ミニレビュー

小型・重低音サウンドバー「Sonos Arc Ultra」聴いてみた。低音の表現力に驚く

「Sonos Arc Ultra」

Sonosは、1月24日に発売する9.1.4chサウンドバー「Sonos Arc Ultra」と新型サブウーファー「Sonos Sub 4」のメディア向けデモセッションを開催、発売に先駆けて実機を試聴したので、ミニレビューをお届けする。

上段のホワイトモデルが「Sonos Arc Ultra」、下段のぶらっくもでが「Sonos Arc」

Sonos Arc Ultraは、2020年に発表されたドライバー11基搭載サウンドバー「Sonos Arc」の後継機。価格は149,800円ですでに予約を受け付けている。

1月15日にはオンラインでメディア向けブリーフィングが行なわれた。登壇した同社の特任オーディオ・システムエンジニアのダグ・バトン氏によれば、Sonos Arcは現在もアメリカやイギリス、ドイツでトップセラーのポジションを守り続けているというが、「需要が高まっている超大型テレビによる没入体験に対応できる製品」としてSonos Arc Ultraを開発したと明かした。

Sonos ArcとSonos Arc Ultraの大きな違いは、ドライバー構成。従来のSonos Arcはツイーター×3基、ミッドウーファー×8基の11ドライバーを11基のクラスDアンプで駆動する2ウェイ仕様だったが、今回のSonos Arc Ultraはツイーター×7基、ミッドウーファー×6基に新技術「Sound Motion」を投入したウーファー×1基の14ドライバーを15基のクラスDアンプで駆動する3ウェイ仕様となっている。このうちSound MotionウーファーにはクラスDアンプが2基使われる。

Sound Motionウーファー

そしてSonos Arc Ultra最大の特徴と言えるのが、そんなSound Motionウーファー。これは一般的なウーファーとは異なる長方形型のユニットで、2基のメンブレンウーファーが上下に向かい合うように配置され、四隅にモーターが1基ずつ配置されているもの。一般的なウーファーは振動板の後ろにボイスコイルやマグネットなどがあるが、そういった駆動部品を振動板横に移動させることで薄型化し、サウンドバー本体を大型化せず組み込むことに成功したという。

4基のモーターは対角線上のものとブリッジで接続されてペア化されているほか、メンブレンウーファーを上下に対向配置することでフォースキャンセリング効果も生み出しており、キャビネットや壁に振動が伝わらない設計になっている。

Sound Motionウーファーはサウンドバーの薄型化にも貢献したという

このSundo Motionウーファーを搭載したことで、Sonos Arc Ultraは従来モデルと比べて2倍の低音出力を実現している。開発には、Sonosが2022年に傘下に収めたオランダのMayhtの技術を活用したとのこと。バトン氏によれば「Sundo Motionは今後のSonos製品にも展開されていくことなる」という。

音量ボタンなどは本体背面に備える

Sonos Arc Ultraは単体で9.1.4chの再生に対応。スピーチエンハンスメント機能も従来のON/OFFから、低/中/高の3段階から選択できるように進化したほか、Sonos独自の音場補正機能であるTrueplayにも対応。iOS端末のマイクを使って補正する従来どおりのTrueplayに加え、Sonos Arc Ultraの内蔵マイクを使って補正する「QuickTune」も利用可能となっており、iOS端末だけでなく、Android端末からも補正機能を利用できる。

ワイヤレスヘッドフォン「Sonos Ace」とも連携可能

そのほか、2024年に発売されたワイヤレスヘッドフォン「Sonos Ace」との連携機能も搭載。ボタンひとつでSonos Arc Ultraで再生しているサウンドをSonos Aceに転送することができる。このAceへの音声スワップ機能は現時点で1台のAceにのみ対応しているが、今年夏頃には2台まで対応するソフトウェアアップデートが予定されているとのこと。

なお、国や地域によってはSonos Arc UltraとSonos Arcが併売されるところもあるとのことだが、日本ではSonos Arc Ultra導入に伴い、従来モデルのSonos Arcは流通在庫分のみで販売終了となる。

