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Nothing、自分に最適な音にできるハイレゾ完全ワイヤレス「Nothing Ear (2)」

ハイレゾに対応した「Nothing Ear (2)」

Nothihg Technologyは、LHDCコーデックに対応し、ハイレゾ・オーディオ認定を取得したアクティブノイズキャンセリング(ANC)対応完全ワイヤレスイヤフォン「Nothing Ear (2)」を発表した。直販サイトと東京・渋谷にあるKITH TOKYOでは、3月23日より数量限定で先行販売を開始する。価格は22,800円。

30日からは、MoMA Design Storeや二子玉川 蔦屋家電、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダ電機、ケーズデンキ、e☆イヤホン、池部楽器店パワーレックなどでも全国販売する。全国販売に先駆けて、3月28日から予約を受け付ける。

Nothing Ear (2)プレブリーフィングにオンラインで登壇したアキス・イワンジェリディス氏

ブランド初の製品として2021年夏に発売し、60万台を販売したという完全ワイヤレス「Nothing Ear (1)」の後継機となる。

事前に行なわれたNothing Ear (2)プレブリーフィングで、同社のHead of Marketing & Co-Founderのアキス・イワンジェリディス氏は、Ear (1)開発時は30名程度だったエンジニアが170名以上に増えたことや、Ear (1)で得た知見などを盛り込んで開発したことを明かし、「(Nothing Technologyが)いろいろな意味で、新しいステージに突入したことを示す重要な製品」と位置づけた。

従来は4パーツ構成だったケースを、3パーツ構成に変更
左がNothing Ear (1)、右がNothing Ear (2)
今度は左がNothing Ear (2)、右がNothing Ear (1)。幅も厚みもコンパクトになっている

デザイン面では初代モデルを踏襲しつつ、ユーザーから小型化の要望が多かったというケースについて、従来は4パーツ構成だったものを、3パーツ構成に変更して、質量を30%削減した。あわせて、ケースはIP55の防水防塵仕様となった。イヤフォンはIP54。

Nothing Ear (2)のイヤフォン

イヤフォンのドライバーも改良された。PUとグラフェンを使った独自のカスタムダイヤフラムを備えた11.6mm径のダイナミックドライバーを搭載。柔らかいPUと軽量で剛性のあるグラフェンを組み合わせることで、低域をパワフルにしつつ、明瞭さも兼ね備えたという。使用するマグネットも、従来のN45グレードからN52グレードに変更されている。

独自のュアルチェンバー設計を採用

新たに独自のデュアルチャンバー設計も採用。ドライバーからユーザーの耳に音が届くまでの空気の流れをスムーズにすることで、よりクリアなサウンドを届けるという。これらドライバーの強化により、チューニングにも柔軟性が生まれたとのこと。

「Nothing X」アプリでイヤーピースのフィットテストができる
アプリからはパーソナルサウンドプロファイルの生成も可能

イヤフォン内蔵のチップセットを、より高性能なものにしたことで、使用できるメモリ容量とアルゴリズムも強化。「Nothing X」アプリでは、イヤーチップの装着テストができるほか、さまざまな周波数ポイントで再生される多様な音を、ユーザーが「聞こえる」か「聞こえないか」を判断することで、ユーザーにあったパーソナルサウンドプロファイル「ヒアリングID」を生成できる。

このヒアリングIDに応じて、イヤフォン側でEQカーブが自動調整され、最適化されたサウンドを提供するという。このEQカーブは、音量などに応じて「リアルタイムに動的な補正を実施する」とのこと。

ANCの強度は3段階から選択できるほか、自動的に強度調整されるアダプティブモードも利用できる

ノイズキャンセリングについても強化されており、ANCは最大40dBのノイズキャンセリング性能を誇る。強度は3段階を任意に切り替えられるほか、周囲の雑音レベルに応じて、自動的にANC強度が調整されるアダプティブモード、トランスペアレンシーモード(外音取り込みモード)を利用できる。

ANCにも、上述のヒアリングIDを活用でき「最高に快適でカスタマイズされたリスニング体験」を実現するという。

通話性能では、独自のClear Voice Technologyが強化された。3つのマイクとAIノイズ低減アルゴリズムを備えている。マイク位置は風切り音への耐性を高めるために初代モデルから変更され、アルゴリズムのサウンドサンプルも従来の100万通りから、2,000万以上に強化された。

