ビクターとケンウッドが10月統合。新中期経営計画策定

-「新たな成長への創業」。音/映像/無線の複合製品


河原春郎代表取締役会長

 JVCケンウッドは26日、10月1日に傘下の事業会社、日本ビクターとケンウッド、J&Kカーエレクトロニクスを吸収合併する事や、新たな中期経営計画についての説明会を開催した。

 JVCケンウッドは、これまで持ち株会社と、3事業会社体制で統合経営を進めてきたが、10月1日付で日本ビクター、ケンウッド、J&Kカーエレクトロニクスを吸収合併する。存続会社はJVCケンウッドで、各社の権利義務を承継。1927年設立の日本ビクター、1946年設立のケンウッドは消滅会社となるが、両ブランドは継続する。




■合併について

 JVCケンウッドの河原春郎代表取締役会長は、これまでの事業会社のくくりから、セグメント別事業グループ体制に改革した事を報告。セグメントは4つで、カーオーディオやカーナビ、車載機器デバイスなどを手掛ける「カーエレクトロニクス事業」、業務用の無線やカメラ、映像・音響機器などを手掛ける「業務用システム事業」、映像・音響技術を業務用システム事業と共有し、民生用カメラや映像・音響機器などを手掛ける「ホーム&モバイルエレクトロニクス事業」、映像・音楽ソフトなどを手掛ける「エンタテインメント事業」で構成。各セグメントの上には連結責任を担うCOO(最高執行責任者)が置かれる。

財務状況損益推移組織体制の図

 河原会長は、「カーエレクトロニクス、業務用システムなど、強い事業を主軸にバランスをとれたポートフォリオになった」とした上で、全セグメントで黒字化を達成した事も説明。「復活を見届け、やっと10月1日に合併できることになった」と語る。

合併シンボルマーク
 ここまで至る道程の中には、リーマン・ショックなど「思いも寄らない大嵐に見舞われた」(河原会長)というが、固定費を全体の4割削減するなどの施策を実行。現中期経営計画では、2011年3月期の目標としていた経常利益の黒字化を達成し、2012年3月期の目標である当期純利益の黒字化に向けて、当第1四半期に四半期純利益の黒字化を達成するなど、順調に進捗しており、新中期経営計画を策定することで、利益ある成長の加速を目指している。

 これに向けた10月の合併について、河原会長は「新たな成長への創業」と表現。会社運営の一元化により、戦略推進力と迅速性が向上するだけでなく、資金運営の一元化により資金の機動性や戦略性がアップし、成長への思い切った投資が可能になる事、人事制度や年金、健康保険などの社内制度を統一する事で従業員の社内交流が活発化し、会社の活力になるといったメリットも説明した。

 合併後の企業ビジョンは、従来の「カタ破りをカタチに。」を進化させたという、「感動と安心を世界の人々へ」。経営方針として、「世界の専業メーカーとして感動と安心を創る」、「強い事業に集中し、利益ある成長を実現する」、「ひろく社会から信頼される企業となる」の3つを掲げた。



■新中期経営計画

不破久温代表取締役社長兼CEO

 不破久温代表取締役社長兼CEOは、グループ事業ビジョンとして、音響、映像、無線の分野が重なり、それらの技術を融合した複合商品とソリューションを提供していく事を説明。例えば、カーオーディオはカーAVナビ、そしてより安心なナビへと音楽やアニメ音楽がメインのソフト事業では、教育用などへの展開も予定。各分野で「安心」への領域拡大を推進する姿勢を強調する。

 市場開拓の面では、B to B、p to P(professional to professional)事業も強化。成長戦略として、計18のテーマに対して3年間で約70億円の戦略投資も決定したという。

 円高の進行など、売上面ではマイナス要因が生じているが、戦略投資の成果が期待できる事や、当第1四半期に4事業セグメント全てが営業黒字になるなど、利益面各事業が順調に推移している事から、中期の数値目標(連結)は2014年3月期で、売上高4,300億円、営業利益は140億円、当期純利益は110億円を見込んでいる。自己資本比率の目標は25%以上。

各事業領域での経営方針中期経営目標


■セグメント別の事業戦略

 ホーム&モバイルエレクトロニクス事業では、動画と静止画のハイブリッドカメラや、3Dカムコーダー、4K2Kカムコーダーなどニッチ/カスタム市場向け製品を提供すると共に、ネットワーク対応のカムコーダーなど、新しいコミニュケーション商品の開発も予定。新規事業への取り組みとしては、ハイレゾオーディオの脳への効果などを活かした音響技術応用ビジネス、高齢者やスマートフォン対応などAVアクセサリの強化などを重点施策とし、2014年3月期の目標として、売上高1,050億円、営業利益30億円を見込む。

ホーム&モバイルエレクトロニクス事業での重点施策2014年3月期の目標として、売上高1,050億円、営業利益30億円を見込む
説明会場には最新モデルも展示された。写真はストリート系カルチャーを好むユーザーに向けたブランド「XX(XTREME XPLOSIVES)」シリーズのヘッドフォンとイヤフォンD-ILAプロジェクタ「DLA-X7」

 カーエレクトロニクスでは、OEM分野の拡大を目指し、協業を活かした純正商品の新規受注獲得や、ディーラーオプション商品の拡大、シンワの子会社化(予定)によるデバイスビジネスの拡大と、中国市場での販売強化を目指す。また、国内市販分野でも「彩速ナビ」のラインナップ拡充により、マーケットシェア拡大を見込む。新興市場向けには、メカレスのメモリプレーヤーなど、市場のニーズに沿った製品を投入する事で攻勢をかけるという。2014年3月期の目標は、売上高1,500億円、営業利益80億円。

 業務用システム事業では、無線事業を新興国市場でも拡大させると共に、ネットワークセキュリティカメラや壁掛け型非常業務放送設備などのインフラシステムソリューションや、業務用ビデオカメラ、モニタなどのメディアシステムソリューションも推進。新規事業領域への取り組みでは、無線とカメラを融合させた自立型防災システムや、3Dプロジェクタや2D-3Dコンバータなどの3D関連システム、4K2KカメラやD-ILA 4K2Kプロジェクタなどが重点施策として紹介された。2014年3月期の目標は、売上高1,280億円、営業利益78億円。

業務用ビデオカメラやモニタのメディアシステムソリューションも拡大させる業務用システム事業での重点施策
説明会場で展示された、業務用ハンディ4K2Kカメラの試作機9月下旬より発売される、フルHD 3D撮影に対応した二眼式業務用ビデオカメラ「GY-HMZ1」。2月に発売した民生用の3Dビデオカメラ「Everio GS-TD1」をベースに、業務用にカスタマイズした製品となる

(2011年 9月 26日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]