JVC、ウッドコーンオーディオ最上位機を生音と比較デモ

-スタジオと協力しマスター音質を追求した「EX-A300」


EX-A300

 JVCケンウッドは9日、2月上旬に発売するビクターブランドのウッドコーンオーディオシステム「EX-A300」の試聴会をマスコミ向けに開催。東京・青山のビクタースタジオにおいて“マスター基準”を追求した新モデルの特徴や、従来モデルからの改善点などをアピールした。

 ウッドコーンオーディオシステムは2003年に第1弾モデル「EX-A1」が発売されてから、もうすぐ10周年を迎える。スピーカーの2ウェイ化やウーファの大型化など様々な改良に取り組んでおり、新モデルの「EX-A300」は、これまで2ウェイタイプの最上位だったEX-A250に代わる新たなフラッグシップ機として発売される。価格はオープンプライスで、直販価格はフルシステムで229,800円。

 会社は統合によりJVCケンウッドとなったが、この製品は従来通り「ビクター」ブランドで展開。販売ルートは直販のビクターダイレクトに限定して、高音質を求めるファンに提案する。今後もウッドコーン誕生10周年を記念した様々なプロモーションを展開していくという。

スピーカー部左がアンプ、右がプレーヤー開発説明。まもなくウッドコーンスピーカーは誕生10周年を迎える


■ チェロの生音とA300の再生音で“すり替え実験”を再現

ビクタースタジオ長の高田英男氏

 EX-A300は、2010年10月に発売したEX-A250のスピーカー、アンプ、プレーヤーそれぞれの音質を強化。主な改善点は、スピーカーユニットの磁気回路を装着する材料の変更や、エッジ素材のブチルゴム配合比率の変更など。アンプ部は、K2回路の定数や、音質コンデンサを変更。また、K2回路の内蔵パラメーターを最適化している。アンプ/プレーヤーともに、銅ワッシャや真鍮ニッケルメッキワッシャなど異素材の組み合わせで、振動の影響を低減している。製品の詳細は既報の通り

 試聴会は2部に分けて構成。ソフト側の考えとしてレコーディングスタジオからの意見と、開発者による音質改善へのアプローチが述べられた。

 ビクタースタジオ長の高田英男氏は、ソフト側/ハード側の共通意見として「たいへん大きな情報量を持っているマスター音源から、その質感を何とかして家庭用でも出せないか、という考えがベースにある。それを基準とすることで、開発者の想いを明確に伝えることができるのではと考えており、我々はそれをサポートしている」と説明。スタジオでは、エンジニアらが最後にチェックする民生機としてウッドコーンスピーカーを使う機会が他社を含めても多く使われるようになっており、「シンプルだがよく音が出て、ウソがつけないので、(フルレンジの)AR-9をチェック用として使っている」とのこと。

 今回の試聴会では、オーケストラの収録にも使われるという広い「301スタジオ」を使用。そこで、実際の生演奏と、A300で再生する24bit/96kHz収録の音源を比較するというデモが行なわれた。かつて、ビクターがオーケストラ演奏とレコード再生音の“すり替え実験”を行なったという有名なエピソードになぞらえたもの。あらかじめ再生音の一部に無音部分を設け、そこに生演奏のチェロを挟むことで、再生音が生音に近づいたことをアピールした。

 楽曲はバッハの無伴奏チェロ組曲第1番。演奏は、コブクロやJUJU、ジム・ホールら多くのアーティストと共演している伊藤ハルトシさんが行なった。コンサートホールとは違い、デッドな空間であるスタジオでの生演奏だったため、再生音と比べると残響などに違いはあるものの、この曲の特徴である低音の沈み込みや、中域のふくよかさなどが生演奏に近づいていることを実感できた。

伊藤ハルトシさんの生演奏とA300の再生を交えたデモA300が再生している間は伊藤さんは演奏せず、無音部分を伊藤さんが弾く最後に、伊藤さんとA300の“二重奏”も

 

ウッドコーンスピーカーの開発者である今村智氏

 第2部では、ウッドコーンスピーカーの開発者であるHM技術統括部 商品設計第二部 オーディオ技術G シニアエンジニアリングスペシャリストの今村智氏が従来モデルとの違いなどを再生デモを交えて説明した。

 今村氏は、ウッドコーンに込めた「スピーカーは楽器でありたい」という技術者の想いを実現するための取り組みを説明。開発スタートから5年を掛けて木の振動板を実現したことや、A250における、ウーファ/ツイータそれぞれのユニットとエンクロージャの改善、アンプ/プレーヤー部の細部にわたる徹底したこだわりを紹介。そして、今回のA300で取り組んだ「広い音楽空間の演出」、「解像度の向上」、「音場空間の拡大(上下/左右/前後)」、重心の低い低音再生」、「中音域の厚み」、「高域の抜けの改善」について語った。

 実際にデモとして流された音源でも、細かな描写を保ちつつ空間の広がりが感じられ、特に雷雨や野鳥の声など自然音の再生では、遠くの音と近くの音の違いが明確に描き分けられていた。

 今村氏は、録音エンジニアと共同で音質チューニングを進めてきたことについて「マスターテープには、アーティストと録音エンジニアの想いが込められている。それがEX-A300のスピーカーでリアルに再現できて、家庭に届けられるようになった」と完成度に自信を表した。

 なお、スピーカーとアンプ、プレーヤーの各製品は単体でも購入可能だが、スピーカーはネットワークが入っておらず、同シリーズのアンプとの組み合わせを想定している。音質チューニングは全てを揃えた形で行なわれているため、開発者の意図した音をを再現するにはA300で全て揃えることがベストだが、例えばA250のユーザーがスピーカー、またはアンプだけをA300のものに買い替えることでも音質の改善は見込めるという。

ウッドコーン関連の製品群従来モデルA250のアンプ/プレーヤー(左の2台)と、A300(右の2台)A300で追求したポイント
スピーカーユニット周辺の改善点引き出し線や吸音材にも手を加えているアンプ/プレーヤー部の振動対策
スピーカーの内部構造アンプ/プレーヤーの背面スピーカーの背面


購入者に、スピーカースタンド「LS-EXA25」やCD3枚をプレゼントするキャンペーン(2月28日まで)も実施

 EX-A300は、「JVCケンウッド丸の内ショールーム」(東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1階)にて常設展示を行なっており、試聴が可能。(平日10:00~18:00、土曜・祝日11:00~17:00)。

 また、2月10日(金)と11日(土)には同ショールームで特別試聴会を開催。予約制となっており、各回25名まで受け付ける。2月10日は18:30~19:30(開場18:15)、2月11日は1回目11:00~12:00(開場10:45)、2回目14:00~15:00(開場13:45)。この試聴会では、開発技術者による商品説明と試聴を行なう。



(2012年 2月 9日)

[AV Watch編集部 中林暁]