ケース背面

Bluetooth 5.3準拠で、コーデックはSBCとAAC、LHDC 5.0をサポートする。LHDC 5.0では、最大192kHz/24bitのデータを1Mbpsに達する速度で伝送でき「サウンドのディテールを業界トップの水準で楽しめる」という。同じくハイレゾ相当の伝送ができるLDACには非対応。同社によれば「よりサンプルレートが高いLHDCを選択した」とのこと。またEar (2)については、アップデートでLDACに対応することもないという。

イヤフォンはアンテナ位置が見直され、通信安定性も改善された

ユーザーから要望が多かったというマルチポイント接続に対応。ふたつの機器に同時接続することができる。アンテナ位置も従来モデルから変更されており、通信安定性を50%改善したとのこと。

バッテリー持続時間も従来モデルから強化され、イヤフォン単体はANCオフ時で6.3時間、ケース併用時最大36時間。ANCオン時はイヤフォン単体で4時間、ケース併用で最大22.5時間。充電ポートはUSB Type-Cで、10分の充電で8時間使える急速充電に対応。Qi規格のワイヤレス充電(最大2.5W)もできる。

イヤフォンはブレスコントロールに対応。アプリで操作の確認やカスタマイズができる

イヤフォンはプレスコントロールに対応。楽曲の再生/停止やスキップ、ANCとトランスペアレンシーモードの切り替え、音量調整などができる。ブレスコントロールについては「タッチノイズが不快感をもたらしたり、誤作動を招く場合があるので、より精密に動作するよう改良した」(イワンジェリディス氏)とのこと。

Google Fast PairやMicrosoft Swift Pairに対応。また、ゲームモードで同社製スマートフォン「Nothing Phone (1)」と連携させると、自動的にLow Lag Mode(低遅延モード)がオンになる。Phone (1)以外のユーザーは、Nothing XアプリからLow Lag Modeを手動でオンにできる。

外形寸法はイヤフォン片側が21.5×23.5×29.4mm(幅×奥行き×高さ)、ケースが55.5×55.5×22.2mm(同)。重さはイヤフォン片側4.5g、ケースが51.9g。

音を聴いてみる

Nothing Ear (2)とAirPods Pro(第2世代)のケースを並べたところ。横幅はほぼ同じだが、Nothing Ear (2)のほうが高さがある

ケースはコンパクトになったことで、従来モデルよりも手のひらに収まりやすいサイズ感になった。従来モデルはケースの角が立っていたのだが、Ear (2)では丸みを帯びたデザインに変わっており、より手に馴染むような印象だった。

参考にNothing Ear (2)とAirPods Pro(第2世代/左上)、Nothing Ear(Stick/左下)のケースを並べたところ

イヤフォンはAirPods Proなどと同様、耳の穴に挿し込むタイプで、自分にフィットしたイヤーピースを選べば、激しく首を左右に振っても落ちることはなかった。アプリ「Nothing X」を使えば、イヤーピースのフィットテストができるので、自分の耳にサイズが合っているかで悩むことは、ほとんどないだろう。

ただし、筆者の場合は付属イヤーピースでもっとも大きいLサイズを使っても、右耳だけテストでフィットしていると判定されなかった。

まずは独自機能のパーソナルサウンドプロファイルを使わず、アプリのイコライザもデフォルトの「バランス」のまま、iPhone 13 Proと接続して、Apple Musicを使って音楽を聴いてみる。

まず印象的だったのは、ボーカルの押し出しの強さ。歌声がグッと前に出てきて、その後ろで各楽器が鳴っているような定位感だった。中高音域の解像感も高く、女性ボーカルやピアノ、弦楽器の音は明瞭で聴きやすい。解像感の高さは、筆者が普段愛用しているAirPods Pro(第2世代)を上回っていると感じた。

Nothing Ear (2)とAirPods Pro(第2世代)のイヤフォンを並べたところ

一方で、パワフルになったという低域は、かなり大人しめ。以前に試聴したハーフインイヤー型の「Nothing Ear (Stick)」ほど軽くはないが、ズンッと響くような沈み込み、量感ではなく、ポンポンッと小気味良い印象で、低域の力強さはAirPods Pro(第2世代)のほうが圧倒的。低域に迫力が欲しい場合は、アプリのイコライザーで「低音を強調」を選ぶか、カスタムで「低音」を増し気味にしたほうが良いだろう。

