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「21世紀のソニーは感動を作るところに貢献」'24年度経営方針。PS5販売・シェア「満足できる数字」

吉田憲一郎代表執行役会長CEO

ソニーグループは5月23日、東京・港区になる本社で2024年度経営方針説明会を開催し、吉田憲一郎代表執行役会長CEOと十時裕樹代表執行役社長COO兼CFOが登壇。説明会後の質疑応答で、吉田会長CEOは「21世紀のソニーは、感動を作るというところに貢献していきたい」との考えを示した。

「ソニーの成長ステージが変わったのか、次の3年以降はその成長が加速のステージに入るのか、投資ステージに入るのか」という質問への回答のなかで、吉田会長CEOが答えたもの。

「我々が取り組んでいるエンタテインメント市場は成長市場だと思っています。またクリエイティブ、あるいはクリエイションにシフトしていくところも、我々にとって成長市場だと思っています」

「その背景を少しだけ説明させていただくと、ソニーは20世紀にウォークマンやトリニトロンカラーテレビ、CDなど“感動を届けること”に貢献してきた企業だと思っています。21世紀のソニーは“感動を作る”というところに貢献していきたいと思っています」

「21世紀では、感動を届ける主なメディアはネットワークになってきました。そこにはビッグテックも含めてたくさんのプレイヤーが存在しています。我々がより貢献できる、我々の強みが発揮できるのはむしろ作ること、クリエイティブコミュニティに貢献することではないかと考えています」

質疑応答前に行なわれた経営方針説明会では、「リアルタイム」をキーワードに、CMOSイメージセンサーやゲームエンジンのクリエイションテクノロジーに注力する方針が明かされており、これを踏まえて「我々は今、リアルタイムに生きていますが、そこで我々の強みを発揮できる」と吉田会長CEO。

「今日はCMOSセンサーとゲームエンジンの話をさせていただきました。(リアルタイムの)後段には『編集』や『検索』がありますが、そこにはたくさんのプレイヤーがいます。リアルタイムというところで価値を生み出していくところをやっていきたいというのが、我々の思いです」

CMOSイメージセンサーは「クリエイションを支える半導体」

CMOSセンサーを「瞬間」を支えるテクノロジーと位置づける
「VENICE」シリーズが使われた映画作品たち

経営方針説明会では、「クリエイションを支える半導体」としてCMOSイメージセンサーに注力し、過去6年間で約1.5兆円の設備投資を行なったこと、グローバルシャッター方式のフルサイズイメージセンサーを搭載したミラーレス一眼カメラ「α9 III」は3月にイギリス・グラスゴーで開催された「2024世界室内陸上競技選手権大会」で活用されたこと、デジタルシネマカメラ「VENICE」シリーズはスーパーボウルのハーフタイムショーで使われるなど、映画業界以外の映像制作に活用が広がっていることなどが明かされた。

ゲームエンジンについては、出資するEpic GamesのUnreal Engineを、さまざまなクリエイションのプロセスに活用する方針を表明。バーチャルプロダクションの提供や、実空間に3Dコンテンツを重ねながらコンテンツ制作や編集ができる没入型空間コンテンツ制作システムによる没入感ある制作体験の提供、北米プロスポーツリーグでは現実の選手の動きをトラッキングし、リアルタイムで3Dアニメーション化することでファンの裾野を広げていることなどが明かされた。

十時裕樹代表執行役社長COO兼CFO

また、十時COO兼CFOは「今後のテクノロジーの進化を見据えながら、10年後のソニーのありたい姿を描いた」という長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」について紹介。同ビジョンが示す方向性に向けて、さまざまなエンタテインメントカテゴリでIP価値最大化の取り組みを進めているとした。

具体的には、アニメのIP創造では、アニプレックスによる高品質な作品の制作、1,300万人超の有料会員を抱えるクランチロール(Crunchyroll)を通じた海外配信、アニプレックス傘下の制作スタジオ・A-1 Pictures、CloverWorksなどと連携してアニメ制作ソフト「AnimeCanvas」を制作していることなどを紹介。

