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アドビ、Premiere Pro超大型アップデート。”文章で動画を編集”可能に
2023年4月13日 22:00
アドビは、ビデオ製品のアップデートを5月に実施する。Premiere Proでは、音声のテキスト化で文字起こしした文章を編集することで動画の編集も行なえる「文字起こしベースの編集」機能を新たに実装。After Effectsではプロパティパネルを実装する。なお、これらの新機能はすでに公開されているパブリックベータ版で使用できる。
Premiere Proは超大型アップデート。文章で動画編集
Premiere Proでは、超大型アップデートとして、全く新しい編集機能「文字起こしベースの編集」機能と、自動トーンマッピング、Logカラー検出機能を実装。また、基本機能の見直しにより、史上最速かつ最も安定した動作の「最強のアップデート」になるという。
文字起こし機能を使って生成された文章を使う機能に合わせ、動画の読み込み時に文字起こしも同時に行なうオプションも新たに追加。デフォルトでオンになっており、編集前に動画を読み込むだけで文章を使った編集が行なえるようになる。
なお、文字起こし機能は実装当時はネットワーク接続が必要だったが、すでにオフラインで完結する仕様となっている。
動画からシーンを探す場合も、文章から検索できるため、動画を再生してチェックする必要なく、必要なシーンを探し出せる。また、使いたいシーンをシーケンスに追加する際にも、その文章を選択することで該当部分にイン点、アウト点が自動で挿入され、インサートボタンもしくは「;」のショートカットでシーケンスに貼り付けることが可能。
シーケンスに追加した後も文章での編集が可能で、前後の入れ替えなども、コピー&ペーストで文章の前後を入れ替えるだけで簡単に行なえる。その後、文章をキャプションに変換する機能も従来同様に使えるので、作業の負担が大幅に軽減できるという。
テレビ番組制作の現場では、撮影した素材を一度文字起こしし、その文章を印刷、会議で構成を決めて、その後エディターが印刷された文章をもとに該当シーンを探して、編集していくという流れが一般的だという。Premiere Proの文字起こし機能でも作業工程は軽減されたが、今回の新機能ではエディターの作業も大幅に軽減できるとのこと。
なお、この文章で動画を編集する機能は、Web上で使える「Project Blink」と同じコンセプトの機能となっているが、全く同じ機能を有しているわけではないという。Project Blinkの詳細は別記事を参照のこと。
自動トーンマッピングは、異なるタイプのHDRの映像をSDRのプロジェクトに追加しても、一貫した色彩の映像を簡単に作ることができる機能。シーケンス設定項目内に「自動トーンマッピングメディア」という項目が新たに追加されており、オンにすることで、挿入時に自動で調整される。例えば、メーカーの異なる複数のカメラや、iPhoneなどで撮影したHDRの動画が混在する場合でも、簡単に色味を合わせられる。
Logカラー検出機能は、「Sony S-Log」「Panasonic V-Log」「Canon C-Log」に対応し、対応カメラのLog撮影された映像に対して自動で調整されるため、LUTを使用したり、手動で映像バランスを調整する手間が省ける。なお、これらのカラー検出機能の一部は2月にすでに搭載済みの機能となっている。
また、バックグラウンドでの自動保存、起動時のリセットオプション、プラグインエフェクトのマネージャー、GPUによる高速化などの新たな機能も追加。
ユーザーからの要望に応えた機能として、RED V-RaptorX、ARRI Alexa 35、Sony Venice v2カメラのフォーマットサポートを強化。音声のテキスト化はオランダ語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語などが加わり合計16言語対応となった。そのほか、デベイヤリングとトランジション効果のGPU高速化、よりシンプルなトラックターゲット、Media Encoderへの直接書き出しとレンダリングも追加された。
シーケンスロックを含む共同編集機能も強化。編集中のシーケンスにはロックがかかり「閲覧モード」になると、他者は変更できなくなる。他にも、誰が作業しているかを示す「プレゼンスインジケーター」が追加。オフライン作業では、作業後にオンラインに戻ると、他のエディターの作業を上書きせずに変更箇所を公開できるようになった。
1月13日より長編やエピソード編集のためのワークフローガイド日本語版が無償で公開されている。アドビのエンジニア、業界のベテラン、受賞歴のある編集者の専門知識を集め、数年かけてつくり出されたガイドで、Premiere Proの必須機能を深く掘り下げて紹介している。
After Effectsに初のプロパティパネル。新規ユーザーが使いやすく
30周年を迎えたAfter Effectsは、コンテキスト対応の「プロパティパネル」を導入。従来はタイムラインを移動しながら設定を探す必要があったが、このプロパティパネルでは、選択した内容に応じて重要なコントロールが自動的に表示されるため、新規ユーザーにとって使いやすくなる。
前回のアップデートで実装されたトラックマットが、以前は複雑だった作業が簡潔に行なえるようになり、ユーザーから好評だったという。今回のプロパティパネルも、従来は深い階層にあって探すのが大変だった項目が、パネル上に見やすく表示されるため、作業が簡潔になる。
超広色域をカバーするACESカラースペースにおける作業を簡易化する、OpenColorIOカラーマネジメントシステムを搭載。時間と労力を節約しながら、よりフォトリアリスティックな映像の作成が可能になった。
他のアプリとの映像素材の受け渡しが発生しても、カラーの整合性がとれた状態でビジュアルエフェクトやアニメーションの作業が可能になる。
Premiere Pro同様、ユーザーから要望が多かった機能改善も実施。タイムラインのレイヤー選択の高速化やシェイプのマルチフレームレンダリングなどのパフォーマンスを最適化。ワークフローの問題に対するアプリ内でのトラブルシューティング、システムパフォーマンスの最適化、プラグインの有効化と無効化のためのシンプルなインターフェイス、キャッシュや環境設定のボトルネックを修正する診断ツールなど、IT専門家のサポートを必要とせずに、After Effects自体が一般的な問題の解決をサポートできるようになる。
Frame.ioは静止画&PDF対応。セキュリティも強化
共有作業用のプラットフォーム「Frame.io」では静止画とPDFに対応を拡大。従来の動画と同様にシームレスに共同作業が可能になった。
また、公開前の機密コンテンツのデジタル保護を強化する企業向けクラウドセキュリティ「フォレンジックウォーターマーク(電子すかしID)」が利用可能になる。画面録画、ファイルコピー、外部録画に耐えうるピクセルレベルの詳細な情報を使用し、30秒の短いビデオアセットにも透かしを埋め込める。
電子すかしIDは目視では見えず、アセットIDコード、プロジェクト、チーム、アカウント、ユーザーの位置情報、および再生日時を数時間以内に明らかにできるという。これらの機能により、Frame.ioでは、最高レベルの機密度をもつコンテンツに対し、現時点で可能な限り高いレベルでのセキュリティを保証するとのこと。