Shure、初のオープンエア型ヘッドフォン「SRH1840」
-'12年発売で約7万円。約4万円の「SRH1440」も
左が上位モデル「SRH1840」、右が下位モデル「SRH1440」 |
Shure Japanは、同社初のオープンエア型ヘッドフォン「SRH1840」と、下位モデル「SRH1440」を発表した。2012年発売予定で、価格はどちらもオープンプライス。詳しい発売日は未定。
なお、価格についてShure Japanは、「実売がいくらになるかはまだ話し合いをしている最中なのだが、おそらく上位モデルが7万円前後、下位モデルが4万円前後になるのではないか」(Shure Japan 岩崎顕悟代表)としている。
どちらも40mm径のダイナミック型ユニットを採用した、開放型のヘッドフォン。「SRH1840」はオープンエアのハイエンドモデルと位置付けられている。両モデルとも、ドライバーにはネオジウムマグネットを使用している。
上位モデル「SRH1840」 | 下位モデル「SRH1440」 | 「SRH1840」の使用イメージ |
■SRH1840
上位モデルの「SRH1840」は、左右のドライバーの特性を揃えているのが特徴。「スムーズに伸びる高域と、正確な低域を実現した」という。
40mm径ユニットの振動板はマイラー製。ドライバー部分には、通気孔のあるセンター・ポールピースを備えたスチール・ドライバーフレームを採用。「振動板の前面と背面の均一性が保たれ、音質を向上させる重要なポイント。振動板のマイラー素材は、ダイナミック型マイクのハイグレードモデルでも採用しているもので、マイクを手掛けるShureとして素材にこだわった」(Shureのアソシエイト・プロダクト・マネージャー マイケル・ジョーンズ氏)という。
上位モデルの「SRH1840」 | 構成パーツ一覧。通気孔のあるセンター・ポールピースを備えたスチール・ドライバーフレームを採用している | 周波数特性 |
ヘッドアーム部分はフレームが2本になっており、「頭頂部での均一性を実現し、負荷を軽減した」(ジョーンズ氏)という。ヨーク部分はアルミ合金で、「6061-T6」という航空機にも使われる素材を使用。強度がありながら軽量なのが特徴で、ヘッドフォン全体の重量も268gに抑えられている(ケーブルを除く)。ハウジングのグリルにはステンレススチールを使用。
イヤーパッドはベロア素材を使用。交換用パッドも1セット付属する。ケーブルは両出しで、交換可能。コネクタは、SE535などの同社カナル型イヤフォンでも採用しているMMCXコネクタだが、コネクタ部分の成型が異なるため、ヘッドフォンとイヤフォンでケーブルに互換性は無い。付属ケーブルの長さは2.1mでOFC。入力端子はステレオミニ。交換用のケーブルも1本付属する。
ヘッドアーム部分はフレーム2本で構成 | ヨーク部分は航空機にも使われている特殊なアルミ合金 | ハウジングのグリルにはステンレススチールを使用 |
ケーブルは着脱可能でMMCXコネクタを採用 | 左がSRH1840のケーブル、右がSE535のケーブル。金色の端子部分は同じMMCXだが、根元部分の形状が異なる | 形状が異なるため、イヤフォンのケーブルをヘッドフォンに挿そうとしても、奥まで入らず、固定されない |
インピーダンスは65Ω。感度は96dB/mW。最大許容入力1,000mW。周波数帯域は10Hz~30kHz。ケーブルを除いた重量は268g。標準プラグへの変換アダプタやハードケースが付属する。
■SRH1440
下位モデルの「SRH1440」は高感度モデルで、ポータブルプレーヤーなどと組み合わせてドライブしやすいという。感度は101dB/mW。インピーダンスは37Ω。最大許容入力は1,000mW。周波数帯域は15Hz~27kHz。
開放型ではあるが、SRH1840よりも遮音性があり、「適度な遮音性を確保しながら、開放型の特徴でもある正確な音の再現も実現している」(ジョーンズ氏)という。
下位モデルの「SRH1440」 | SRH1840と比べ、音漏れは若干少なくなっている |
ヘッドアームはシングルバンドで、スチールフレームを使用。頭に触れる部分は低反発素材を使用。ヨーク部分とハウジングは水平方向に20度動く一体型ヒンジで、「様々な頭の形状に、心地良く装着していただける」(ジョーンズ氏)という。
イヤーパッドは上位モデルと同じベロア素材だが、サイズが若干異なるという。ケーブルは両出しで、OFC。交換も可能で、MMCXコネクタを採用(同社イヤフォンのケーブルは利用できない)。ケーブルを除いた重量は343g。長さは2.1m。入力はステレオミニで、標準プラグ用の変換コネクタも付属する。交換用イヤーパッドとケーブル、ハードケースも付属する。
イヤーパッドは上位モデルと同じベロア素材 | ヘッドパッドには低反発素材を使っている | ヘッドアームを上から見たところ。ロゴがデザインされている |
ケーブルは両出しで交換可能 |
モデル名 | SRH1840 | SRH1440 |
店頭予想価格 | 7万円前後 | 4万円前後 |
ユニット | 40mm径 ネオジウムマグネット ※左右ドライバ特性を揃え済み | 40mm径 ネオジウムマグネット |
インピーダンス | 65Ω | 36Ω |
感度 | 96dB/mW | 101dB/mW |
