ミニレビュー
細かすぎて伝わらないスマートスピーカーの音楽機能の違い
2018年3月21日 08:00
天気予報やタイマー、家電の操作など多彩な機能を備えるスマートスピーカーだが、その名称である「スピーカー」と最も相性がいいのはやはり音楽だろう。Google HomeとAmazon Echoという2大スマートスピーカーを取り巻く音楽機能の使い勝手を比較した。
Google HomeとEchoの両対応サービスは少ない
スマートスピーカーの音楽機能の中で代表的な存在が音楽配信サービスだ。自宅やオフィスで常に無線LANに接続している常時接続環境は、膨大な曲数を楽しめる定額制の音楽配信サービスと非常に相性がいい。
Google Home、Amazon Echoの両方とも独自の定額制配信サービスを提供するほか、他社のサービスにも対応しているが、現状のところどちらの製品でも利用できるサービスはauの「うたパス」のみ。好きな楽曲サービスを選ぶのではなく、購入した製品によってサービスが決まることになる。
サービスごと聴ける音楽は異なるが、「楽曲数が多いが邦楽が少ない」洋楽系、「楽曲数は少ないが邦楽が充実している」邦楽系の2つに分類できる。前者はGoogle Play MusicやAmazon Prime Music、Spotifyなどで、後者がレコチョク運営のうたパス、dヒッツなどだ。
なお、うたパスはau、dヒッツはNTTドコモのサービスだが、どちらもクレジットカードを登録すれば回線契約がなくても利用できる。また、この2サービスは曲を選択するのではなく、気分やムードにあわせたプレイリストを選ぶサービスとなる。
ファミリープランを活用できるのは現状Google Homeのみ
一部サービスが提供している、複数ユーザーで利用できるファミリープランの対応状況も製品によって異なる。Google Homeは複数ユーザーの登録や話者認識機能が提供されているため、ファミリープランのアカウントごとに楽曲を再生することが可能だ。「音楽をかけて」と発声した人によって、その人が普段聴いている音楽に合わせた楽曲が流れる、という使い方ができる。
一方、Amazon Echoは話者認識機能を海外で提供しているが、日本語版では未対応であり、現状では1台のAmazon Echoに設定できるアカウントは1つのみ。そのため、ファミリープランによるユーザーの使い分け機能は今のところスマートスピーカーでは活用できない。
端末内の楽曲ストリーミング再生ができるGoogle Home
定額制のストリーミング配信サービスは便利ではあるものの、すべての楽曲が網羅されているわけではない。手持ちのCDをリッピングしてスマートフォンに取り込んでいたり、音楽配信サービスで購入した楽曲など、定額制では配信されていない音楽をスマートスピーカーで再生したいということもあるだろう。
こうした端末内の楽曲再生機能はGoogle Homeに軍配が上がる。Androidの場合、本体ストレージに保存した楽曲はGoogle Play Musicで自動的に認識されるため、Google Play Musicのキャスト機能を利用してGoogle Homeで楽曲を再生できる。
iOS向けのGoogle Play Musicは端末に保存された楽曲を自動で読み込む機能などは搭載されていないが、PCから楽曲をGoogle Play Musicにアップロードし、スマートフォンのアプリからダウンロードすることで端末に取り込める。この機能はGoogleアカウントさえ持っていれば最大5万曲まで無料でアップロードできるため、自宅の楽曲を保管する場所として活用するのもいいだろう。
PCを介するのが手間、という人は、「AllCast」というアプリから端末内の楽曲をキャストできる。iTunes Storeで購入した楽曲をキャストしてGoogle Homeで楽しむことも可能だ。操作の手軽さでいうと、Google Play Musicを介するよりこれらアプリを使った方がいいだろう。なお、操作対象はDRMフリーの楽曲のみで、Apple Musicの楽曲はキャストできない。
一方、Amazon Echoにはこうした端末内の楽曲をストリーミング再生する機能は搭載されていない。Amazon Musicで購入した楽曲であれば再生は可能だが、PCから取り込んだ楽曲や、他の音楽配信サービスで購入した楽曲をキャストして再生はできない。
Amazon EchoはBluetoothスピーカーとしても利用できるため、スマートフォンとBluetoothでペアリングすれば端末内の楽曲も再生できるが、その場合はスマートフォンの通知音も再生されてしまうし、家族など複数人で利用したい、音楽に集中したいといったシーンではGoogle Homeのほうが便利だ。
外部スピーカーへ音楽を出力できるAmazon Echo
一方、Amazon Echoにしかない、そして音楽の環境を大幅に変えうる重要性を持った機能が、音楽の出力機能だ。Amazon Echo、Google Homeともに自身がBluetoothスピーカーとして動作する機能は備えているが、Google Homeは別のスピーカーへ出力することができないのに対し、Amazon EchoはミニジャックとBluetoothでの音声出力機能を備えている。
ただ音楽を聴ければいい、というのであればこの機能は必要ないだろうが、高音質や音楽の環境を追求するユーザーにとってこの機能の違いは大きい。高性能なスピーカーとミニジャック経由で接続することで音質を高めたり、バッテリ内蔵のスピーカーとBluetoothで接続すれば、音楽を聴きたい場所にスピーカーを持ち運んで楽しむといった使い方の広がりが生まれる。
筆者の場合、ソニーのLED照明スピーカーを活用して、天井から音楽が鳴る環境でスマートスピーカーの音を鳴らす、という環境を構築しようと調べてみたのだが、前述の通りこれができるのはAmazon Echoのみ。一方で現在利用している定額制配信サービスがSpotifyであり、Amazon Echoではスマートフォン内の楽曲を再生することができないことがわかり早々に諦めてしまった。海外ではAmazon EchoがSpotifyに対応しているため、日本語版でも早くSpotifyに対応して欲しいところだ。
音楽機能では一長一短。Amazn Echoの本格展開に期待
スマートスピーカーとしてはほぼ同等の機能を備えているAmazon EchoとGoogle Homeだが、音楽など特定の機能に特化して比較すると、細かいながらも気になる違いが見えてくる。端末内の音楽をキャストできるGoogle Home、外部スピーカーへ出力できるAmazon Echoは、音楽を聴くスタイルによっては大きな違いとなるだろう。
一方、今後のアップデートでカバーできる機能もある。前述の通りAmazon EchoのSpotifyや複数ユーザー対応は海外ではすでに提供されており、今後日本でも対応してくれれば、ファミリープランの使い分けも可能になるだろう。
むしろ、日本での発売から3カ月以上経過しながらも、いまだ自由に購入することができないAmazon Echoの販売形態が課題だ。利用者や販売台数が増えなければサービスの拡充も期待できないこともあり、スマートスピーカー市場活性化のためにも、そろそろAmazon Echoの一般発売を期待したいところだ。
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