ミニレビュー

Atmos対応ヤマハサウンドバー上位モデル「SR-X40A」聴いてみた。B30Aとの違いは?

サウンドバー「SR-X40A」

ヤマハは、Dolby Atmosに対応し、イネーブルドスピーカーも内蔵した注目のサウンドバー「SR-X40A」(実売70,400円前後)を発表した。気になるのはやはり、音質とイネーブルドスピーカーの効果だ。そこで、短時間ではあるが、取材時に試聴した印象をレポートする。

SR-X40Aの詳細は、同日に掲載したニュース記事を参照して欲しい。簡単に特徴をピックアップすると、サブウーファーは付属しないワンバータイプで、本体にイネーブルドスピーカーとウーファーも搭載。天井に向けて音を放出し、反射させる事で、上からのリアルサラウンドを実現している。

同じワンバータイプとして、既発売のAtmos対応サウンドバー「SR-B30A」(実売33,000円前後)と比べると、横幅がSR-X40Aの方が少し長くなっている。また、HDMI端子の仕様も異なり、B30AはHDMI eARC/ARC対応端子が1系統のみだが、X40AはHDMI eARC/ARC端子に加え、HDMI入力も1系統備えている。

手前が「SR-B30A」、奥が「SR-X40A」。X40Aの方が横幅が長い
SR-X40Aの端子部。HDMI入力も1系統備えている

SR-X40AとSR-B30Aを比較試聴する

手前が「SR-B30A」、奥が「SR-X40A」

SR-B30AとSR-X40Aを比較試聴した。

映画はUHD BDの「トップガン マーヴェリック」冒頭。マーヴェリックがバイクに乗って、ダークスターの格納庫に到着して会話、その後、管制室と会話しながらダークスターが離陸するシーンまで。

まずはSR-B30Aを聴いてみる。

SR-B30AもSR-X40Aと同じワンバータイプで、イネーブルドスピーカーは搭載していないが、バーチャルサラウンド技術を用いて広がりのあるサラウンドが楽しめる。具体的には、マーヴェリックがダークスターの実験中止について語り合っているシーン。ハンガーの中で、会話している声が反響するのだが、その声の響きが画面を超えてしっかりと広がり、「おお、飛行機を格納するほど大きなハンガーの中で喋っているんだな」というのが、画面ではなく、音からも感じられる。

ダークスターが離陸するシーンでは、強烈なエンジン音が音圧豊かに押し寄せ、サブウーファーが無いワンバータイプでも迫力はしっかり感じられる。また、離陸する瞬間に巻き上げられた砂が、「サァアアアー」と散らばる音が、テレビ画面を超えて横方向に広がる。本当に風が吹き寄せてきたようだ。

では、同じシーンをSR-X40Aに切り替えるとどうだろうか。

冒頭のBGMからバイクのエンジン音、格納庫での会話……と鑑賞したのだが、BGMが流れた瞬間に「X40Aの方が音が細かく、さらに重い」と感じる。BGMの楽器の音や、ロッカーを閉じる時の金属質な音などが細かく、鋭く描写され、SR-B30Aよりもドキッとするリアリティがあり、臨場感がアップしている。

バイクやダークスターのエンジン音も、低音がSR-B30Aよりも一段深く沈み込む。B30Aは胸を押されるような音圧だったが、X40Aはそれよりも下のお腹にズンズンと響くため、低音に凄みがある。低音自体もタイトで無駄に膨らまず、低音の中に細かな音が隠れているのが聴き取れる。

さらに大きな違いがイネーブルドスピーカーによる上からの音だ。特にハンガーで会話するシーンでは効果が顕著で、B30Aでは「音が反響する広い空間で喋っているな」と感じられたが、X40Aでは「天井が凄く高い建物で、そこに話し声が反響して上から戻ってきているな」というのが耳から伝わり、「格納庫の巨大さ」がよりリアルに伝わってくる。

言葉にすると「上から音が聞こえるか聞こえないか」という違いだけなのだが、映画で大事な「本当にその場にいるような臨場感」は、やはりイネーブルドスピーカーのあるSR-X40Aの方が有利だ。

外からは見えないが、筐体内に、斜め上に向けてイネーブルドスピーカーが内蔵されている

映画「ファーストマン」から、ニール・アームストロングが新型機のテスト飛行で高度を上げ、宇宙へと近づいていくシーンも試聴した。

高速で飛行する機内には、エンジン音の轟音に加え、ボディが軋む「ガタガタ」「ギシギシ」という音が充満しているのだが、その音も、X40Aの方が鋭く、重い。そのため、X40Aで鑑賞している時の方が、「この飛行機、途中で分解しないか? 大丈夫か?」という不安が高まり、心拍数が上がる。イネーブルドスピーカーによる上からのリアルな音も加わるので、自分が“コクピットに包まれている感”もX40Aの方が明瞭だ。

宇宙空間へと引き込まれそうになるシーンでは、サッと無音になり、静けさに支配される。このままでは地球に戻れなくなると焦る主人公の吐息が「ハァハァ」と聞こえるのだが、その吐息のキレもX40Aの方が鋭い。続いて、スラスターを噴射して体制を変えるのだが、その「ブシュー!」という噴射音もX40Aの方が鮮烈だ。

結論としては、全体の音の解像感や、音場の広さ、包み込まれる包囲感において、X40Aには上位モデルとしての“格の違い”を感じる。

一方で、B30Aも、X40Aには劣るが、イネーブルドスピーカーを搭載していないにも関わらずテレビ画面を超えるエリアにしっかりと音は広がる。低音もワンバータイプとしては十分迫力は出ており、満足感は高い。

実売価格が2倍以上であるため、実力差があるのは当然だ。SR-B30Aは、テレビ内蔵スピーカーのサウンドからの大幅なステップアップが、気軽に実現できるコストパフォーマンスの高さに注目。SR-X40AはワンバーだけでHi-Fiライクなクオリティの高いサラウンド環境が構築できる点を評価したい。

山崎健太郎