富士フイルム、レンズ交換式デジカメ「X-Pro1」
-2月18日発売。実売15万円。フルHD動画も
FUJIFILM X-Pro1。本体に装着されているレンズが「XF 35mm F1.4 R」 |
富士フイルムは26日、APS-CサイズのCMOSセンサーを搭載し、レンズ交換も可能なデジタルカメラ「FUJIFILM X-Pro1」を発表した。発売日は2月18日で、価格はオープンプライス。店頭予想価格はボディのみで15万円前後。
独自の「Xマウント」を採用したデジタルカメラで、XFレンズと呼ばれる交換レンズも用意。単焦点レンズの「フジノンレンズ XF 18mm F2 R」(35mm換算で27mm相当)、「フジノンレンズ XF 35mm F1.4 R」(同53mm相当)、「フジノンレンズ XF 60mm F2.4 R Macro」(同91mm相当)の3本を、本体と同時に発売する。価格はいずれもオープンプライスとなる。店頭予想価格は前に挙げた2本が各55,000円前後、60mmが6万円前後。
交換レンズの「XFレンズ」。左が「XF 60mm F2.4 R Macro」、右が「XF 18mm F2 R」 | 手に持ったところ | 「XF 18mm F2 R」を装着した写真 |
「XF 35mm F1.4 R」を装着したところ | 「XF 60mm F2.4 R Macro」を装着したところ | 本体の厚さは42.5mm |
最大の特徴は、撮像素子のCMOSに、光学ローパスフィルタを不要とした1,630万画素の「X-Trans CMOS sensor」を採用した事。サイズは23.6×15.6mmのAPS-Cサイズ。
1,630万画素の「X-Trans CMOS sensor」 |
一般的なデジタルカメラで使われる、ベイヤー配列のセンサーでは、2×2の4画素を一単位とした周期的なカラーフィルター配列を採用している。網目など、規則的な模様が被写体に含まれていた場合、カラーフィルターの周期的な配列との周期のズレが生まれ、モアレや偽色などが発生してしまう。そこで、通常のカメラではレンズとセンサーの間に光学ローパスフィルタを挿入し、これらを低減している。しかし、ローパスフィルタを入れる事が、撮影画像の解像感を低下させる原因にもなっている。
一方、新たに開発された「X-Trans CMOS sensor」は、粒子が不規則に並ぶ銀塩フィルムの構造からヒントを得て、カラーフィルタを6×6、36画素を一単位とした非周期性の高い複雑な配列にしている。これにより、そもそもモアレや偽色が発生しにくく、光学ローパスフィルタを挿入する必要が無くなり、高い解像感と低ノイズな画像が撮影できるという。配列が複雑になると撮像素子から読み出すデータも複雑化するが、それを処理するための「EXRプロセッサーPRO」も搭載。さらに、センサークリーニング機能も備えている。
上が「X-Trans CMOS sensor」、下が一般的なベイヤー配列。36画素を一単位とした複雑な配列になっているのがわかる | 従来のセンサーとの比較イメージ。ローパスフィルタにより、像が甘くなっているが、フィルタの無い「X-Trans CMOS sensor」では線がシャープだ | 解像力の比較 |
動画撮影にも対応しており、MPEG-4 AVC/H.264フォーマットのMOV形式で、1,920×1,080ドット/24fps、もしくは1,280×720/24fpsでの撮影が可能。音声はステレオ。動画1ファイルの最長撮影時間は29分となる。動画撮影時はデータを読み出す画素が静止画と比べ少なくなるが、それでもモアレや偽色は出にくくなっているという。
レンズ交換が可能な「Xマウント」は、フランジバック(マウント面からセンサーまでの距離)が17.7mmと短く、マウント面からレンズを約7.5mm深くもぐり込ませる広い開口部を確保し、バックフォーカスを可能な限り短縮。周辺光量の低下を防ぎ、画面のすみずみまでより高い解像感を実現するという。
4つの新開発が使われている | フランジバックは17.7mmと短い |
筐体にファインダーを搭載。光学ファインダーと、0.47型/約144万画素の電子ビューファインダーを切り替えられる「ハイブリッドマルチビューファインダー」で、ボディ前面にあるレバーを使って切り替える。
「フジノンXFレンズ」を装着すると、レンズの焦点距離に合わせて、18mmレンズ装着時にはファインダー倍率を0.37倍、35mmと60mmレンズ装着時には0.6倍に自動的に切り替えるとともに、撮影範囲を示すブライトフレームの大きさが変化する。手動でファインダー倍率を変更することも可能。切り替えレバーは右手中指で操作できる位置にあるため、シャッターボタンに人差し指を置いたまま操作が可能。
