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デノン、Atmos Height Virtualizer対応でBT送信も可能な10万円以下のAVアンプ
2019年5月17日 15:00
デノンは、AVアンプの新モデルとして、ハイト/サラウンドスピーカーが無くても仮想的に3Dサラウンドを再生する「Dolby Atmos Height Virtualizer」や、Bluetooth送信機能、eARCなどに対応した、10万円以下のAVアンプ2機種を6月中旬に発売する。どちらも7.2chアンプで、価格は「AVR-X1600H」が59,500円、「AVR-X2600H」が9万円。カラーはどちらもブラックのみ。
2機種の主な仕様の違いは、アンプの出力とHDMI端子の数。それ以外の機能面はほぼ共通している。どちらのモデルも、オブジェクトオーディオのDolby Atmos、DTS:Xのデコードが可能。7chのパワーアンプを搭載しているため、5.1.2のサラウンド環境を構築でき、2つのハイトチャンネルスピーカーを接続可能。ハイトチャンネルには、フロントハイト、トップフロント、トップミドル、フロントドルビーイネーブルド、サラウンドドルビーイネーブルドのいずれかを選択できる。
サラウンドバックやハイトチャンネルスピーカーを使用しない場合には、フロントスピーカーの駆動に4チャンネルのアンプを使って高音質化するバイアンプ接続、2系統のフロントスピーカーを切り替えて使用できる「A+B」などもアサインできる。
新機能として、DTS Virtual:X対応に加え、Dolby Atmos Height Virtualizerにも今後のファームウェア・アップデートにより対応。ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーを設置していないステレオ、5.1ch、7.1chなどの環境でも、高さ方向を含むあらゆる方向からのサウンドに包み込まれるバーチャルサラウンド再生ができるという。
HDMIは、X2600Hが8入力/2出力、X1600Hが6入力/1出力搭載。すべてのHDMIがデジタル映像コンテンツの著作権保護のHDCP 2.3に対応。X2600Hは2つのモニターHDMI出力を装備し、TVとプロジェクターなど、2つの画面に同時に同じ映像を出力できる。
全HDMI入出力端子は、4K/60pをサポート。4K/60p/4:4:4/24bitや、4K/60p/4:2:0/30bit、4K/60p/4:2:2/36bitなどの映像フォーマットに対応する。BT.2020のパススルーにも対応。
HDRは、HDR10、Dolby Vision、HLGに対応。4Kアップスケーリング機能も備えている。
HDMI 2.1の新機能「eARC」(Enhanced ARC)と「ALLM」(Auto Low Latency Mode)もサポート。eARCでは、テレビからAVアンプへの5.1chや7.1chのリニアPCM信号や、Dolby TrueHD/DTS-HD Master Audioなどのロスレスオーディオ、Dolby Atmos/DTS:Xなどのオブジェクトオーディオの伝送が可能になる。また、ALLMに対応したプレーヤー(ゲーム機)やテレビと接続すると、ゲームプレイ時にAVアンプとテレビが自動的に低遅延モードに切り替わり、映像の遅延を低減する。
ネットワークオーディオ機能「HEOS」のテクノロジーも搭載。音楽ストリーミングサービスやインターネットラジオ、LAN内のNASに保存した音楽ファイルや、USBメモリー内のファイルなども再生できる。同一のネットワークに接続した他のHEOSデバイスにAVR-X2600H/1600Hで再生中の音楽を配信することも可能。
DSDは5.6MHzまで、PCMは192kHz/24bitまでの再生に対応。DSD、WAV、 FLAC、Apple Losslessファイルのギャップレス再生にも対応する。
Amazon Alexaによる音声コントロールが可能。Amaozn EchoなどのAlexaが利用可能なデバイスに話しかけるだけで再生、停止、スキップや音量の調整などの基本的な操作に加え、Amazon Musicの楽曲から楽曲名やアーティスト名、年代、ジャンルなどを指定して再生できる。インターネットラジオの再生も可能。音楽配信サービスは、Amazon MusicやAWA、Spotify、SoundCloudなどをサポートする。
iOS 11.4で追加されたAirPlay 2に対応。Apple Musicの楽曲やその他のアプリの音声をAVアンプから再生できる。複数のAirPlay 2対応機器によるマルチルーム再生も可能。レスポンスや、動画再生時の映像と音声との同期精度の向上なども実現する。Siriによるボイスコントロールも可能。
Bluetooth受信にも対応し、スマホやタブレット内の音楽を手軽に再生できる。さらに、今後のファームアップデートにより、Bluetooth送信機能も追加予定。AVアンプで再生中の音を、Bluetoothヘッドフォンにワイヤレス送信できる。アップデートは2019年秋頃の予定。
自動音場補正技術「Audyssey MultEQ XT」も搭載。「Audyssey MultEQ Editor」アプリを使い、スマホやタブレットから、詳細な調整もできる。
AVR-X2600Hのアンプ部分
どちらのモデルも7chのパワーアンプを搭載。X2600Hの実用最大出力は175W(6Ω/1kHz/THD 10%/1ch駆動)。X1600Hは185W(6Ω/1kHz/THD 10%/1ch駆動)。適合インピーダンスはどちらも4~16Ω。
X2600Hでは、AVC-X8500Hなどの上位モデルと同様に、パワーアンプ初段の差動増幅段に特性のそろった2つのトランジスタを内包した、デュアル・トランジスタを採用。微小信号の表現力を高め、低域の安定感を向上させている。
