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Amazonで買うとWi-Fi設定が不要に。スマートホーム規格「Matter」への取り組み

Amazonは7月4日、Alexaを活用したスマートホーム事業の状況やスマートホームの共通規格「Matter」への取り組みに関する説明会を開催。このなかでAmazonで購入したMatter対応製品のWi-Fi設定を簡略化する「Matter シンプルセットアップ」や、Alexaアプリとサードパーティ製アプリの間で情報共有を可能にするAPI「Ambient Home Dev Kit」などを紹介した。

Matterは、スマートホームデバイス、スマートホームシステム、音声アシスタントの相互接続を目指して、Connectivity Standards Alliance(CSA)が策定したスマートホームの世界標準規格。スマートホーム用デバイスでは、AmazonやGoogle、Appleなど、さまざまなメーカーが独自の規格を展開しており、デバイスメーカーはそれぞれの規格に沿った製品を開発・製造。ユーザーもそれぞれの規格に対応した製品を購入して環境を整える必要があった。

Matter対応デバイスは、Alexaアプリからセットアップが可能
Matter対応スマートプラグを使ったデモも行なわれた(写真の製品は国内未発売)

しかし、Matterに対応しているデバイスでは、異なるメーカーの製品やプラットフォーム間での相互運用が可能。さらに、例えばこれまでA社のスマートプラグをAmazonのEchoデバイスで操作したい場合、まずはA社が提供するアプリでセットアップしたあと、AlexaアプリからEchoデバイスと連携させる必要があったが、Matterに対応していると、Alexaアプリから直接セットアップすることも可能になる。

Amazonは、Matterを策定したCSAの主要メンバーとして名を連ねており、Amazon Alexaインターナショナル ジャパンカントリーマネジャーのティニス・スキパース氏は「(プラットフォームが)AlexaでもGoogleでもAppleでも、なんでも使えることが重要で、それを実現するのがMatter」と説明する。

また説明会にはスマートリモコンなどを展開しているNatureの塩出晴海代表取締役も登壇。塩出氏によれば、日本でのスマートホームデバイス普及率は13%で、アメリカ(普及率81%)や中国(同92%)、ノルウェー(同66%)など、所有率の高い国とは5倍以上の差があるという。そして普及が進まない要因のひとつに「セットアップのユーザーエクスペリエンス」を挙げる。

Natureの塩出晴海代表取締役。手に持っているのは7月4日に発売したスマートリモコン「Nature Remo nano」

「顧客体験というところでは、(ユーザーアンケートによると)設定が面倒、煩わしいという人が約3割います。実際Natureでも設定に関する問い合わせが3割ほどあって、そのうちの4割が最初のWi-Fi設定関連の問い合わせです」と塩出氏。

そして、そんなWi-Fi初期設定を簡略化するための機能が、Amazonが提供している「Matter シンプルセットアップ(MSS)」となる。

MSSは、デバイスをネットワークに接続する際にネットワークパスワードの入力を不要にする「フラストレーションフリーセットアップ(FFS)」に含まれるソリューションのひとつ。これを活用することで、ユーザーによるバーコードの読み取りや、パスコードの手入力を省くことが可能になる。

具体的には、あらかじめ自宅Wi-FiのSSID/Passをクラウド(Amazon WiFiロッカー)上に登録しておくと、MSS対応デバイスをAmazonで購入した際に、そのアカウント情報とデバイスが自動的に紐付けられる。手元に届いたMSS対応デバイスを電源につなげば、Echoデバイスを経由してデバイスがクラウドにアクセスして、保存されているSSID/Pass情報を取得。ユーザーが手入力することなくWi-Fi設定が完了する。

このMSS自体はすでに提供中で、Natureが7月4日に発売したMatter対応スマートリモコン「Nature Remo nano」も、近日中に対応する予定。

そのほか、Alexaに追加されるMatter向けの機能としては「コミッショナブルエンドポイント」と「Ambient Home Dev Kit」が紹介された。

コミッショナブルエンドポイントでは、従来クラウドを経由して操作していたスマートホームデバイスを、クラウドを介さずローカルで操作できるようにするもの。これにより操作遅延が減少するほか、万が一クラウドにトラブルが発生した場合でもスマートホームデバイスを操作できるようになる。同機能もすでに提供中。

もうひとつのAmbient Home Dev Kitは、Alexaのさまざまな機能を拡張する開発者向けのAPIセット。これを活用することで、Alexaアプリとサードパーティ製アプリの間で情報の同期が可能になり、例えば一方のアプリでユーザーが作成した各部屋のグループ情報を、アプリ間で共有可能になるという。Ambient Home Dev Kitは2023年内を目標に提供する。