18mmレンズを装着した時のファインダーは、広角用の0.37倍。白いブライトフレームの内側が撮影される領域 | 35mmレンズを装着すると、一番左側にある変倍用レンズが挿入され、ファインダーが標準用の0.6倍になる | 60mmレンズを装着した場合。ファインダーの倍率はそのままだが、ブライトフレームのサイズが変わっている |
ファインダーを内蔵 | 中央のレバーでOVFとEVFや、OVFの倍率を切り替える | メニュー画面。各種設定を素早く変更するためのクイックメニューも用意している |
レンズの絞りはレンズ側の絞りリングを回して操作。1/3EVステップとなっており、回した時のカチカチという感触にもこだわって開発したという。レンズ側で絞りが調節できる事で、「ファインダーを覗きながら、絞りの変化を感覚的につかめ、撮影に集中できる」という。
ISO感度は200~6400までの1/3段ステップで、拡張感度によりISO100、12800、25600での撮影も可能。
静止画用の撮影モードとして、10種類の色彩・階調表現が選べる「フィルムシミュレーションモード」を搭載。鮮やかな色調の「Velvia」、滑らかな肌色再現の「ASTIA」、見た目に自然な色再現の「PROVIA」、プロ用カラーネガフィルムをベースにした2つのモードも搭載する。また、モノクロ、セピア調などのフィルタ効果も楽しめる。1枚の画像から任意に選択した3枚のフィルムシミュレーション画像を生成する「フィルムシミュレーションブラケティング」も可能。
背面には3型、約123万画素の液晶モニタも搭載。筐体のトップカバーにはマグネシウムダイキャストを採用。合成皮革のレザー調ボディとなっている。記録メディアはSD/SDHC/SDXC。外形寸法は139.5×42.5×81.8mm(幅×奥行き×高さ)。重量は本体のみで約400g、バッテリとメモリーカードを含めると約450g。
軍艦部 | 背面 | ホールドしたところ |
電源は、付属のリチウムイオンバッテリ「NP-W126」を使用。標準撮影枚数は約300枚だが、光学ファインダー使用時に「パワーセーブモード」をONにすることで、使用電力を大幅にセーブ。最大1,000枚までの撮影が可能という。
アクセサリも発表。クリップオンフラッシュの「EF-X20」 | レザーケースの「LC-XPro1」 | ハンドグリップの「HG-XPro1」 |
■「コンパクトながら“最高の画質”を」
取締役常務執行役員 電子映像事業部長の樋口武氏 |
取締役常務執行役員 電子映像事業部長の樋口武氏は、X100など、これまでのXシリーズを振り返りながら「Xシリーズの第4弾製品として、良いものを、長く使ってもらうというコンセプトはそのままに、シリーズのフラッグシップとして生み出した。要素開発から2年ほどかけて作り上げたもので、コンパクトでありながら、“最高の画質”を目指した。フルサイズの一眼レフの“大きい”、“重い”といった問題を解消するモデル」としてX-Pro1を紹介。
想定ユーザー層としては、プロカメラマンから、マニュアル操作も楽しむハイアマチュア層を想定しているが、先に発売している「X100」では、購入者の40%が若い女性だったという調査結果もあり、「X-Pro1も、幅広いユーザーに喜んでいただけると考えている」という。販売目標は15万台~20万台を掲げており、海外でも積極的に展開するとしている。
今後のレンズロードマップ |
また、本体と同時に発売されるレンズがいずれも単焦点である事については、「最高画質を追求するには、固定焦点レンズがベストと考えたため。もちろんズームレンズも今後のラインナップとして考えているが、さしあたって、一番必要となる焦点距離のレンズ3本があれば、かなりのものを撮影できると考えている」と語り、今後のレンズロードマップも紹介。
2012年内に超広角レンズとして「14mm」、ズームレンズの「18-72mm F4.0 IS」、2012年後半から2013年にかけての時期にパンケーキタイプの「28mm F2.8」、望遠ズームの「70-200mm F4.0 IS」、2013年には標準レンズ「23mm F2.0」、広角ズーム「12-24mm F4 IS」を予定。「仕様は開発中なので変更する可能性もあるが、2年以内に6本、トータルで9本を予定している。特殊なレンズも追加していくかもしれない」(樋口氏)とした。
(2012年 1月 26日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]