ミニレビュー
ソニー5年ぶりのハイエンド・ウォークマン。新旧を聴き比べた
2022年2月9日 10:07
ソニーから、5年ぶりにウォークマンのハイエンドモデル「NW-WM1ZM2」、「NW-WM1AM2」が発表された。3月25日発売で、実売は無酸素銅金メッキシャーシのNW-WM1ZM2が40万円前後、ベーシックなNW-WM1AM2が16万円前後と、流石はハイエンドという価格だ。ここでは、短期間ではあるが、両機種を試聴したファーストインプレッションをお届けする。
詳細は、本日掲載したニュース記事を参照して欲しい。主な進化点としては、以下の通りだ。
- OSがLinuxから、Android 11になり音楽配信アプリなどが自由にインストール可能に
- 筐体が一回り大きくなり、画面も4型から5型に大型化
- 底部の端子が独自のWMポートからUSB-Cに
- バッテリーの持続時間アップ
- DSEE Ultimateがサードパーティー製アプリやBluetooth再生時でも使えるように
- PCMをDSDに変換しながら再生する「DSDマスタリングエンジン」搭載
- DACとデジタルアンプを統合したS-Master HXは踏襲
- 電源強化やオーディオライン最適化、クロックも最適化
- WM1ZM2は無酸素銅金メッキシャーシの純度アップ、2機種ともリアカバー強化
音はどのように進化したか
まず、ベーシックなモデルである「WM1A」と、その新モデルである「WM1AM2」をバランス接続ヘッドフォンを使って比較する。楽曲は「Joe Stilgoe/Almost Like Being in Love (Live)」
前述の通り、DACとデジタルアンプを統合したS-Master HXは踏襲されているので、駆動力などに新旧の違いはない。しかし、出てくる音は大幅に進化している。
まず、SN感が良くなっており、音楽がはじまる前のコンサートホールの観客の笑い声や、手を叩く音、それが反響する空間の広さなどが、新モデルの方がより細かく、リアルに聴き取れるようになった。本当に“音が出る前”なのに、情報量が増え、増加した情報を聴き取りやすくなった事がわかる。
音楽がスタートすると、人間の声のリアルさや、うねるアコースティックベースの分解能、ドラムのキレなどに、WM1AM2の進化を聴き取れる。情報量が増加しているため、ボリュームを上げていってもまったく“うるさく”感じない。旧モデルで“ちょっと音が大味になったな”と感じるほどのボリュームに到達しても、WM1AM2では繊細な描写が維持されている。
詳細はニュース記事に掲載しているが、細かな音質改善点が積み重なり、大きな進化となっている。そのため、WM1Aを聴いたあとでWM1AM2に切り替えた瞬間に、「あ、音が良くなった」とすぐ実感できるレベルの違いがある。
WM1AM2の音質を実感した上で、さらにその上位モデルである「NW-WM1ZM2」に交換すると、さらに世界が一変する。音楽がはじまる前の静かなホールの空気が、さらに透明度を増し、ギョッとするほどリアルになる。
拍手や笑い声が広がる空間も、はっきりとわかるほど広大になる。音楽がスタートしてからも、その余韻が広がる空間がさらに遠くまで描写されるため、密閉型ヘッドフォンで聴いているのに、開放型ヘッドフォンを使っているような気分になる。これはなかなか味わえない体験だ。
音の純度が上がったためか、1つ1つの音の質感がより伝わってくる。そのため、音から感じる“色気”のようなものが濃くなる。ピュアオーディオのハイエンドモデルを聴いている時の感覚に近い。低音が強いとか、高音が綺麗とか、そういう域を超えた、聴いていると“惚れて”しまう音だ。
約40万円のハイエンドモデルの音が魅力的なのは、ある意味当然だ。
その一方で気になるのは、既存のハイエンドモデルである「NW-WM1Z」(実売約33万円)と、新機種のベーシックモデルである「NW-WM1AM2」(同約16万円)は、どちらが高音質なのかという点だ。
この聴き比べは実に面白い。SN感は肉薄しており、情報量の面では新機種であるWM1AM2の方が上回っている部分がある。その一方で、空気感や、高域に漂う気品みたいなものは既存のハイエンドWM1Zの方が一枚上手だ。ただ、両者の実力はかなり近づいており、聴く人の好みによっては、WM1AM2の方が好きだという人もいるだろう。そう考えると、WM1AM2はかなりコストパフォーマンスが高いモデルと言っても良さそうだ。
なお、音楽配信での音質比較など、詳細なレビューは後日お届けする予定だ。