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JDI、“既存有機ELの全特徴を凌駕”「eLEAP」量産技術確立

従来OLEDとeLEAPの発光領域比較

ジャパンディスプレイは5月13日、世界で初めてマスクレス蒸着とフォトリソを組み合わせた方式で画素を形成する有機EL「eLEAP」の量産技術を確立したと発表した。eLEAPはOLEDと液晶ディスプレイの弱点を克服するもので「ディスプレイデバイスに革新的な飛躍をもたらすものと考えております」という。今年度中にはサンプル出荷を開始し、段階的に出荷数量を増加する予定。

e nvironment positive(環境ポジティブ)」、「 L ithography with maskless deposition(マスクレス蒸着+フォトリソ方式)」、「 E xtreme long life, low power, and high luminance(超長寿命・省電力・高輝度)」、「 A ny shape P atterning(フリーシェイプ・パターニング)」からなるeLEAP(仮称、特許出願中)はJDIで確立した設計・プロセスノウハウを駆使することで、従来のFMM(ファインメタルマスク)-OLEDの薄型軽量・高コントラスト・高速応答という特徴を備えつつ、寿命問題(焼き付き)を解決し、さらに高開口率化・ピーク輝度向上・高精細化を実現することが可能になったという。

現在OLEDディスプレイの量産にはFMMを用いた有機材料の蒸着方式(FMM方式)が広く採用されているが、eLEAPはFMMを全く使用せずにマスクレスで有機材料を基板上に蒸着させ、フォトリソ方式でOLED画素を生成する。

寿命比較(600nit 相当輝度で3h/day 点灯による輝度劣化を想定したイメージ)

eLEAPの発光領域はFMM方式によるOLEDと比較して2倍以上となる60%(精細度300ppi相当、同社比)まで高められ、バックプレーン技術HMO技術と組み合わせることで、OLEDの弱点であるピーク輝度、寿命、消費電力の飛躍的な向上が可能になるとのこと。

またFMM方式ではメタルマスクを使うことによる制約から困難だった異形状デザイン(フリーシェイプ)や800ppiを超える高精細化、ディスプレイサイズの大型化も実現可能となる。

パネルサイズ及び精細度におけるeLEAPの対応可能領域

加えてFMM方式によるOLED生産では、ガラス基板サイズの大型化は第6世代(約1,500×1,850mm)までが限界だが、eLEAPでは第8世代(約2,200×2,500mm)以上の基板ラインでの展開も可能になるという。

FMM方式では、蒸着工程の材料使用効率が低いことに加え、生産時にFMMに付着した有機材料を洗浄するために、別の有機材料を必要とするため、大量の有機材料廃棄ロスが発生してしまうことも問題のひとつ。

eLEAPは、FMMを使用しないため有機材料の使用量が大幅に抑制され、「CO2排出量を大幅に削減できるグリーンテクノロジーであり、かつ、ランニングコストの低減も図ることができます」という。

同社によれば「eLEAPは、すべての特徴において既存OLEDディスプレイを凌駕しており、ディスプレイに飛躍的な変革をもたらすもの」で、すでに複数の顧客から高い関心と具体的な引き合いを獲得しており、今後の需要急拡大が見込まれているという。

今後は「この『世界初、世界一』の技術を他社にも提供し、大幅な売上拡大を図るとともに大きな社会貢献を目指してまいります」としている。