「SOUND PERSONALIZATION」では、誕生年を設定後、聴力検査のようなテストを受ける

独自機能の「ヒアリングID」の生成も、このアプリから行なえる。生成に必要な聴力テストは、まずは誕生年を選択した後、コオロギの鳴き声のような雑音が流れるなかで、「ピー、ピー、ピー」というビープ音を聴き、そのビープ音が聴こえている間だけ画面をタッチし続けるというもの。テストは片耳ずつ行なわれる。実際にテストを受けた感覚では、健康診断などで受ける聴力検査に似ている印象だった。

テストを終えると、その結果を基にした「SOUND PERSONALIZATION」を使用できる。プロファイルは「ソフトに」、「おすすめ」、「リッチに」と強度が3種類が用意されており、各プロファイルの中でもインテンシティ(強度)を0~100%で細かく調整できるようになっている。

実際に「SOUND PERSONALIZATION」をオン/オフしながら聴き比べてみると、筆者の場合は「SOUND PERSONALIZATION」をオンにすると、女性ボーカルやピアノ、ヴァイオリンといった弦楽器などの明瞭さ・解像感が一段上がったような感覚だった。

ANC性能については、ノイズキャンセル「強」でもAirPods Pro(第2世代)と比べるとノイズカット率は低い印象で、電車内で使ってみると、走行ノイズも耳に届いてくるので、AirPods Pro(第2世代)のときよりも少し音楽のボリュームを上げたくなった。また、車内アナウンスや周囲の話し声なども聴こえてきた。

一方で、AirPods Pro(第2世代)ではANCをオンにすると、耳が詰まったような感覚があるが、Nothing Ear (2)では、その感覚はなかった。このノイズキャンセル独特の感覚が苦手な人、ある程度の騒音はカットしつつ、車内アナウンスなどもチェックしたい人などには、Nothing Ear (2)のほうがおすすめだ。

また、今回のNothing Ear (2)のパッケージも紙製で、お菓子の箱のようにビリビリと破いていくスタイル。一度開けると元の状態には戻せないため、いわゆる“開封動画”にはもってこい。ということで、今回も開封の様子を動画に収めてみた。動画では開封に少し失敗しているが、これも含めてNothingならではの体験と言えるかもしれない。

「Nothing Ear (2)」、ちょっと失敗しつつ開封してみた

Nothingは「マーケットで一番安いものは目指さない」

イワンジェリディス氏は、Nothingのオーディオ製品への取り組みについて「プレミアムなサウンド、体験を提供すること、ユーザー体験の最適化を図ることを、私たちの注力課題にしていきたい」と語った。

「そのためにコアなユーザーニーズに、特に目を向けなければいけません。プレミアムな体験を提供するために、ハイレゾ対応やANCの強化などは、これからも注力していかなければなりません」

「一方で、(ライバルである)アップルよりも安価な製品を提供することも重要だと思っています。そうは言っても、ベストバリュー(市場最安)を目指していかないと思います。私たちならではのユニークなデザインを実現するためには、それなりの開発コストや製造コストがかかります」

「透明なデザインを実現するには、専用の製造ラインを用意してもらい、ダストフリー環境を構築してもらう必要があります。そういった意味でもコストがかかるので、マーケットで一番安いものを目指すというわけではありません」

また日本市場については、「ハードウェア(の売上)という点では、世界でもトップマーケットですが、とても参入が難しい市場。なぜなら、アップルが支配的な立場を築いているからです」としながらも、「そのなかでも強い勢いが出てきたので、日本市場を注視しようと決めたのが'21年のことでした。'22年にはパートナーを増やし、より協業を進めることに注力しました」とコメントした。

「日本のマーケットでは、iOSからNothing Phone (1)に切り替える人の率がとても高いのです。Phone (1)に乗り換えた人の50%以上がiOSからの乗り換えでした。これは他のマーケットにはない割合の高さです」

「今年は、日本での取り組みの強化を図りたいと考えています。その一環として、まずはローカルの人材の採用をさらに進めて、ローカルチームを強化を図ります。そして、それに基づいてオフラインチャンネルを拡充していきたい。また、いろいろなパートナーシップも強化していきたいとも考えていて、そのひとつとしてKITHとも、長期的な提携関係で合意することができました」