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CHORD、小型据え置きDACが進化「Hugo TT 2」。Hugo M scaler/TTobbyも

 タイムロードは、英Chord Electronicsの新製品として、デスクトップでの利用を想定した小型の据え置き型DAC「Hugo TT 2」を発表した。今年の秋に発売予定で、価格は70万円前後を予定。さらに、Hugoファミリーとしてアップスケーラー「Hugo M scaler」と小型アナログアンプ「TTobby」も開発中である事を発表。これら2機種の発売日や価格は未定となっている。

Hugoファミリー。下から小型アナログアンプ「TTobby」、据え置き型DAC「Hugo TT 2」、アップスケーラー「Hugo M scaler」

Hugo TT 2

 ポータブルDACとして登場し、その音質の高さで話題となった「Hugo」。据え置き機として使う人も多く、そうしたニーズを受けて、据え置きに特化したモデル「Hugo TT」が誕生。そして今回発売されるのは、その後継モデル「Hugo TT2」となる。なお、Hugo TT2は完全な据え置き機で、バッテリ駆動はできない。

HHugo TT 2
左上にあるのが「Hugo TT 2」

 入力端子としてUSB B×1、光デジタル×2、BNC×2を装備。USBではPCM 768kHz/32bitまで、DSDは22.4MHzまで対応。光デジタルはPCM 96kHz/24bit、BNCはシングル時で192kHz/16bit、デュアル時は768kHz/24bitまで対応する。

 出力はXLRバランス×1、RCAアンバランス×1を搭載。ヘッドフォンアンプも備え、出力は、3.5mmのステレオミニと、6.3mm標準ジャックを各1系統搭載。デュアルBNC DX出力も1系統備えており、この端子は将来的なアップデートにより、使用できるようになるという。

 出力レベルは、アンバランス(@1% THD)では、288mW/300Ω、7.3 W/8Ω。バランス(@1% THD)では、1.15W/300Ω、18W/8Ω。

 DAC搭載ヘッドフォンアンプだけでなく、単体DACとして、別のコンポやアクティブスピーカーなどと接続する事もできる。DACモードに加え、プリアンプとして動作するモードも搭載。

 外形寸法は235×223×46mm(幅×奥行き×厚さ)。電源は付属のACアダプタを使用する。

背面
背面

 汎用的なDACやデジタルアンプを使わず、高速なFPGAを用いて処理を行なっているのが特徴。またこのFPGAと、“パルスアレイDAC”と呼ばれるフリップフロップ回路を組み合わせている。

 FPGAでは、デジタルデータからフィルタをかけてアナログ信号に戻す工程で、正確なアナログ波形に戻すために、独自の「WTAフィルタ」を使う。アナログの音(正弦波)がADコンバータによってデジタル化され、CDやデジタル配信されるわけだが、その際に、トランジェントの開始点で標本化して得られるデジタルデータは、細かく見るとカクカクとした階段状になっている。

 フィルタをかけてアナログ信号に戻す際、単純なフィルタではタイミング誤差が100μSec以上あり、正確な波形に戻らないという。そこで、フィルタのアルゴリズムを改良し、無限に処理ができるフィルタを使って補完するというコンセプトで、補完処理を増やしていく。これが「WTAフィルタ」であり、FIRフィルタの処理細かさをタップ数で表している。フィルタの細かさが増えるほど、時間軸方向の精度がアップし、トランジェントの良さや、リズムの再現性などで効果が出る。

 Hugoは26,368タップ、Hugo 2は49,195タップだが、Hugo TT 2は98,304タップを実現した。

DACなどのデジタル回路設計のコンサルタントを行なっているロバート・ワッツ氏

 アナログセクションの規模として、パルスアレイDACをチャンネルあたり10エレメントを使用。これはQutestと同じ数となる。12次のノイズシェイパーも投入した。なお、ハイエンドDAC「DAVE」は14次のノイズシェイパーを使っている。

 時間単位の分解能は81ナノ秒を実現。「人間の聴覚で識別できるのは3~4μ秒と言われており、81ナノ秒はそれを遥かに上回る分解能」だという。-178dBまでノイズフロア変調なしという高い性能を実現した。

 電源部と出力部は新開発。電源部にはバッテリではなく、30F×6基のスーパーキャパシタを搭載。瞬発的な電源供給能力が優れ、ゆとりを持った供給が可能という。ACアダプタを使うため、消費電力も低く抑えられている。

 出力部はディスクリート構成で、基本はヘッドフォン/イヤフォンやライン出力用のDACだが、スピーカードライブも可能なほど高い駆動力を備えている。

 電源スイッチは天面に搭載していた従来モデルから、前面上部へと移動。ラックなどに入れた場合も、操作しやすいという。

Hugo M scaler

 Hugoシリーズのアップスケーラーで、PCやディスクプレーヤーなどと、Hugo TT 2の間に接続。様々なソースを768kHzにアップサンプリングし、Hugo TT 2へと伝送できる。Chordは、高いアップサンプリング機能を備えたディスクトランスポート「Blu MkII」を発売しているが、そのアップサンプリング機能を切り出したような製品が「Hugo M scaler」となる。出力サンプリングレートの切り替えも可能で、パススルーも可能。ボリューム機能も備えている。

Hugo M scaler
右がHugo M scaler、左がHugo TT 2

 DACなどのデジタル回路設計のコンサルタントを行なっているロバート・ワッツ氏によれば、Hugo M scalerには528個のDSPを搭載し、パラレルで動作させている。16bitの音源でも、高精度に処理する事で「アナログの波形を正確に再現できる。従来は16bitの情報を真に活用できておらず、Hugo M scalerを通す事で真の16bitのサウンドに到達でき、その情報を余すところなく再現できる」という。

 なお、「Blu MkII」のアップサンプリング機能と差別化はつけておらず、「Blu MkII開発時に50万行のフィルタコードを書き上げたので、(Hugo M scalerのために)書き換えたくなかった(笑)」とのこと。

上段にあるのがディスクトランスポート「Blu MkII」

TTobby

 TTobbyは、Hugo TT 2との組み合わせを想定したアナログアンプで、筐体サイズもHugo TT 2と揃っている。Hugo TT 2をデジタルプリアンプとして活用し、TTobbyからスピーカー再生が楽しめる。

 入力としてXLRバランス、RCAアンバランスを装備。出力は100W(4Ω)。

下段が小型アナログアンプ「TTobby」

 テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TAD)で社長を務め、現在はタイムロードの社長である平野至洋氏は、Chord製品の魅力について、「前職の時に、市場でDAVEというDACが大ヒットしていると聞き、実験室で聴いてみた。数十秒で、何故ヒットしているのかがわかった。音が非常に良い事もそうだが、テクノロジーも良く、企画力も優れている。それぞれの機器が持つファンクションのタスクを再配置し、さらなる音質向上を果たすというユニークな製品群がChordの魅力。今後もタイムロードはこの素晴らしい製品を日本に紹介していきたい」と語った。

タイムロードの平野至洋社長
発表会の試聴では、TADの「Compact Evolution One」も使われた