最大許容入力 | 1,000mW | |
周波数帯域 | 10Hz~30kHz | 15Hz~27kHz |
重量 (ケーブル除く) | 268g | 343g |
■本国から担当者が来日
左がアソシエイト・プロダクト・マネージャー マイケル・ジョーンズ氏、右がモニタリング・カテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏 |
アソシエイト・プロダクト・マネージャー マイケル・ジョーンズ氏 |
6日に行なわれた発表会には、米Shureから来日したアソシエイト・プロダクト・マネージャー マイケル・ジョーンズ氏と、モニタリング・カテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏が登壇した。
マイケル氏は、上位モデル「SRH1840」のターゲットユーザーについて、「1つはプロのサウンドエンジニア。マスタリングやミキシングなど、ポストプロダクションの用途で使ってもらうために、極めて正確で繊細なニュアンス表現を実現した。ニアフィールド・モニターに近い再生が可能」と説明。
さらに、オーディオファンもターゲットとしており、「正確かつバランスのとれた音を聴きたいと思っているユーザーに、ハイファイシステムやホームシアターなどと一緒に使ってもらえる製品にも仕上がっている」という。一方、下位モデルのSRH1440については、高感度設計を採用し、「ポータブル機器と組み合わせても十分な音量を確保している。自然で豊かな低域と、鮮明な中高域、ヴォーカルの鮮やかな再現を楽しんでほしい」とした。
マット・エングストローム氏は、10月から発売されている、アジア限定のカナル型イヤフォン「SE535 Special Edition」(SE535LTD-J/オープンプライス/実売49,800円前後)について、改めて説明。
既発売の、3バランスド・アーマチュア搭載「SE535」をベースにしながら、ノズルに取り付ける周波数フィルタを新たに開発。高域の表現力を向上させたモデルで、この違いは再生周波数帯域の数値にも現れており、通常モデルが18Hz~19kHzであるのに対し、Special Editionは18Hz~19.5kHzと、0.5kHz伸びている。また、カラーも筐体はレッド、ケーブルはグレーとなる。
モニタリング・カテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏 | SE535 Special Edition |
主に日本市場に向けたモデル。開発の背景について、マット氏は 「日本オフィスの人達とミーティングしている際、日本市場では高域表現の鮮やかさが重要視され、より高音質なディテール表現が求められていると聞き、フィルタの開発には特に時間をかけ、こだわった」という。
さらに、通常モデルとSpecial Editionの周波数の違いもスライドで表示。「Special Editionは3~4kHzにかけて特性が持ち上がっており、この持ち上がりにより、ヴォーカルに明瞭度が与えられる」と解説した。
Shure Japanの岩崎顕悟代表 |
■実際に聴いてみる
手にすると驚くほど軽い |
「SRH1840」とiPhone 4Sを直接接続し、フルボリュームにしたが、やや小さめの音までしか出ない。アンプと組み合わせたいモデルだ |
発表会場で短時間ではあるが、試聴できたので印象をお伝えしたい。「SRH1840」は、持った瞬間に驚くほど軽く、装着しても重さをあまり感じさせない。長時間使用に向いたモデルだ。
再生音はオープンエア型ならではの開放感で、付帯音の少ない、極めてクリアな中高域が印象に残る。高域も分解能の高さだけを追求するのではなく、弦楽器のしなやかさも感じさせる上品なサウンドだ。
低域も開放型としてはシッカリ沈み込み、量感も適度に出ている。なおかつ、分解能は高く、中高域と同様に細かな音が聴きとりやすい。全体的なレンジの広さ、色付けのなさも好印象で、モニター用ヘッドフォンを探している人には要注目の製品だ。
なお、感度が低めであるため、iPhone 4Sに直接接続すると、ボリュームを一番上まで上げても、「やや小さめの音」までしか出ない。音漏れも大きいため、駆動力のあるポータブルヘッドフォンアンプや、据え置きのアンプとの組み合わせ、室内での利用がメインになりそうだ。
ポータブルプレーヤーでもドライブできる下位モデル「SRH1440」は、上位モデルと比べると低域の張り出しが強く、高域もメリハリがあり、全体的に聴きやすく、元気の良いサウンド。かといって大味ではなく、女性ヴォーカルの口の開閉など、開放型ならではの繊細な表現力も持っている。
「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」冒頭ギターの、弦の金属的な音と、木の響きも明瞭に描きわけられる。音楽を楽しく、かつハイクオリティに聴かせてくれるモデルだ。なお、上位モデルと比べると音漏れは少ないが、密閉型と比べると大幅に多いため、人が多い電車内などで使うのは難しいだろう。
(2011年 12月 6日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]