ニュース

iriver、「AK120」にUSB DAC/DSD再生機能追加

ヘッドフォン祭で発表。ファームアップで提供

AK120

 アユートは11日、「春のヘッドフォン祭 2013」において、iriverのハイレゾプレーヤー、Astell&Kern(アステルアンドケルン)「AK120」(AK120-64GB-BLK)の発表会を開催。追加情報として、USB DAC機能とDSDファイルの再生機能を、ファームウェアアップデートで追加する事を明らかにした。

 「AK120」は、6月上旬発売予定のポータブルプレーヤー。直販価格は129,800円を予定。64GBメモリを内蔵するほか、microSDカードスロットを2基搭載。64GB×2枚+64GB内蔵メモリにより、合計192GBまで拡張できる。再生対応フォーマットは、WAV/FLAC/WMA/MP3/OGG/APE/AAC/Apple Lossless/AIFF。FLAC/WAV/Apple Lossless/AIFFは24bit/192kHzまでサポートする。

発表会の模様

 詳細は既報の通りだが、「AK100」との主な違いとして、搭載しているWolfsonのDAC「WM8740」を2個に増加。L/Rの信号に対し、それぞれ個別のDACで処理するデュアルDAC仕様になっている。また、出力インピーダンスが、AK100の22Ωから、3Ωに変更して駆動力を高めているほか、AK100が非対応なギャップレス再生にも対応している。高い音質を備えている事から、オーディオユーザーだけでなく、レコーディングやマスタリングといった、プロのエンジニアもターゲットとしている。

AK120のコンセプトと、製品の位置付け
AK100とAK120の違い。赤字の部分が異なる項目

 ヘッドフォン祭の発表会では、こうした仕様が説明されたほか、新情報として、USB DAC機能とDSDファイル再生機能を、ファームウェアアップデートによって追加するとアナウンスされた。ただし、USB DAC機能の細かな仕様など、詳細は未定で、今後明らかになるという。また、DSD再生機能はUSB DACとして再生するのではなく、DSDファイルをプレーヤーに転送・再生する機能になる見込み。

 アップデートの時期も未定だが、「6月上旬の発売の時点で、(2つの新機能に)対応した状態で発売するのか、1つだけの対応になるのかなど、現在最終調整中」(アユート 営業部 マーケティンググループ 藤川真人氏)とのこと。なお、既発売の「AK100」に、これらの機能を追加する可能性については、「おそらく難しい。AK120で対応しているギャップレス再生は、AK100でも対応するかもしれない」(藤川氏)という。

出力は、ヘッドフォン出力兼用の光デジタル出力端子と、光デジタル入力端子を各1系統装備
ボリュームガードが追加されている
底部にmicroSDカードスロットを2基備えている

 なお、直販予定価格129,800円と、下位モデル「AK100」(直販54,800円)と比べても高価なモデルとなるが、藤川氏は、「開発期間が長く、かけているコストもAK100と異なるため。しかし、聴いていただければ、“なるほど”と思っていただけるはず」と、音質に自信を見せる。

 また、DACに「WM8740」を2個使った理由については、「8741など、別のDACを使う選択肢もあったのは事実だが、8741など、新しいDACにすると、それに合わせて全てをチューニングし直す時間も必要になる。AK120は、8740の音をいかに良くするかに注力したモデル。今後の製品では、8741、8742などを使う事も考えられる」と語った。

AK120の音をプロがインプレッション

 会場には試聴機が用意されたほか、発表会ではX JAPANやL'Arc~en~Cielなど、様々なアーティストを担当しているレコーディングエンジニアの杉山勇司氏や、山下達郎のアルバムなどで知られるマスタリングエンジニアの原田光晴氏がビデオレターを寄せた。

 杉山氏は、「スタジオで聴いていた音を携帯できる、リファレンスになりえるプレーヤー。“こんな音入れていたっけ?”“そこまで再生するんだ”という驚きがあり、マイナスの意味ではなく音楽をそのまま伝えるという意味の“モニター”として使える」と称賛。原田氏も、「レンジも広く奥行きもあり、AK100よりも音質が格段にアップした。マスタリングしている曲を、持って帰ってAK120で聴いてみたい、確認してみたいと思わせる。余計な色付けが無いので、よくわかり、判断できる音」と評価した。

レコーディングエンジニアの杉山勇司氏
マスタリングエンジニアの原田光晴氏
左からランティスの佐藤純之介氏、ライターの佐々木喜洋氏
試聴会場には多くの人が詰めかけた

 さらに会場では、ブログ「Music To Go」を運営し、ライターとしても活躍している佐々木喜洋氏も登壇。「DACを左右別々にしたことで、立体感が際立ち、フォーカスもピシっと合う。デュアルDACにより、1つのチップの性能をより高くでき、解像力や音の豊かさが向上している。また、低音のインパクトが不足しがちと指摘されていたAK100と比べ、出力インピーダンスが下がった事で駆動力がアップしている。(AK100のインピーダンスを下げる)改造品も流行っていたが、インピーダンスを下げて欲しいという日本のユーザーの声を聞いてくれて生まれた製品だと思う」と、魅力を紹介。

 また、「ラブライブ!」などを手掛ける、ランティスの佐藤純之介氏もゲストとして登壇。レコーディングエンジニア出身で、アニメソングのプロデューサーとしてスタジオで日常的にハイレゾなアニメソングに触れている佐藤氏は、「一般的なプレーヤーでは、自分でスタジオで作った音は聴こえない。(AK120では)スタジオで聴いている音をシームレスに外でも聴ける」と高く評価。「AK120がユーザーに届く事で、これまで以上に細かく音楽を作っていかなければならないと感じました」と、プロならではの視点で、AK120の魅力をアピールした。

(山崎健太郎)