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叫んでも周囲に声が漏れないBluetoothマイク「mutalk」量産版公開

ShiftallのHMD「MeganeX」とBluetoothマイク「mutalk」を装着したところ

Shiftallは、今年頭のCES2022で発表した、声を外に漏らさないBluetoothマイク「mutalk」の量産版を発表した。価格は19,900円で、2日から予約受付を開始。出荷タイミングは11~12月頃を予定している。

mutalkは、自分の声を周りに聞こえにくくする、音漏れ防止機能付きのBluetoothマイク。スマートフォンやパソコンとワイヤレスで連携して、ボイスチャットやWeb会議などで活用できる。

片手で本体を保持し、喋る時だけ口に当てて使えるほか、専用のバンドで口の前に固定し、ハンズフリーでゲーム配信をしながら使うことも可能。

Shiftall代表取締役CEOの岩佐琢磨氏

Shiftall代表取締役CEOの岩佐琢磨氏は、この2年で増加した事象として、自宅やカフェでのオンライン会議、VRやメタバース、ボイスチャットをしながらのゲーム、YouTuber、VTuberなどの配信者、Twitter Spacesなどの音声SNSなどを挙げ、これらに共通する要素として「マイクを使って音声をネットに流す事が激増した」と分析。

その結果、自分がオンラインで会話していて、聞かれたくない内容が家族や隣家に聞こえてしまい、それがもとでトラブルになる。配信しているマイクに、家族の声が入ってしまう。ゲーム中のエキサイトした会話が子供に聞かれてしまう……などの問題も起こっている。

そこで開発したのが「mutalk」。内部に吸音材やマイクを搭載しており、通常の音量で会話をしても、外に漏れる声は平均で-20dB、叫び超えなどの高音域では-30dB削減できるという。この低減性能は、通常の会話レベルで発声しても、2m離れた人からは、何を喋っているか聞き取れないレベルとなる。

発表会場でのデモ
完成した量産モデル
口に当てる側
外側の先端には空気穴がある

完成した量産モデルは、CESで発表した試作機よりも、容積が20、30%ほど削減され、よりコンパクトになった。外形寸法は123×67×107.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は183g。

効果としては外に声が漏れないだけでなく、外の騒音がマイクに集音されないという効果もある。1m隣にいる人の会話が聞き取れないほどの騒音の中、例えば地下鉄の中などでも、クリアな音声を収録できるという。キーボードを叩きながら会話をしても、カチャカチャというキーボードの音がマイクに入らない。ただし、鼻を覆ってはいないため、声は少し鼻声になるという。

発表会ではデモとして、1m前にBluetoothスピーカーを設置し、大音量で騒音を再生した環境で、男性と女性が喋る録音した音声も披露。一般的な完全ワイヤレスイヤフォンで通話した音声には、街の騒音がかなり入ってしまうが、mutalkは騒音がほぼ入らないクリアな声で録音できていた。

『mutalk』音声録音比較テスト

バンドで口の前に固定できるが、バンドの構造や素材を工夫し、HMDのバンドと併用しても問題ないようにしたという。また、バンドを使わず、手に持って使うこともできるが、本体に加速度センサーを搭載しており、先端を下に置くと自動的にマイクがミュート。再び手に持って持ち上げると、自動でミュートが解除される。なお、ミュートしているかどうかはLEDランプで表示しており、オレンジに点灯しているとミュート、グリーンでは集音中となる。

バンドで固定し、ハンズフリーでも使える
本体にイヤフォン端子も搭載しており、ユーザーが手持ちのヘッドフォンを接続できる

構造としては、内部にマイクを搭載するとともに、ヘルムホルツ共鳴の原理を用いて、吸音材などを配置した小さな部屋が復数用意。そこを声が通りながら小さくなっていき、外に漏らさないようにしている。最近ではヘッドフォンやイヤフォンのノイズキャンセリング機能がついていたり、人間の声だけをアルゴリズムで検知して抜き出すような製品も存在しているが、mutalkはそうした電気的な信号処理はしておらず、あくまで構造によって声を小さく、漏らさないようにしている。そのため、電源をOFFにした状態で口の前に当てて大声を出しても、マイクの集音はできないが、声自体は小さくなる。

Bluetoothマイクとして使える製品だが、製品としてはBluetoothヘッドセットとして動作。本体にイヤフォン端子も搭載しており、ユーザーが手持ちのヘッドフォンを接続し、スマホから流れるオンライン通話相手の声などを聞く事ができる。PCで使う際は、mutalkのマイクだけ使い、ヘッドフォンはPCに接続したものを使うことも可能。PCのボイスチェンジャーソフトなども使用できる。

衛生面も考慮。肌に触れるマウスパッドと、唾液の飛沫を受ける吸湿スポンジは脱着可能で、水洗いができる。

肌に触れるマウスパッドと、唾液の飛沫を受ける吸湿スポンジを外したところ
外した際の本体側。ネジがある突起の向こうに、マイクと声を小さくするための復数の部屋がある

マイク周波数帯域は100Hz~10kHz、入力感度は-51dB±3.5dB。8時間連続利用可能。充電方式はUSB-C。対応OSはWindows 10以降/macOS v11以降/macOS v10.13以降/iOS 13,4以降/iPadOS 13.4以降/Android 10以降。通信方式はBluetooth v5.1。プロファイルはHSP/HFP。

専用アプリも用意しているが、現時点ではファームウェアアップデートとバッテリー残量表示くらいの機能だという
Shiftallの岩佐氏に加え、ゲストとしてmutalk発案者であり、パナソニック所属のデザイナーである大嶋氏も登壇。実際にオンライン会議などでの自身の声が周囲の人に漏れてしまう体験から開発をスタートしたことなど、経緯を説明した