ニュース

JOLED、民事再生手続きの申し立て。製造・販売から撤退

JOLEDは3月27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行なったと発表した。あわせて、ジャパンディスプレイとの間で、JOLEDの技術開発ビジネス事業の再生支援に関する「基本合意書」を締結したことも明らかにしている。

JOLEDは、有機ELディスプレイの量産開発加速及び早期事業化を目的として、ソニーとパナソニックの有機ELディスプレイの開発部門を統合して、2015年1月に事業を開始した。

2019年11月には、世界初の印刷方式有機ELディスプレイ量産ラインを能美事業所で稼働。高性能・高品質な有機ELディスプレイを、ハイエンドモニター、医療用モニター、車載向け等に生産すると同時に、フレキシブルディスプレイやフォルダブルディスプレイの実用化に向けた研究開発も進めてきた。

しかし、安定した生産に想定以上のコスト・時間を要したほか、世界的な半導体不足による影響に加え、高性能・高品質ディスプレイ需要の伸び悩み、価格競争の激化により、同社を取り巻く状況は厳しさを増しており、収益が伸び悩むと同時に、資金流出が続いていたという。

こうした状況を踏まえ、同社は、複数回にわたる資金調達を実施し、収益の改善に向けた取り組みを行なうと同時に、事業を支援するスポンサー探索も継続していたとのこと。

しかし、法的手続きによらずにスポンサー支援を得ること、法的手続きによった場合でも、能美事業所と千葉事業所での製造を前提とする製品ビジネス事業を継続することが困難な状況となったといい、「このまま自力で事業継続した場合、能美事業所や千葉事業所の撤退費用を捻出することも困難となり、地域の皆様へ多大なご迷惑をおかけすることが想定されましたことから、当社といたしましては、裁判所の関与の下で当社の事業の再生を図ることがもっとも適切であると判断し、やむを得ず、民事再生手続開始の申立てを行なうに至りました」と、民事再生法申請に至った経緯を説明している。

ジャパンディスプレイと締結した基本合意書では、JOLEDの技術開発ビジネス事業についてスポンサー支援を受けることについて合意。JOLEDの技術開発ビジネス事業については、ジャパンディスプレイの支援の下、再建を図る予定となっている。

一方で、製品ビジネス事業(製造・販売部門)については、維持・継続に多大なコストを要する上、「早期かつ抜本的な収益改善の道筋がたっておらず、同事業をこれ以上継続することは困難である」として撤退する。

JOLEDは「裁判所及び監督委員の関与の下、全役職員一丸となって当社事業の再生に全力を尽くす所存でございますので、何卒ご理解とご支援を賜りますよう重ねてお願い申し上げます」としている。

ジャパンディスプレイも支援の理由を説明

あわせて、ジャパンディスプレイも「JOLEDへのスポンサー支援に関する基本合意書締結のお知らせ」としたリリースを発表。このなかで、JOLEDを支援する背景と理由について説明している。

現在、ジャパンディスプレイは2022年5月に発表した成長戦略「METAGROWTH 2026」のもと、「世界初、世界一」の独自技術のさらなる強化、競争優位性の確保、および大幅な収益力向上を図っており、「METAGROWTH 2026」の成長ドライバーのひとつである、世界初のマスクレス蒸着及びフォトリソ方式による次世代OLED「eLEAP」についても、来年の量産開始を予定している。

JOLEDの技術開発ビジネス事業における人材とOLEDに関する知的財産権やノウハウ等の承継は、「『METAGROWTH 2026』のさらなる拡大と加速化に寄与し、顧客価値・株主価値創造に資するもの」と判断して、スポンサー支援を行なうことで基本合意に至った。今後はデューディリジェンスを実施し、スポンサーに関わる最終契約を締結する方向で協議を行なうとのこと。

上述のとおり、JOLEDは製品ビジネス事業(製造・販売部門)からの撤退を決定しているため、当該事業は承継の対象外。また、ジャパンディスプレイは、JOLEDの設立時に同社株式の15%を取得していたが、構造改革の一環として2020年3月に全株式を譲渡しているため、現在はJOLEDとジャパンディスプレイの間に資本関係はない。