ファイナル、最高22万円の金属筐体イヤフォン3機種

-下は78,000円から。真鍮/ステンレス/クロム銅採用


左から時計回りに、真鍮の「Piano ForteVIII」、ステンレスの「Piano ForteIX」、クロム銅の「Piano ForteX-CC」

 ファイナルオーディオデザイン事務所は、カナル型(耳栓型)イヤフォンの上位モデルとして、金属削り出しの筐体を採用した3機種を4月22日に発売する。価格は全てオープンプライスで、店頭予想価格は、筐体にクロム銅を使った最上位「Piano ForteX-CC」が220,000円前後。ステンレスを使った「Piano ForteIX」が98,000円前後、真鍮の「Piano ForteVIII」が78,000円前後。

 型番は「FI-DC1602シリーズ」で、それぞれ「Piano ForteX-CC」(FI-DC1602SC-C)、「Piano ForteIX」(FI-DC1602SS)、「Piano ForteVIII」(FI-DC1602SB)となる。なお、ユニットのサイズや構造などは3機種共通で、違いは筐体に使っている金属の素材のみとなる。

 同社は2009年に、金属削り出しのイヤフォン「FI-DC1601」シリーズを発売しており、今回のモデルはその後継となる。


従来モデルとの形状比較。横長の円錐形状になっているのがわかる

 前モデルとの違いは筐体の形状で、従来よりも横長の円錐形状となり、重量バランスや装着感、装着安定性が向上している。また、この形状は「筺体内の空気の流れを最適化する」という。

 さらに、振動板前面に、振動板前後の圧力差を制御するプレッシャーリングを配置し、振動板の歪みを低減。筐体に空気圧調整孔を備える事で、筐体内の空気圧を最適化する技術も引き続き採用している。

 ユニットはダイナミック型で、16mm径。同社がホーンスピーカーの開発で培ったという理論をイヤフォンに応用する事で、「ホーン型でしか得られなかった濃密でリアリティある音を再現する」という。なお、ユニットはゴムなどのダンピング材を使わず、金属筐体で直接保持する事で、振動板の反作用を確実に受け止め、不要な共振を抑制している。そのために、ドライバーユニットフレームには制振用に開発された特殊合金を塗布している。


真鍮の「Piano ForteVIII」ステンレスの「Piano ForteIX」クロム銅の「Piano ForteX-CC」
クロム銅の「Piano ForteX-CC」を横から見たところ「Piano ForteX-CC」の分解図

 また、ゴム系のイヤーピース自体が振動し、音に影響を与える事を防ぐため、シリコンなどのピースは使わず、金属製のイヤーピースを搭載。金属のノズルを耳に挿入する装着法となる。これにより、「シリコンイヤーピースによる鈍い音が全くない」(ファイナル)という。なお、従来モデルは金属の先端部分が取り外し可能だったが、新モデルでは取り外し機構は備えていない。

 感度は108dB。インピーダンスは16Ω。ケーブルは1.4m。なお、製品には1年間の保証が付く。なお、ケーブルの着脱はできないが、ケーブルの断線に限り、購入日より3年間の保証が付いている。重量はいずれも38g。キャリングケースが付属する。



■素材による音の違いを楽しむ

 短時間ではあるが、試聴できたので印象をお伝えしたい。試聴にはiPhone 3GSとフォステクスのポータブルヘッドフォンアンプ「HP-P1」を、デジタル接続で使用している。

 3機種の違いが筐体の素材であるため、聴き比べを行なうと、素材の違いによる音の変化がストレートに体験できるのが興味深いポイントだ。共通する音の特長としては、前モデルと比べ、いずれも中低域の音の張り出しが強くなり、ホーン型スピーカーを彷彿とさせる、パワー感のある再生音が楽しめるようになっている。

真鍮の「Piano ForteVIII」ステンレスの「Piano ForteIX」クロム銅の「Piano ForteX-CC」

 3機種の中で低価格な「Piano ForteVIII」(実売78,000円前後)は、管楽器などにも使われる真鍮製。傾向としては中高域の華やかさが印象的で、音の響きがあたたかく、暖色系のイメージ。JAZZなどにハマりそうだ。

 ステンレスを使った「Piano ForteIX」(実売98,000円前後)はガラリとイメージが変わり、響きよりも精密な音場の表現が印象に残る、クリアでクールなサウンド。分解能も高く、3機種の中ではモニターライクな音になっている。

 クロム銅を使った最上位「Piano ForteX-CC」(実売220,000円前後)は、「Piano ForteVIII」の華やかさと、「Piano ForteIX」のクリアさの特徴を両方備えたようなサウンドになっている。


(2011年 4月 13日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]