ミニレビュー

ボーズQC20を末永く機上で使い続けるためにたどり着いた「iEmatch」

飛行機でノイズキャンセルイヤフォンが最高だけど……

 飛行機ではノイズキャンセルヘッドフォンがいい、特にBOSEのQuietComfort 20は耳のフィット感がよくて寝がえりもうてて最高!といった話を以前書いた。実際、現在でも飛行機に乗るときはQC20を必ず持っていく。出張でもプライベートの旅行でも大活躍だ。たまに忘れると悲しかった。長距離の国際線では、機内販売で同じものを見つけ買ってしまおうかと悩んだこともあった。断線したときは、修理(新品交換)もした。しかし、実のところ不満がまったくなかったわけでもなかった。それは音の大きさだ。

ボーズ「QuietComfort 20」。気に入っているけれど、飛行機上でちょっとした問題も……

 飛行機での騒音は席にもよるが、ゴーっという騒音が耳につく。エコノミーの席で用意されているイヤフォンはインナーイヤー型で、遮音性もよくなく、つい音量を上げることになる。だからこその騒音をシャットアウトできるノイズキャンセルヘッドフォン/イヤフォンは都合がいい。そのぶん、音量を控えめにできる。QC20であれば、機内エンターテインメントの音量は最小にしても十分だ。ちなみに、機内で用意されているイヤフォンとQC20のNCオフと聞き比べたこともあるが、極端にハイインピーダンスで効率が悪いということもなさそうだ。単純にNCの効果で騒音が抑えられれば、音量は下げられるのである。

 しかし、この音量を下げられることが問題になる。機内アナウンスだ。飛行機では、映画を見ていようが音楽を聴いていようが、機内アナウンスは割り込んでくる。映画や音楽の再生は止まり、強制的に機内アナウンスを聞かされる。もちろん、それは必要なこと。食事や免税品販売の話、機長の挨拶なら聞き逃して構わないだろうが、気流の乱れによる「シートベルトをしろ」、「立ちあるくな」といったものは聞き逃せば安全に関わる。だから、設定した音量とは関係なく、一定の音量(たいていは最大)にしているのだろう。

音量を最小にしていても、機内アナウンスは最大の音量になってしまう。必要なのだろうが、QC20だと爆音になり、機内エンターテインメントだとイヤフォンを外さざるを得なくなる

 備え付けのイヤフォンを使っているなら、音量を上げた状態でちょうどいいのだから、それほど気にならないだろう。しかし、QC20でNCをオンにし最小の音量にしていると、飛行機によっては耳が痛くなるほどの爆音になる。

 もちろん、必要なアナウンスというのは分かっているが、大きな音過ぎて、イヤフォンを外すのは煩わしい。それを嫌って、寝るときなどは、ジャックから抜いて、イヤフォンというよりNCによる耳栓として使うことも少なくなかった。

 また、ある飛行機では機内アナウンスのときに、大きな音でノイズが入ることがあった。スイッチの切り替え時によるものだろうか。周囲で私物のイヤフォンを付けている人は、皆苦痛な顔で耳からイヤフォンを外していた。インピーダンスの大きいヘッドフォンであれば、最初から音量を上げた状態でもちょうどいいので、こうした問題はないだろうが、QC20を使い続ける前提でなんとかならないか考えていた。

ようやく見つけた「iEmatch」

 ようやく本題である。QC20のように出力の小さいポータブルプレーヤー用のイヤフォンで、機内アナウンスが不快にならないようにするには、聞こえる音を小さくすればいい。備え付けのイヤフォンやインピーダンスの大きいヘッドフォンのように、最初から機内エンターテインメントの音量を上げておけるようにするという具合だ。

 ポータブルのヘッドフォンアンプでも挟むか? とも思ったが、ちょっと大げさすぎる。電源が必要なアクティブなものではなく、パッシブなものがいい。単純なものだから簡単に見つかるだろうと思っていたが、その考えは甘かった。

 オーディオテクニカの航空機用音量補正アダプター&変換プラグキット「AT3A53LK」を見つけるも、すでに生産完了。

 最初に試したのは、なにかのヘッドフォンに付属していた航空機用のアダプター。航空機のモノラルミニプラグ×2を、ステレオミニプラグに変換するもので、抵抗入り。ただし、焼石に水というかほとんど音量の差を感じない。

航空機アダプター。航空機の多くはモノラルのミニプラグが左右用に2つということが多く変換アダプターが必要。これは手持ちの中でも抵抗が入っていたものだが、音の大きさを下げるには十分ではなかった

