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米国版「ニコニコ超会議」? YouTuberの祭典「VidCon」に見る“動画の時代”
2018年6月27日 00:00
オンラインビデオの祭典「VidCon」(ビドコン)が、6月20日~23日に、米国カリフォルニア州アナハイム市のアナハイム・コンベンション・センターで開催された。VidConは2010年から毎年行なわれており、今回で9回目。YouTubeが後援していることからも分かるように、動画配信サービスがテーマになっており、米国で人気のYouTuberが集合するイベントだ。YouTuberのファンのコアとなっている10代の若者が多く参加しており、近年では企業などからも新たなマーケティングの場として注目を集めている。
本レポートでは、VidConの概要や、出展内容などについて紹介していきたい。中でも日本のキヤノンは1万円を切るような開発中の子供用デジタルカメラを参考展示した。
米国版ニコニコ超会議的? なYouTuberの祭典「VidCon」
VidConは2010年にハンク・グリーン氏とその兄弟ジョン・グリーン氏の二人により始められたイベントで、ストリーミング動画のコミュニティ向けのイベントとしてスタートした。年々成長しており、2010年には1,400人だった参加者は、2017年は3万1千人にまで成長しており、今年は9回目。現在はYouTubeの後援を受けており、実質的にはYouTuberの祭典と言っていいイベントだ。
イベントはB2C(一般消費者向け)、B2B(業界関係者向け)という2つの側面を持っている。B2Cでは、人気のYouTuberが参加している各種のイベントが行なわれる。例えばTwitterが後援しているコミュニティステージでは、時間を入れ替えてYouTuberが登壇する講演会が行なわれており、席には中学生や小学生ぐらいの若い世代が、熱心に聞き入るという具合でイベントが進行していく。講演会が終了すると、その人たちがステージに殺到し、人気YouTuberに触れ合おうとする、その様子はまるで人気アイドルのコンサートのようだ。
参加者がそうした若い世代ということもあり、展示会場も、特に多い10代女性を対象としたような展示が多い。例えば会場のど真ん中にはスニッカーズやM&Mといったチョコレート製品で知られているマース社のブースがあり、そうした製品を試食したり、アトラクションに参加したり、さらには自分のYouTubeに配信したりして楽しんでいた。
会場の雰囲気としては、まさに「ニコニコ超会議」だと言えば、一度でもニコニコ超会議に参加した人には分かっていただけるだろうか。ターゲットとなる参加者が10代~20代の若者、そしてそこにアプローチしたい企業がブースを出すという構造もよく似ている。
B2BなCreator Trackも併催。YouTuberに熱心に質問も
B2Bという方向性では、Creator Trackと呼ばれる、ストリーミング動画を制作する側に向けた技術トラックも用意されていた。こちらでは、例えばAdobeのような動画を作成するツールを提供するソフトウェアベンダなどが講演し最新ツールの動向を紹介したり、新しい配信プラットフォームに関する講演といった動画配信をビジネスにしているYouTuberや企業などをターゲットにした講演が行なわれた。こちらは一般的なITのコンベンションと同じような参加者が中心で、子供達の姿はほぼなかった。
YouTubeがメインのイベントではあるが、そのYouTubeの対抗馬と考えられるInstgramによる「IGTV」、Facebookの動画配信サービス「Facebook Watch」などのブースも用意されており、来場者に対して配信サービスはYouTubeだけではないということを印象づけようとしていた。
このほか、YouTubeでも多く行なわれているゲームプレイのライブ配信のトレンドを反映してHyperX(米国のPCコンポーネントのメーカー)、ドローンのDJIや、AdobeやMicrosoftのSkypeといったソフトウェアメーカーも出展している。
そうした展示会場にある各企業のブースでも小さな講演会が行なわれており、そこにも著名なYouTuberが参加していた。例えばAdobeブースのYouTuberイベントでは、集まってくるのは、やはりYouTuberのファンである若い子達。「どうやったら有名なYouTuberになれるのか?」とか「どうやったらフォロワーを増やすことができるのか」と言った、かなり生々しい質問も飛びだしていて、真剣に有名YouTuberになりたい、という意気込みが伝わってきた。
キヤノンは1万円以下の子供向けアウトドアカメラを出展
カメラメーカーのキヤノンもそうした展示会場に出展しているブースの1つで、子供達向けには風船が詰め込まれたプールに入り、インスタ映えする写真撮影ブースも用意されていたが、ブースの多くは、YouTuberの卵やYouTuberに向けたカメラのアピールの場として使われていた。
その中でも注目を集めたのは、キヤノンが参考展示したカメラだ。Outdoor Activity Camera(仮称)という名前がつけられたカメラは、表にレンズが、裏にはスイッチが用意されており、スイッチにはオフ、静止画、動画、Wi-Fiでスマートフォンなどに転送というモードが用意されており、それを切り替えて操作することができるというシンプルな操作系になっている。液晶もファインダーも用意されておらず、レンズの横についているフレーム部分がその代わりになるということだった(ただし、眼から距離により異なるので、あくまで目安ということだった)。また、外側のジャケットを着せ替えることも可能になっており、オプションで着せ替えのカバーも提供される予定とのこと。
この試作製品はストレージ内蔵とのことだが、製品版ではmicroSDなどを利用する可能性が高いとのこと。というのも、価格として1万円以下を狙っているということで、メモリを内蔵にしてしまうとコストが上がってしまうのと、製品数が増えたりして低価格が難しくなるからだ。
Wi-Fiでスマホ転送する機能は標準で搭載されており、撮影した画像や映像をスマホに転送して見たり、静止画や動画の共有サイトにアップロードして使う、といった使い方を考えているとのことだった。
子供に持たせるためには壊れにくいことが重要で、液晶を省いたシンプルな構造や防水対応としているとのこと。画素数などはまだ未定で、VidConでの反応などを見ながら決めていくという。