ミニレビュー
ソニー「α9 III」グローバルシャッターは動画でも活きる!? 従来機と比べてみた
2023年11月8日 18:35
ソニーは、横浜・みなとみらいのぴあアリーナMMにて、新ミラーレスカメラ「α9 III」の実機を体験できるイベント「α SPECIAL EVENT 2023」を開催。短い時間ではあるが、フルサイズミラーレスで初めてグローバルシャッターを搭載したα9 IIIを体験したので、動画撮影視点でのレポートをお届けする。
α9 IIIは、11月7日23時(日本時間)より米国で開催されたイベント内で製品発表が行なわれた。詳細は別記事を確認していただきたいが、特徴は以下の通りとなっている。
- フルサイズミラーレスでは世界初のグローバルシャッター方式センサー
- AIプロセッシングによるAF/AE追従、ブラックアウトフリーで最高120コマ/秒の連続撮影
- 5軸ボディ内手ブレ補正機能で8段までの手ブレ補正
- プリキャプチャー機能
- 最高シャッタースピード1/80,000秒(連写時1/16,000秒)
- 純正フラッシュで全速フラッシュ同調が可能(最大1/80,000秒)
- ノンクロップの4K120p動画撮影
- 4軸マルチアングル液晶モニター
大きくアピールされているグローバルシャッターだが、どのような利点があるかというと、ゴルフのスイングや車や電車など、高速で動く被写体を撮影した際に、歪み無く撮影できること。
従来のローリングシャッター方式は、撮影する際に画像の撮像面上部の画素から下部に向かって順番に読み出しを行なうため、高速で動くものを撮影すると、上下で歪んでしまうという問題があった。例えばゴルフのスイングを撮影すると、ゴルフクラブが曲がっている形で撮影されることがある。
グローバルシャッター方式では、センサーの全画素を同時に露光・読み出しを行なうため、ローリングシャッター方式で発生する歪みがなく、見たままの映像が撮影できる。
これだけの話を聞くと、全部グローバルシャッターで良いのでは?と思ってしまうが、これまで採用されてこなかった理由はもちろんある。代表的な例では、ローリングシャッター方式よりも解像度や色表現の面で劣ってしまうことなどがあったのだが、こういった技術的な課題を少しずつクリアしていき、今回の採用に至ったという。開発期間は明かされなかったが、「技術的なハードルが高い機能なので開発期間は長かった」とのことだ。
これらの機能に対して心配になるのが本体の熱問題だが、想定されるスポーツ撮影や報道機関での使用を基準として、その状況下で問題の無い範囲で熱対策を施した設計になっているという。
動画も歪みなく撮れる? 実際に撮り比べてみた
この歪みのない映像は動画撮影にも利点があるということで、実際にローリングシャッターとどのような差があるのか撮影した。イベント会場に並んでいたポールを被写体にカメラを左右に振った例と、バットをスイングする例を、グローバルシャッター採用のα9 IIIと、ローリングシャッターの前機種α9 IIやα7C IIで撮り比べてみたのが次の動画だ。
まずポールの例だが、実際に見てみるとわかりやすい。ローリングシャッター方式では、ポールの上部がカメラを振っている向きの反対方向に傾いているように見え、降り続けるとポールがぐにゃぐにゃ動いているように見える。これがα9 IIIで撮影した映像ではポールがまっすぐ立ったまま映っているので、映像全体がくっきりと映っているように感じられる。
バットのスイングの例では、通常の速度ではそこまで違いがあるようには見えないのだが、スロー再生してみると、ローリングシャッターの方が振られた瞬間や、振り抜いたあとのバットが曲がっているように見える。これがグローバルシャッターでは、どのシーンでもバットがまっすぐ映っているため、スロー再生でもバットの起動がハッキリと見えている。
従来はこういった速く動く被写体が歪んで映ってしまうことが一般的だったわけだが、グローバルシャッターの採用でその歪みがなくなることで、映像表現の場においても、今までにはない表現ができるようになりそうだ。風車のプロペラの動きや、動く被写体と併走しての撮影などもまた出てくる画が変わってくるだろう。
今回はグローバルシャッターによる効果がメインとなったが、α9 IIIでは、4K120pのスロー動画をクロップなしで撮影や、VLOGCAM「ZV-E1」にも搭載されているダイナミックアクティブモード、10bit 4:2:2での撮影、Log撮影、S-Cinetone、ブリージング補正など、動画撮影向けの機能も充実している。詳細なレビューはまた別の機会にお届けしたい。