ソニーと東工大、世界最高速のミリ波無線用LSI開発
-機器間で非圧縮映像などを6.3Gb/sで無線伝送
東京工業大学とソニーは20日、世界最高速という6.3Gb/sのミリ波無線データ伝送を実現する高周波LSI、およびベースバンドLSIを共同開発したと発表した。モバイル機器間での高速なワイヤレスにデータを送受信したり、高画質な映像を非圧縮で転送・視聴できるようになるという。
システムは高周波(RF)LSI、ベースバンド(BB)LSIで構成されており、ソニーがBB LSIのデジタル部の設計とチップ全体の開発を、東京工業大学がRF LSIとBB LSIのアナログ部の設計を担当した。
共同開発したシステムのブロック図 |
無線通信の高速化に伴い、周波数の需要が増大し、特に6GHz以下の周波数がひっ迫している中、テレビやモバイル機器など、機器間でやりとりするデータ量が加速度的に増加している事に対応するための高速無線伝送技術。
ソニーが開発した高効率・高信頼性のレート14/15 Low-Density Parity-Check (LDPC) 誤り訂正符号により、誤り訂正を行なうために必要となる付加データ量そのものを大幅に削減。世界最小というビット当たり消費電力11.8 pJ/bit (6.3 Gb/s動作時74mW)で、LDPC復号処理が可能という。なお、このLDPC符号は60GHz帯ミリ波標準IEEE 802.15.3cへ提案し、採用されている。
RF LSI (左) およびBB LSI (右) のチップ写真 |
東京工業大学の松澤昭教授と岡田健一准教授らの研究グループが開発したRF LSIは、60GHz帯ミリ波ダイレクトコンバージョン無線機。高速な無線通信を可能とする16 Quadrature Amplitude Modulation (16QAM)に、世界で初めて、各種60GHz帯無線標準規格において規定されているすべての周波数チャネルで対応。既に開発されていた、周波数チャネル2チャンネルまで対応している注入同期型局部発振器を、独自の折り返し型構造にすることで、全4チャネルへの対応を可能にしたという。
また、BB LSIに搭載したアナログデジタル変換器では、変換誤差を増加させずに比較器を簡略化できる技術も投入。60GHz帯無線機に搭載されたアナログデジタル変換器として世界最小の消費電力12mW(2.3G samples/s動作時)を実現したという。
今回の開発の詳細については、2月19日からサンフランシスコにて開催される、International Solid-State Circuits Conference (ISSCC) に採択され、論文番号12.3で発表予定。
(2012年 2月 20日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]