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ソニー新ウォークマン、WMポートがUSB-Cに。音楽配信も高音質化
2022年2月9日 10:04
ソニーは、ウォークマンのハイエンドモデル「NW-WM1ZM2」と「NW-WM1AM2」を3月25日に発売する。ストリーミング音楽配信への対応を強化したほか、ディスプレイは5型に大型化。データ転送や充電に使う独自のWMポートは廃止され、USB-Cになった。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は無酸素銅金メッキシャーシのNW-WM1ZM2が40万円前後、ベーシックなNW-WM1AM2が16万円前後。
OSがAndroidに、ストリーミングアプリも高音質化して再生
5年ぶりとなるフラッグシップモデルの刷新。5年の間に登場したSignatureシリーズの「DMP-Z」で開発した技術を投入しているほか、普及した音楽ストリーミングサービスへの対応を強化するため、採用OSを従来のLinuxから、Android 11に変更。Google Playにも対応しており、ユーザーが好きなアプリをインストールし、様々なストリーミングサービスにも対応できるようにした。
また、非ハイレゾの音楽を、ハイレゾ相当にアップスケーリングする「DSEE Ultimate」も進化。ビットの拡張やサンプリング周波数を高め、最大192kHz/32bit相当まで拡張するもので、AI技術を用いることで、曲のタイプを自動で判別。高音域に加えて、微細な音の再現性も高めているのが特徴。しかし、従来モデルではソニーの音楽再生アプリ「W.music」利用時のみしか使うことができなかった。
新モデルのNW-WM1ZM2、NW-WM1AM2向けにアップデートされたDSEE Ultimateでは、CD相当のロスレスコーデック(Flac 44.1kHz/48kHz)における、アップスケーリング技術が進化したほか、W.music以外の、ストリーミングサービスのアプリも含め、全てのアプリでDSEE Ultimateが使えるようになった。
さらに、イヤフォンやヘッドフォンの有線接続時に加え、無線接続する際も、DSEE Ultimateが使えるようになり、DSEE Ultimate処理をかけたサウンドをワイヤレスで伝送できる。Bluetoothのコーデックは、従来モデルから踏襲のSBC/aptX/aptX HD/LDACに加え、新たにAACでの伝送も可能になった。
また、新モデルでは360Reality Audioの再生も可能。CDから、直接音楽を取り込む機能も搭載している。
WMポート廃止、USB-Cを採用
ストレージメモリとしてWM1ZM2は256GB、WM1AM2は128GBを内蔵。どちらもmicroSDカードスロットを備えている。筐体は一回り大きくなり、NW-WM1Z/WM1Aは123.4×65.3×19.9mm(縦×横×厚さ)だったが、NW-WM1ZM2/WM1AM2は141.4×75.6×20.8mm(同)となった。
重量も増加しており、NW-WM1Zは約455g、WM1Aは約267gだったところ、NW-WM1ZM2は約490g、WM1AM2は約299gになっている。一方で、ディスプレイは5型とサイズアップし、解像度は1,280×720ドット。大画面化する事で操作性が向上しており、家の中で使う人も多い高級DAPとして利便性が高まったという。
ホーム画面には音楽再生ウィジェットを配置。音楽再生アプリでは、再生中の背景のカラーが、楽曲のジャケットの色になる機能が追加されている。
エイジングを確認するカウンターも用意しており、新モデルではアンバランス接続、バランス接続、それぞれの再生時間が確認できるようになった。
バッテリーの持続時間もアップ。96kHz/24bitのFLAC再生で比較すると、NW-WM1Z/WM1Aが30時間のところ、NW-WM1M2は40時間になった。Bluetoothで、96kHz/24bitのFLACをLDACコーデックで再生する場合は、NW-WM1Z/WM1Aが15時間のところ、NW-WM1M2は18時間再生できる。
底部のコネクタはWMポートから、USB-C(USB 3.2 Gen1)へと変更。データ転送速度が高速化しているほか、大容量バッテリーを搭載しつつも、フル充電の所要時間を従来の7時間から、新モデルでは4.5時間に高速化。利便性を高めている。
イヤフォン出力は、ステレオミニのアンバランスと、4.4mmのバランスを各1系統装備する。USB DACとしても動作し、前述のDSEE Ultimateを使うことも可能。
新モデルの高音質化ポイント
新モデルは2機種とも、筐体が進化。NW-WM1ZM2は、無酸素銅の金メッキシャーシを採用しているが、その無酸素銅の純度をWM1Zの99.96%から、NW-WM1ZM2では99.99%(4N)へとアップ。不純物が1/4に減少しているという。