実際に音を聴いてみた

メディア向けデモセッションでは、従来モデルであるSonos Arcと聴き比べながら、Sonos Arc Ultraを試聴。どちらもTrueplayのみ適用済みで、そのほかのイコライザーなどはOFFにした状態で試聴した。組み合わせたのは65型テレビで、セッション中はリアスピーカー「Era 300」×2、ワイヤレスサブウーファー「Sonos Sub 4」を適宜組み合わせつつ試聴を行なった。

まずは音楽を試聴。Sonosアプリ経由でApple Musicから「The Beatles/Eleanor Rigby (2022 Mix)」や「prince&the revolution/When Doves Cry」のDolby Atmos音源を再生してみると、まず印象的だったのが低音の表現力。Sonos Arcよりも腰が低く、ズシンと響きながら、唸るような弦の鳴りもしっかり再現される。

さらに低/中/高域を各ドライバーが担当する3ウェイ構成になったことで、中高域の解像感もアップ。よりクリアにボーカルを楽しむことができた。

「Era 300」

サウンドバー単体での空間オーディオ再生力もアップしており、しっかりと背後まで音が回っているほか、従来モデルよりも左右の音の広がりが強くなった印象。リアスピーカーとしてEra 300を組み合わせたほうが没入感は高まるが、Sonos Arc Ultra単体でも充分に空間オーディオを楽しめる。

またDolby Atmos非対応の楽曲も広がりのあるサウンドで楽しめる。例えば「Mrs.GREEN APPLE/ライラック」を聴いてみると、ボーカル・大森元貴の声が中央にしっかり定位しつつ、ギターやドラムスといった楽器の音が左右や上方向から降ってくる感覚を味わえた。

サウンドバーで音楽を聴くとなると「大した音質じゃないから、ながら聴き向けでしょ」と思いがちだが、Sonos Arc Ultraはしっかり腰を据えて音楽と向き合いたくなるサウンドに仕上がっていた。

続いては映画をチェック。「トップガン マーヴェリック」や「デューン 砂の惑星 PART2」を試聴した。

トップガンでは冒頭の空母発艦シーンや極超音速有人航空実験機「ダークスター」の離陸シーンを試聴してみると、こちらも低音の存在感が印象的。特に空母発艦シーンで流れる「ケニー・ロギンス/デンジャーゾーン」では低音の厚みが増したことで、より高揚感が高まるような印象だった。

ダークスターの離陸シーンでは、特にエド・ハリス演じるケイン海軍少将の頭上を通過するシーンで、ダークスターが前方から後方に飛翔していく様子を音で感じることができた。

「デューン 砂の惑星 PART2」では、3段階から選べるようになったスピーチエンハンスメント機能をチェック。OFFの状態でもセリフは充分聴き取りやすかったが、同機能をONにすると、特に男性の声に含まれるこもったような低音成分がなくなり、より声が明瞭になり聴き取りやすくなった。このスピーチエンハンスメント機能にはAIも活用し、セリフ部分のみを抽出してセンターチャンネルで持ち上げているという。

ワイヤレスサブウーファー「Sonos Sub 4」

ちなみにSonos Arc Ultraでは50Hz付近までの低音域が再生可能だが、ワイヤレスサブウーファーのSonos Sub 4では25Hz付近の超低音域まで再生できるため、組み合わせることでよりお腹に響くような重低音を味わうことができる。

デモセッションに登壇したSonos Japanの吉田庸樹代表は「日本市場において、Sonosはまだまだ知る人ぞ知るブランドでしたが、去年ヘッドフォン(Sonos Ace)を発売したことで若い世代にもブランドが広がった。今回(サウンドバーの)最上位機種を出すことで品質の高さ、ブランドの立ち位置なども訴求していきたい」と語った。

「去年のホリデーシーズンも含めて、サウンドバーの市場は1万円以下で“音が出ればOK”というものと、我々や競合他社を含めた上位機種と、かなり2極化しています」

「我々としてはもちろん、後者のハイエンドで勝負していきます。今回のSonos Arc Ultra導入によって、さらに極めていきたいと思っています」

酒井隆文