さらにアニプレックスとクランチロールを中核に、業界とも連携して海外のアニメクリエイターを育成するアカデミー設立の検討を開始したことも明らかにした。

開発を進めているアニメ制作ソフト「AnimeCanvas」。今年度中の試験導入を目指すという

IPの創造については傘下のアニプレックスやクランチロールを活用すること、アニプレックス傘下の制作スタジオであるA-1 Pictures、CloverWorksなどと連携してアニメ制作ソフト「AnimeCanvas」を制作していることなどを紹介した。

IPの育成については、PlayStation StudiosによるゲームIPの実写映画化や、YOASOBI、乃木坂46など熱量の高いアーティストが新たな文化を創り出すファンダムアーティストの創出などを挙げた。

また境界を超えてIPを拡張していく「IP360」戦略として、「アンチャーテッド」といったゲームIPを、遊園地などロケーションベースエンタテインメントに展開すること、ビートルズ各メンバーの視点からグループの歴史を振り返る伝記映画4本の同時制作に取り組んでいることなどを紹介した。

そのほかIPの育成としてはPlayStation ProductionsによるゲームIPの実写映像化、「境界を超えてIPを拡張する」という「IP360」では「アンチャーテッド」などのゲームIPを遊園地などのロケーションベースエンタテインメントに展開すること、ビートルズ各メンバーの視点からグループの歴史を振り返る伝記映画4本の同時制作に取り組んでいることなどを紹介した。

音楽面のIP価値最大化としては「YOASOBI」や「乃木坂46」といったアーティストによるIP創出、ファンコミュニティ拡大を挙げた

PS5の販売・シェアは「満足できる数字」。AI活用についての考えも

そのほか質疑応答で、AIの活用について問われると、吉田会長CEOは「テクノロジー企業として、AIは積極的に活用していきたい」としつつ、「一方で私たちはエンタテインメント企業でもあり、クリエイターの権利を守っていく、守らなければならない立場でもある」とコメントした。

「(AI活用に)大きく可能性を感じているのはゲームなどコンピュータ技術を使った領域です。ゲーム開発のコストは近年非常に大きくなってきています」

「(問題解決のために)例えばゲームの3Dアセットを作る、ゲーム内に登場するキャラクターをAIで生成する、クオリティアップのためのテストプレイといった領域で活用できるのではないでしょうか」

「またエンゲージメントを高めることにも活用できると思っています。例えば『グランツーリスモ7』ではAIの『GTソフィー』がプレイヤーのライバルとしてレースを戦うことができます。レーシングゲームの中でAI学習したクルマが走り、遊佐―と競技する。これはまさにユーザーのエンゲージメントを上げるものではないでしょうか」

また2023年度通期のPlayStation 5販売台数が、当初目標としていた2,500万台を下回る2,080万台だったことについて問われると、十時COO兼CFOは「当初の目標だった2,500万台という数値は、いわば“COVIDのテールエンド”があった時期の想定に基づいて、非常にアグレッシブなケースとして作っていた」と答えた。

「それが剥落した現在は、非常に順調に販売を進めていると思っています。自分たちが掲げたアグレッシブな目標には届きませんでしたが、インダストリー全体のコンソール売上を見ていただけると、我々のシェアは高い。現世代の販売実績、シェア拡大については、まずもって満足できる数字ではないかと評価しています」

会場には「鬼滅の刃」や「HELLDIVERS 2」といったIPコンテンツの展示も
「α9 III」のイメージセンサーや画像処理エンジンなどの内部パーツ展示も行なわれていた
「フィジカルとバーチャルの境界を超えた未来のロケーションベースエンタテインメント」のプロトタイプシミュレーター
CES 2024で発表した「没入型空間コンテンツ制作システム」のデモも