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フォスターのユニット使った各社ヘッドフォン開発を支援「FOSTER Alliance Program」

フォスター電機は27日、東京・中野で開幕した「秋のヘッドフォン祭 2018」の中で、同社のドライバーユニットを他社に提供し、各社がヘッドフォンやイヤフォン、スマートスピーカーなど、様々な機器を開発できるようにする「FOSTER Alliance Program」を発表。賛同するFitEar、カナルワークス、くみたてラボによる試作機も展示された。

フォスター電機の」ユニットを使用したFitEarの試作ヘッドホン「FitEar Air3」

スピーカーユニットやイヤフォン向けのドライバのOEM提供などで高いシェアを誇るフォスター電機が、その音響技術を提供、逆に同社が持っていない他社の技術と組み合わせ、相互補完を目指すというプログラム。

具体的には、ヘッドフォン、イヤフォンを作りたいと考えている各社に、フォスター電機が試作用のダイナミック型ドライバー(5種類)を無償サンプルとして提供。詳細な技術資料も無償で開示する。さらに、試作の末に製品化が決定した時などには、共同プロモーションする機会も提供する。

第一弾としてラインナップされるダイナミック型ドライバー(5種類)

一方で、ユニットを使って試作しているメーカーに対しては、そのサンプル試作品の提供や、実際にドライバを使って開発した際に感じた不満点、コメントなどを製品レポートとしてまとめ、フィードバックを求める。また、実際の製品にそのドライバが採用された際には、「フォスター電機のユニットが採用された製品の事例」として、フォスター電機がその製品を紹介する許諾も求める。

こうした交流やフィードバックを通じ、フォスター電機は自社ドライバの進化や、パートナー企業とコラボした開発におけるノウハウの蓄積などを目指す。米国ラスベガスで1月に開催されるCESでの展示や発表も予定。ヘッドフォン・イヤフォンメーカーだけでなく、スマートスピーカーなど、音に関する製品を手がける様々なメーカーへの提案を行なう。

「国内外問わず 使ってみたいという企業であればどなたでも」というスタンスで、プログラム立ち上げにあたっては、FitEar、カナルワークス、くみたてラボの3社が賛同、FitEar、くみたてラボによる試作機も会場で展示された。

くみたてラボによる試作イヤフォン

試作用のダイナミック型ドライバーは現時点で5種類あり、ハイエンドヘッドフォン向けに、バイオセルロースの振動板や、フリーエッジ、磁束密度1テスラを超える50mm径のモデルから、今まで億単位で生産して、個体差をなくしたり、製造技術で品質を高めてきたという、フォスターを代表する14mm径ユニットなどをラインナップ。もっとも小さいものでは6mm径で、超小型イヤフォンや、バランスドアーマチュアと組み合わせたハイブリッドイヤフォンなどにも利用できるという。

ユニット選びには、モジュール構造で開発がしやすいタイプを選んだり、製品化の際に、供給しやすいユニットであるか否かなども考慮されている。

モバイルオーディオ第2営業部の河合英俊氏は、今回のプログラム発足のキッカケとして、「5年ほど前、カスタムイヤフォンを作るメーカーさんの中で、小売店で売っているヘッドフォンを購入し、それを分解し、中に入っているフォステクスのユニットを取り出して自社の製品に搭載しているという話を聞いた。当時はそのユニットを外販していなかったし、ビジネス的にマッチングはしなかったが、“そうまでして弊社のユニットを使いたいという人がいる”とわかり、どうにかしてその想いに応えられないか、良い製品を作るお手伝いができないかと考えた」という。

モバイルオーディオ第2営業部の河合英俊氏

また、市場環境が変化。スマートスピーカーなど、音を通じてデバイスとコミュニケーションする製品が増えているが、そうした機器を作るメーカーの中には、スピーカーユニットなどに詳しくないメーカーも存在する。そうしたメーカーをサポートする事も想定し、今回のプログラムを立ち上げたという。

前述のように、FitEar、カナルワークス、くみたてラボの3社にユニットを提供。フィードバックを受けているが、「メーカー同士、技術の人間の間で交流する事で、大きな気付きもあり、音の可能性が広がっている」と成果を語る。

実際にユニットを使って、ヘッドフォンを試作したFitEarの須山慶太代表は、密閉型ヘッドフォンの開発に挑戦。「(感想としては)ユニットが良すぎた(笑)。このユニットの音を、どうすれば損ねず、マイナスにせずヘッドフォンを作れるかというのがテーマになった」という。

FitEarの須山慶太代表
FitEarの試作ヘッドホン「FitEar Air3」

FitEarはイヤフォンでお馴染みだが、ヘッドフォン作りのノウハウは持っていない。そのため、アームなど、ユニット以外のパーツでもフォスターに協力を依頼。ハウジングはステンレス製となっている。こうした経験も踏まえ、須山氏は、ドライバ以外の機構部品などを含めた、“開発キット”のようなものがあると、よりスムーズな開発ができるのではと、フォスター側に要望。

これを受け、河合氏も、キット的な展開を検討すると返答した。さらに河合氏は、「今まで考えてはいなかったが、スターターキット的なものを一般販売するという可能性もある。知育玩具というわけではないが、DIYとしてイヤフォンを一般ユーザーが作り、ここをいじれば音が変わるなどの体験ができる。まだ検討段階ではあるが、春のイベントでは、一般ユーザーにも、ハンズオンでいろいろ試していただける機会が用意できればいいなと考えている」と、一般ユーザー向けキットの構想も語った。