステムが進化。コンパクトなディスプレイユニットを複数並べて、巨大なディスプレイを構築できるのが特徴の1つだが、今回の展示ではサイズの大きさは抑えながら、キャスター付きのスタンドに設置。“移動できるCrystal LED”を提案していた。そのまま移動するのではなく、ディスプレイ部分を2つに折るようにしてサイズを抑えながら移動もできるという。
ドローンやインカムアプリ、AIなど新規ソリューションも提案
エアロセンスとソニービジネスソリューションが協力して開発しているのが、有線給電で飛行するドローンを活用した高画質ライブ撮影システム「AEROBO OnAir」だ。
通常のドローンは20分、30分など、短い時間しか飛行できないが、有線で給電する事で6時間などの長時間飛行が可能。ケーブルで非圧縮映像も伝送でき、4K30p映像や、1080/60p映像のライブ中継も可能。ケーブルは最長100m。
ケーブルがあるため、ドローンが飛び回って撮影するイメージではなく、開けた場所の高所でホバリング。カメラの向きやズーム機能を活用して、様々な映像を撮影するといった利用イメージになるという。7月頃を目処に、1カ月単位などで機体を貸し出すフライトサービスを皮切りに、ソリューションビジネスを本格展開していくという。
放送の現場やイベント、警備などでは、スタッフが無線で連絡をとりあうインカムが使われているが、これを、スマホとアプリで置き換える「Callsign」というアプリも開発されている。
スタッフが持っているスマホに、「Callsign」アプリをインストールするだけで使える手軽さが特徴。3G/4G/無線LANを使って音声を伝送、接続する端末数は無制限で、1端末で6チャンネルの同時接続が可能。既設インカムシステムとの連携にも対応する。
利用人数に合わせた端末増減が柔軟にでき、通信距離の制約が無いなどのメリットがある。クラウドサービスとアプリをセットにした形で提供するビジネスモデルが検討されている。
話題のAIを、映像制作に活用する動きもある。ソニーは自社で、ニューラルネットワークのAIフレームワークを持っているが、これを活用。例えば、特定の人物の顔を、複数の写真を用いてAIに学習させ、AKで撮影しているカメラシステムに適用。カメラのコントロールユニットが、4K解像度で撮影している映像の中から、学習した人物を検出、その人物の部分をHDで切り出せるようになる。
利用方法としては、コメンテーターが複数いる番組を、4Kカメラで撮影。コメンテーターそれぞれの顔をあらかじめ学習させておく事で、カメラを動かさなくても、アップで写したい人を自動的にHDで切り出すといった使い方ができる。
ウェアラブルカメラも参考展示。警備や救急、消防の現場と、本部間のリアルタイム映像共有などでの使用を想定したもので、頭部や胸部、肩などに装着する。カメラヘッドと本体部分が分離し、有線ケーブルで接続されており、カメラヘッド自体は小型になっているのが特徴。
電子式の強力な手ブレ補正機能を備えているほか、セキュリティカメラ向けに開発されたセンサーを搭載する事で、夜間の撮影でも視認性を高めた映像が得られるという。USBモバイルバッテリからの給電に対応するなど、ライブ配信での使用も想定されている。