ビクター、「K2HD」マスタリングの高音質HQCD
-洋楽10タイトル。「ガラスCD」の技術を投入
K2HD MASTERING + HQCD |
ビクターエンタテインメントは、独自技術「K2テクノロジー」をベースとしたマスタリング技術を高品位CD「HQCD」に採用した「K2HD MASTERING + HQCD」を発表。7月20日に洋楽アルバム10タイトルを発売する。
K2HD MASTERING + HQCDは、ビクタースタジオのマスタリングワークス「FLAIR(フレア)」が持つ高次元マスタリング技術「K2HD MASTERING」と、メモリーテックの高品位CDであるHQCDを組み合わせたもの。通常のCDプレーヤーで再生でき、「通常のCDやHQCDとは別次元の表現力を実現した」という。
マスタリング技術の「K2HD MASTERING」には、最高100kHzにおよぶ広帯域の24bit高分解能情報をCDフォーマットのマスターに収める「K2HDコーディング技術」を採用。これにより、音の抜けや空気感、伸び、奥行きなどに効果を発揮しつつ、「アナログっぽい音の柔らかさ」も両立させたという。
現在主に流通している3種類の高品位CD。今回はHQCDが使われている |
メモリーテックが開発したHQCDは、通常の音楽CDよりもグレードの高い、液晶パネルに使われるポリカーボネートをディスク基板材料に使用し、反射膜には従来のアルミニウムの代わりに耐久性/耐熱性に優れた独自の特殊合金を用いている。
音楽CDはリッピングしてパソコンなどで聴かれることも増えてきたが、「リッピングや圧縮を行なうとCD素材による高品位さは失われる一方で、K2HD MASTERINGによるマスター品質のニュアンスは残る」としており、従来の高品位CDとの大きな違いともいえる。
7月20日に発売される「K2HD MASTERING + HQCD」のタイトルは下記の洋楽アルバム10作品。今後はポップスやロックなど幅広いジャンルで展開する予定。
「K2HDコーディング」により、最高100kHzの高分解能情報をCDフォーマットのマスターに収められるという | マスタリングに使われるK2HDプロセッサー「HDP-1126」 | 7月20日に発売される第1弾タイトルの1つ、カーティス・メイフィールドの「スーパーフライ+11」 |
タイトル | アーティスト | 品番 | 価格 |
イヴニング・スキャンダル+1 | ボビー・コールドウェル | VICP-75010 | 2,800円 |
ナイト・バーズ+1 | シャカタク | VICP-75009 | 2,800円 |
ライヴ・アット・ウィンターランド | ポール・バターフィールズ・ベター・デイズ | VICP-75008 | 2,800円 |
ボビー・チャールズ+4 | ボビー・チャールズ | VICP-75007 | 2,800円 |
サムホエア/エニホエア? ~幻の未発表音源集 | トッド・ラングレン | VICP-75006 | 2,800円 |
サムシング/エニシング? (ハロー・イッツ・ミー) | トッド・ラングレン | VICP-75004~5 | 3,500円 |
オグデンズ・ナット・ゴーン・フレイク+12 | スモール・フェイセス | VICP-75003 | 2,800円 |
ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ+10 | ザ・ヤードバーズ | VICP-75002 | 2,800円 |
ロジャー・ジ・エンジニア+2 | ザ・ヤードバーズ | VICP-75001 | 2,800円 |
スーパーフライ+11 | カーティス・メイフィールド | VICP-75011 | 2,800円 |
■ ガラスCDの技術とノウハウを投入し、幅広く訴求
高音質化の2つのポイント |
ビクタースタジオ 副部長 エンジニアグループ長 兼 FLAIR長の秋元秀之氏は、高音質化のポイントを2つに分けて説明。
1つは「(24bit/192kHzなどの)高品位な音源を、どのようにCDスペック(16bit/44.1kHz)に収めるか」という点、2つ目は「CDマスターの音の魅力を、どうやって市販CDに収めるか」という点で、秋元氏は「1つ目の点はK2HD MASTERINGで、2つ目は『ガラスCD』を作ったときのノウハウでサポートした」という。
同社は、これまでガラス素材を使った高音質CD「K2HD MASTERING + CRYSTAL」をメモリーテックと共同で開発。メモリーテックのガラスCD製造技術とK2HD MASTARINGを組み合わせて18万円という超高品位のCDを完全予約受注生産で発売していた。今回、ガラスCDで培われた技術とノウハウをガラス以外の素材にも移行するという取り組みがなされている。
ビクタースタジオの秋元秀之氏 |
なお、既にK2テクノロジーで高い評価を受けているというアジアを中心に、2010年からは通常CDを用いた「K2HD MASTERING + CD」の先行受注も行なっており、これまで130タイトル以上に採用された。HQCD以外のSHM-CDやBlu-spec CDについても、技術的にはK2HD MASTERINGを適用することが可能。今回は、ビクタースタジオとメモリーテック両方の技術を活かせる形として、HQCDが採用されている。
K2HD MASTERING+シリーズの大きな特徴としては、K2HDプロセッサー「HDP-1126」のような高性能な機器を使用する点だけではなく、FLAIRのエンジニアによるデリケートなハードの取り扱いや、音楽のブラッシュアップなどのマンパワーも、一般的なマスタリングとの大きな差別化につながっているという。
秋元氏は、こうしたK2HD MASTERING + シリーズのガラスCD/HQCD/CDを高音質化する要素について「『CD素材』、『マスターの高音質化』、『パッケージノウハウ』の3つが、イメージ的にはそれぞれ1/3の割合で貢献している」とし、一般的には伝わりづらいパッケージ化の工程についても、高音質化に大きく寄与していることを説明。これらの要素を究極の形に仕上げた高価なガラスCDだけでなく、今後は、より低価格なHQCDにも展開することで、幅広いユーザーに訴求するという。
K2HD MASTERING+シリーズの高音質を構成する要素 | 先行展開した香港や台湾などアジアを中心に、幅広く受け入れられているという | 発表会が行なわれた東京・青山のビクタースタジオ |
(2011年 6月 23日)
[AV Watch編集部 中林暁]