 再生機とイヤフォンの間に挟み音量を調整できるJVCケンウッドのCN-M30Vを購入。可変抵抗が入っていて音量が調整できるのだが、最小にしても先述のアダプターより音が小さくならない。双方併用もしてみたのだが、ないより多少マシなのかもしれないかな、という程度。

現JVCケンウッドのCN-M30V。スライダーがついていて音量の調整ができるのだが、微調整用という感じで、あまり小さくならない

 パソコンとヘッドフォンの間に挟んでいるフォステクスのPC-1eを使うか?とも思った。音量はほぼゼロに近づけられる。ただし、入力側がステレオミニプラグなものの、出力側がRCAピンと変換ケーブルで、ごちゃごちゃし過ぎる。ゆったりした広いシートならいいが、エコノミークラスの席では邪魔な大きさ。

フォステクスのPC-1e。最小までダイヤルを回せば、かなり音を絞れるが、これを機内に持ち込むのは大仰過ぎる

 もうこの際、自作するしかないのか? などと考えたころに知ったのが、iFi Audioの「iEmatch」だ。

iEmatch。再生機器とイヤフォン/ヘッドフォンの間に接続するシンプルなアイテムだ。電源不要のパッシブ式

 やはり、再生機とイヤフォン/ヘッドフォンの間に挟むことで音を小さくして、その分再生機側の音量を上げられるようにする。オーディオに明るくないせいか、ウェブの説明はちょっと謎だが、再生機の音量を上げられるぶんノイズが減り音質を改善することをうたっている。変なノイズが入ってくる飛行機もあるから、ノイズ対策としても効果があるかもしれない。

 iEmatchにはスイッチがついていて、UltraとHigh-Gainを切り替えられるようになっている。「Ultra(-24dB)&High-Gain(-12dB)感度調整」というのが、(出力側のインピーダンスをどの程度想定しているにしろ)24B/12dB音が小さくなるというのであれば、効果はかなり期待できる。切り替えスイッチはもう一つあり、一般的なGNDを共用するシングルエンドとしてだけでなく、スイッチによる切り替えでLとRそれぞれの2芯使うバランス接続にも対応する。

機内で使うときは、航空機アダプター-iEmatch-QC20とつないでいく。もともとQC20の電源/回路部が大きいので、iEmatchの存在はそれほど気にならない

 実際に飛行機で使ったときの効果は絶大、実に快適。繋いだ瞬間に、これで機内でも音量を上げられる! と思った。実際、映画を見ているときは、iEmatch側を-12dbのHigh-Gainにしたとき、機内エンターテインメントの音量最小と比べて、それより2段階くらい音量を上げて同じくらいになる。より音が小さくなるUltraでは3~4段階くらい上げて同じになる印象だ。

 このときは、深夜発で早朝着の便だったこともあり、映画を1本見て寝てしまったのだが、その際はUltraにしさらに機内エンターテインメントを音楽にし、音量を最小にした。かなり小さくなるが、まったく音が聞こえなくなるわけでもない。眠るにはいい感じだ。改めて、iEmatchなしで最小の音量でも、まだ大きかったと実感した。機内アナウンスは、大きな音で気づく範囲だが、iEmatchを挟むことで小さくなっているので、びっくりしちゃうほどではないし、QC20を外す必要もない。

 機内エンターテイメントで音質どうこう言うものでもないだろうが、iEmatchを挟んだからといって音の大きさ以外の変化は特に感じなかった。少し遠くに聞こえるかな? と思わなくもないが、これは音が小さくなったためだろう。自宅で試しても、音質の変化は関しては特に感じず、個人的にはまったく気にならない。

iEmatchには、耳栓や航空機アダプターが付属する。まさに飛行機で使うためのアイテムと思える

 もちろん、すべてのイヤフォン/ヘッドフォンで、このように音の大きさを抑える必要がある必要があるわけではない。しかし、手持ちのイヤフォンだと音が大きすぎると感じているならiEmatchは最適だ。ウェブにある商品の説明では音質の改善がアピールされているが、付属品は航空機アダプターと耳栓、収納袋。飛行機の機内で快適に使えるようにするアイテムのように思える。実売7,340円(税込)という価格に購入を躊躇したのは事実だが、音を小さくできることで機内でより快適に過ごせるようになったので、今では高い買い物ではなかったと思っている。

 また、実売3,990円で-15dBの効果があるという「EarBuddy」もあるようだ。こちらでも十分だったかもしれない。

Amazonで購入
iEmatch

猪狩友則