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YouTubeが取り組む著作権管理。「常に開発と改善が求められる」

Googleは、YouTubeの著作権管理ツールに関するメディアラウンドテーブルをオンラインで実施。同社が提供している著作権管理ツールについて説明するとともに、そのうちのひとつであるContent IDを使った申立件数が2021年後半だけで7億5,000万以上に上ったことを明かした。

メディアラウンドテーブルに登壇したのは、YouTubeで著作権管理のグローバルプロダクトマネージャーを務めているファビオ・マガグナ(Fabio Magagna)氏。

ファビオ氏は「YouTubeには、世界中の誰もをクリエイティブにするというビジョンがある。動画やアートワークを作成し、YouTubeにアップロードして、ファンを作り出し、そこで対価を得るというビジョンだ。実際、YouTubeの月間ログイン数は世界で20億人を超え、毎分500時間以上の動画が投稿され、人々はクリエイティブに活動し、ファンを作り出して、生活している。またサブスクリプション・ベースと広告サポートモデルを通じて、権利者が自身のコンテンツとユーザーが作るコンテンツの両方から収益を得られる機会も適用してきた」とコメントした。

その一方で、「自分が関わっていない作品をアップロードしているユーザーもいる。彼らの中には意図的に著作権を侵害しているもの、“アクシデント的に”著作権を侵害してしまっているものもある」という。そして「我々の目標は権利所有者が自身の作品のすべてをコントロールできるようにすること。自分たちの作品に何が起こっているかを把握でき、今まで以上にリーチや再生回数が増えている場合は、そこから利益を得られるようにすることだ」と語った。

そのためのツールが「開発・運用に数億ドルを投じている」というCopyright Management Suite(著作権管理ツール)で、だれでも利用できる「ウェブフォーム」、2021年12月時点で200万以上のチャンネルに提供している「コピーライト マッチチール」、映画制作会社やレコードレーベル、著作権管理団体といった最も複雑な著作権管理を必要とするユーザー向けの「Content ID」という3つのツールを提供している。

「この著作権管理ツールは、著作権侵害の可能性があるコンテンツを検出する最高クラスの技術であるContent ID照合機能を備えている。私たちは権利者と協力して、YouTubeにおける著作権で保護されたコンテンツの投稿規模、コンテンツをオンライン上で適切に管理するための能力などを考慮して、各権利者に最適なツールを提供している」とマガグナ氏。

「私たちは、より強力な機能へのアクセスを広げる一方で、これらのツールが悪用された場合に生じる重大な混乱から、クリエイターと視聴者、そのほかの権利者を保護する必要性とプラットフォーム全体のリーチのバランスを取ることに日々取り組んでいる」

ウェブフォームは、「もっとも主流で簡単な著作権侵害報告の方法。だれでもアクセスでき、80言語以上で利用できる」というもので、2021年後半にYouTubeの著作権管理ツールを通じてコンテンツ削除の申し立てまたは依頼を行った申立人の70%以上が使用しているという。

その一方で、アクセスが制限されている削除ツールと比べると、悪用率は30倍高く、'21年後半に同フォームから削除依頼を受けた動画の8%以上が、著作権侵害による削除依頼の不正利用(YouTubeのチームが著作権の所有を偽って主張している可能性が高いと判断したもの)の対象だったという。

コピーライト マッチ ツールは、Content IDのマッチング技術を活用して、YouTube上の動画の再アップロードを検出するツール。ある動画を最初にアップロードしたクリエイターには、YouTubeに参照用ファイルをアップロードしなくても、同じ動画が再アップロードされた場合、その動画がリストで表示される。クリエイターは最大50の動画へ一度に削除依頼が出せるほか、マッチ結果の保存、当該動画をアップロードしたユーザーにコンタクトを取ることもできる。

9,000以上のパートナーが利用しているContent IDは、ツールのユーザー数こそ少ないものの、Content IDパートナーからの申し立てはYouTubeにおけるすべての著作権処理の98%以上を占めている。

Content IDでは、コンテンツホルダーが独占的な権利を持っているコンテンツを参照ファイルとしてアップロード。YouTubeはアップロードされてくる動画が、そのコンテンツと一致するかをデータベースと照合し、一致する動画があれば、コンテンツホルダーが自ら設定したルールやポリシーに基づいたアクションを実施する。

コンテンツホルダーが設定できるのは、「閲覧できないように動画をブロックする」、「動画に広告を掲載して収益化する。場合によってはアップロードしたユーザーと収益を分配する」、「その動画の再生に関する統計情報を追跡する」の3つ。Googleによれば、'21年後半にはContent IDの申し立て全体の90%以上で、「収益化」が選択され、コンテンツホルダーが新たな収益源を開拓しているとのこと。

'21年後半に行なわれたContent IDの申し立て合計件数は7億5,000万以上。このうちアップロードしたユーザーから異議申し立てを受けたのは1%未満で、異議申し立ての60%以上は、アップロードしたユーザーの主張が通ったという。これは申立人が自主的に申し立てを取り下げた、または申立人が期限までに異議申し立てに対応しなかったかのどちらかが理由という。

YouTubeは、2020年11月までの3年間でクリエイター、アーティスト、メディア企業に対して300億ドル以上を支払っており、Content IDを通じて請求され、収益化されたコンテンツから2021年12月時点で75億ドルの収益が権利者側に支払われたことも明かした。またYouTubeでは、透明性と公的説明責任の精神に基づいて、著作権施策の結果をまとめた「著作権透明性レポート」も年に2回公開している。

最後にファビオ氏は「ここ(著作権管理)は常に開発と改善が求められる場であることを強調しておきたい。私たちは権利所有者の意見を聞いて、より良い解決策を探しており、常にプロセスとツールの改善に努めている」とコメントした。