電源部のブロックコンデンサーには、AVR-X2400Hから20%容量をアップした12,000uFのカスタムコンデンサーを2つ搭載。マルチチャンネルによる大音量再生時の余裕が増し、電源供給の安定性も向上。重厚かつ切れの良いサウンドにさらに磨きをかけたという。
パワーアンプの電源供給ラインにもこだわっており、従来のシングルワイヤーからデュアルワイヤーに変更。シングルワイヤーでは、クロストークが増えるなどの問題があるため、デュアルワイヤーにする事で、3ch、4chで1組ずつ電源供給する形となり、チャンネル間のクロストーク低減、歪やSNの改善、フォーカスも大きく向上したという。
DACは、上位モデルと同様に最新世代の32bit対応プレミアムDACを採用。DACのポストフィルター回路内のオペアンプの動作点を、AVC-X6500Hと同様のA級動作に変更。エネルギッシュで、引き締まった低域、歪感のない高域を実現した。電源と出力カップリングコンデンサーをオーディオグレードに変更し、音質を磨きあげている。
チップ内部の構成やワイヤリングのリファインに加え、高品質なシリコンウェファーの採用によって音質対策が図られた高音質オペアンプをD/Aコンバーターのポストフィルターに採用。音の密度や解像感、空間表現を向上させている。
入力セレクター、ボリューム、出力セレクターそれぞれの機能に特化したカスタムデバイスを採用。X8500Hでも採用されている高性能デバイスで、専用のデバイスを最適な配置でレイアウトすることで、音質を最優先したシンプルかつストレートな信号経路を実現。X2600Hではプリアンプ電源用ブロックコンデンサーを大容量化し、ボリューム回路やDACのポストフィルター回路の動作を安定化した。
ヒートシンクや電源トランスなどの重量物をフットの直近に配し高剛性なシャーシにしっかりと固定。音質に悪影響を及ぼす内部、外部の不要振動を排除し、音質の向上を図っている。新たにフットをX8500Hと同様の高密度タイプにグレードアップ。約2倍にアップした質量と内部に設けられた肉厚リブによって共振を抑え、音質への影響を防止している。
デジタル電源回路のスイッチング周波数を通常の約3倍とすることでスイッチングノイズを可聴帯域外へシフトさせ、再生音への影響を排除。デジタル回路用のスイッチングトランスにはシールドプレートを追加。さらに、電源回路全体をシールドプレートで覆うことにより、周辺回路への干渉を抑えた。
AVR-X1600Hのアンプ部分
AVR-X1600Hでは出力段のパワートランジスタのアイドリング電流量を増やすことで高調波歪を低減させ、小音量時に高域の素直な伸びを実現。パワーアンプ出力段のパワートランジスタの温度変化をリアルタイムにモニターすることで、電流リミッター回路を取り除き、ピーク電流を大幅に強化。
DCサーボ回路には大容量コンデンサーを用い、可聴帯域よりもさらに低い、超低域からの再生を実現。電源部のブロックコンデンサーには、大容量10,000uFのカスタムコンデンサーを2つ搭載している。
DACは上位モデルと同様に最新世代の32bit対応プレミアムDAC。ポストフィルターに温度変化による抵抗値のばらつきが小さい薄膜抵抗を採用し、電流起因によるノイズと歪みを大幅に低減した。
チップ内部の構成やワイヤリングのリファインに加え、高品質なシリコンウェファーの採用によって音質対策が図られた高音質オペアンプをDACのポストフィルターに採用。音の密度や解像感、空間表現を向上させている。
入力セレクター、ボリューム、出力セレクターそれぞれの機能に特化したカスタムデバイスを採用。従来共有していたアナログビデオ回路用電源とアナログオーディオ回路用電源を別系統での供給に改め、繊細なオーディオ信号への影響を低減している。
ヒートシンクや電源トランスなどの重量物をフットの直近に配し高剛性のシャーシにしっかりと固定。デジタル電源回路のスイッチング周波数を通常の約3倍とすることでスイッチングノイズを可聴帯域外へシフトさせ、再生音への影響を排除。デジタル回路用のスイッチングトランスにはシールドプレートを追加。電源回路全体をシールドプレートで覆うことにより、周辺回路への干渉を抑えている。
以下は2機種共通。IEEE 802.11a/b/g/nの無線LANを搭載。HDMI以外の端子は、アナログ映像がコンポジット入力×2、コンポジット出力×1、コンポーネント入力×2、コンポーネント出力×1。音声入出力はアナログ音声入力×4、Phono入力(MM)×1、光デジタル入力×2、サブウーファープリ出力×2、ゾーンプリ出力×1、ヘッドフォン出力×1。
LAN端子、フロントUSBなども装備する。2600Hの外形寸法はアンテナを寝かせた状態で、434×341×167mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は9.5kg。消費電力は500W。1600Hは434×151×339mmで、8.6kg。消費電力は430W。スピーカーターミナルは横一列に端子を並べており、スピーカーケーブルが接続しやすくなっている。
音質の進化具合
サウンドマネージャーの山内慎一氏は、今年の新モデルについて、「音の分離や見通しなど、オーディオ的な品位が大きく向上している。昨年のモデルでも、かなり音質が向上していて、“これ以上どうやろうか”という話をしていたが、そこから予想を越えた変化があった」と説明。
実際にX2600Hを、2chやサラウンド環境で試聴したが、音場の広さや、そこに定位する音像の明瞭さ、そして1つ1つの音の勢いの良さなどで進化を実感できる。マルチチャンネルで再生する「プライベート・ライアン」では、戦場の広さが奥行きのあるサラウンドで表現されると同時に、足音や砂の音など、近くの細かな音も明瞭かつリアルに描写。
頭上を飛ぶ飛行機の移動感も明瞭。音像も立体的で、輪郭もシャープだ。中低域の沈み込みの深さにも、確かに駆動力が感じられる。全体的にスケール感の大きな音で、とても10万円以下のAVアンプとは思えない、開放的かつクリアなサウンドが楽しめた。