「純度を上げると、どんどん音が良くなる事は実験でわかったが、純度を上げると柔らかくなるため、削りにくくなる。(切削をする)業者さんに“量産しないのであれば削ってあげる”と言われ、試しに99.99%で作ったところ、高域が伸びて、低域もずっしりと出るようになり、絶対にこれを新モデルで採用したいと考えた。加工も難しく、重量もアップしてしまうため、上から3回NGをもらったが、実際に音が良くなる事を体験してもらい、なんとかOKをもらった」(開発エンジニアの佐藤浩朗氏)という。
NW-WM1ZM2では、この総削り出し無酸素銅シャーシに、高純度(約99.7%)の金メッキを施し、音質効果と高剛性を両立。金メッキの下地には、非磁性体の三元合金めっき採用。無酸素銅を採用することで大幅な抵抗値の低減を実現。さらに、金メッキにより接触抵抗低減と酸化防止の効果もあるという。
背面カバーには、削り出しのアルミシャーシを使用。高剛性に寄与しているほか、「透明感があり、力強い表現。音場も広く、微細音も聴こえるようになる。象徴的なプレミアムデザイン造形のひとつ」だという。
ベーシックモデルのNW-WM1AM2も、背面にアルミカバーを採用。WM1ではシャーシに押し出しの樹脂+コルソン銅の2分割リアカバーを採用していたが、新モデルではこのシャーシの材料を一体型アルミとすることでさらなる高剛性化を実現。伸びのある透明感を実現したという。
電源部も強化。ソニーが、音質を最重視して独自開発したコンデンサー「FTCAP3」を、オーディオブロックの電源のバイパスコンデンサー全てに採用。FTCAP3事態も、コンデンサー内部構造の更なるチューニングを行なっている。ホーム用据え置きオーディオ機での開発ノウハウを生かし、耐振動性を向上させることで音質を向上させた。
従来から採用している高音質はんだも進化。金を添加することで高音質化しており、マイスターが試聴を繰り返し添加量をチューニング。リフローはんだ、手付はんだ部に使用。広がりや定位感が向上したという。
NW-WM1ZM2のみの特徴としては、内部のバランス出力用ヘッドフォンケーブルを、WM1Zで採用しているイヤフォン用キンバーケーブルから更にグレードアップ。DMP-Z1で採用した、キンバーケーブルとの協力で開発した4芯Braid(編み)構造のヘッドフォン用の太いケーブル(MUC-B20SB1と同仕様)を、筐体内に格納。外部ノイズを遮断し、高品位なオーディオ信号を伝達できるという。
2機種とも、金蒸着・超低位相ノイズの水晶発振器を採用。低位相ノイズ品の発振器において、水晶片の電極を金蒸着で形成するもので(通常は銀)、WM1よりサイズは大きくなった。DMP-Z1と同サイズで、性能が向上している。サウンド面は「楽器の分離、低音の量感UPベールを一枚剥がしたかのような音質」になるという。
入力されたすべてのPCM音源を、11.2MHz相当のDSD信号に変換する「DSDリマスタリングエンジン」を搭載。DMP-Z1にも搭載している機能だが、DMP-Z1が5.6MHz相当のDSDに変換するところ、新ウォークマン2機種では11.2MHz相当へと変換。独自のアルゴリズムにより元のデータの情報量を損なわず、DSD信号に変換できるという。
この「DSDリマスタリングエンジン」はON/OFFが可能。有線接続でW.ミュージック再生時のみ有効で、W.ミュージック以外での再生時やBluetoothのワイヤレスリスニング時には使えない。また、DSDネイティブ再生はバランス接続時のみ対応。アンバランス接続時はリニアPCMへの変換再生となる。
Android OS搭載でも高音質化
新モデルではAndroid OSに変更されたが、それが音質の劣化につながらないように様々な対策を施している。
具体的には、アナログブロックに対して、アンテナモジュールを物理的に距離をあけて設置し、アイソレーションを図る事で高周波の音質影響を排除。従来モデルに搭載していたGPSは排除した。そのため、GPSを使うアプリは使用できないという。
SoC向けの電源部は、切削無酸素銅のシールドで覆い、ノイズを遮断。デジタルブロックの電源/グランドを強化・安定化させ、ノイズの発生も抑えている。
S-Master側のクロック(44.1系/48系)でデジタルオーディオ回路を動作させており、Androidプラットフォームのデジタル出力も高音質化させた。
DACとデジタルアンプを組み合わせた「S-Master HX」は、アナログブロックの電源/グランドを強化・安定化させ、外部からのノイズ耐性を向上。音質を決定付けるアナログブロックへ、デジタルブロックの影響が及ばないように基板レイアウト上の両ブロックをしっかり分離している。
アクセサリー
専用レザーケース「CKL-NWWM1M2」も同日に発売。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は11,000円前後。
側面まで覆うデザインになっているが、サイドボタンも含め、カバーを装着したまま操作や充電が可能。
特別コンテンツも配信
YouTubeでは、Signature Series開発ストーリーを配信開始。Signatureの紹介や、エンジニアによる新商品の紹介が見られる。また、エンジニアへの質問をTwitterで募集している。期間は2月16日まで。
3月17日には、2弾としてエンジニアパネルディスカッションもYouTubeで配信。開発秘話が語られるほか、事前に募集したユーザーからの質問にも答えるという。