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シャープ、2015年第1四半期は営業損失287億円。液晶の他社提携も示唆

 シャープは、2015年度第1四半期決算を発表した。液晶テレビや太陽電池の販売が減少したことなどにより、売上高は6,183億円(前年同期比0.2%減)、営業損益は287億円の損失(前年同期は46億円の黒字)となった。純利益は339億円の赤字。

2015年度第1四半期決算
四半期別売上高、営業利益推移

 売上については、欧州市場向けテレビのビジネス転換や北米向け太陽光発電開発子会社売却に伴う販売減、スマートフォン向け液晶の競争激化などがマイナス要因となった一方、カメラモジュールデバイスの大幅伸長により、前年同期並の売上を確保。営業利益では、モバイル向け液晶の生産調整や液晶テレビ流通在庫対策などがマイナス要因となった。

 赤字決算となったが、「5月の中期経営計画に対して、ほぼ想定通り」(高橋興三社長)と説明。米国テレビ事業撤退など「事業ポートフォリオ再構築」、希望退職募集、本社売却、役員、従業員給与削減などの「固定費削減」、下期スタートのカンパニー制を睨んだ「組織・ガバナンスの再編・強化」などの取り組んでいることを強調した。

 ほぼ想定通りの第1四半期実績を受け、2015年通期予想も前回予想を据え置き。売上高は2兆8,000億円、営業利益は800億円を見込む。

高橋興三社長

海外撤退でテレビ売上大幅減

 部門別では、大幅拡大した電子デバイスと、堅調なビジネスソリューションを除く5部門が前年売上を下回っている。

 コンシューマーエレクトロニクス部門では、液晶テレビや携帯電話、空気清浄機などの販売が減少。売上高は前年同期比19.3%減の2,019億円、営業利益は117億円の赤字。通信、健康、環境部門は黒字だが、テレビを中心としたデジタル情報家電が赤字となっている。

コンシューマエレクトロニクス事業の実績
デジタル情報家電の実績

 デジタル情報家電においては、国内液晶テレビ販売は伸長したが、欧州テレビのライセンスビジネス移行、米国の大型テレビ競争激化、中国の市況低迷などが響き、売上高は前年同期を28.1%下回る703億円。営業利益は173億円の赤字で前年(マイナス53億円)から赤字幅が拡大している。テレビの売上高は641億円。

 今後国内においては、4Kテレビの拡大やBtoBルートの販売強化を目指す。米国はアライアンスによる構造改革を推進、中国は4K新製品投入や販売チャンネル見直し、流通在庫削減に取り込み、収益改善を図る。

 通信は、売上高が前年比18.9%減の568億円、営業利益が49億円。タブレット新製品投入時期の差異や国内携帯電話市場の競争激化で減収減益。今後は、マルチキャリア展開や、独自の「エモパー」の導入などを強化する。健康・環境は売上高が前年比9%減の747億円、営業利益は7億円。国内では天候不順で季節商品が販売台数低迷したほか、円安における採算悪化が響いた。

カメラモジュールが好調。液晶分社化も示唆

 エネルギーソリューション部門は、太陽電池の販売が減少したことから、売上高が前年同期比46.6%減の368億円。営業利益は39億円の赤字。

 ビジネスソリューション部門については、海外で複合機の販売が伸長したことから、売上高は前年同期比0.8%増の806億円、営業利益は68億円となった。プロダクトビジネスの売上高は、前年同期比20.0%減の3,194億円。

 デバイスビジネス全体の売上高は、前年同期比35.5%増の2,988億円。電子デバイス部門では、カメラモジュールが伸長したことで、売上高は前年同期比145.9%増の1,268億円と好調。営業利益は28億円と黒字化した。

 ディスプレイデバイス部門では、スマートフォン向けなどの中小型液晶の販売が減少。特に中国スマホ市場成長鈍化や競争激化の影響を受けたという。一方、大型液晶が伸長。売上高は前年同期比1.8%増の1,719億円となった。営業利益は137億円の赤字。コスト競争力の強化や、6月にスタートしたインセルの量産開始などを着実に軌道に乗せることなどを強調した。

ディスプレイデバイスの実績

 また、5月の中期経営計画説明時には、液晶事業の他社提携や分社化を否定してものの、その方針を変更。高橋社長は「5月よりも市場環境は悪くなっている。『液晶を核にして絶対にこの中期(経営計画)をやり切る』と語ったが、それだけでは苦しい。他の事業を持ち上げるとともに、液晶事業についても、いろいろな可能性を探る。提携なども考えていかなければいけない」と語り、他社提携や分社化を示唆した。

 高橋社長は、第1四半期決算を「想定通りの着地」としながらも、「当社は依然厳しい経営環境にある。中期経営計画の必達に邁進していく」とした。

(臼田勤哉)