レビュー

Sonosサウンドバーユーザーが、最上位「Arc Ultra」を使ってみたらサラウンド感が明らかに違う

「Sonos Arc Ultra」

初めて自宅にサウンドバー「Sonos Beam(Gen2)」を導入したとき、テレビのスピーカーとは段違いの音が嬉しくて、何本も映画を観た。だが、人とは贅沢なもので、それが当たり前になると段々と慣れてしまう。もっと迫力があって、音に包みこまれるような体験がしたくなっていた。

そんなとき、Sonosのサウンドバーに新たなフラグシップモデル「Sonos Arc Ultra」(以下、Arc Ultra/149,800円)が登場すると知った。これなら求める体験ができるかもしれない。そう思い、メーカーから借り受けて、2週間ほど使ってみたのでレポートしたい。

Sound Motionウーファーの搭載で低音強化

筆者が自宅で使っている「Sonos Beam(Gen2)」は、Sonosブランドのサウンドバーとしてはミドルクラスに位置づけられるモデルだ。その上位機種には「Sonos Arc」があったが、今回その後継機としてArc Ultraが発売された。Sonos Arcは販売終了となるので、いまステップアップを考えるなら、Arc Ultra一択になるわけだ。

Arc Ultraでは、Sonos Arcからドライバー構成が進化した。Sonos Arcが2ウェイ 11ドライバー(ツイーター×3、ミッドウーファー×8)をD級アンプ×11でドライブする仕様だったのに対して、Arc Ultraは3ウェイ 14ドライバー(ツイーター×7、ミッドウーファー×6、Sound Motionウーファー×1)をD級アンプ×15でドライブすることによる、9.1.4ch再生に対応している。

ユニットの構造イメージ

本体の音響構造を見直したことによるドライバー数の増加はそれだけで期待がもてるが、特に注目すべきはSound Motionウーファーだ。構造としては対向配置した2基の振動板を4隅のモーターで駆動するというもので、Sonos Arcの2倍の低音出力を可能にしたという。また、ユニットを上向きや側面に配置し、ビームフォーミング技術によって天井や壁の反射を利用したイマーシブサラウンドを実現したのも特徴となる。

Sound Motionドライバーのイメージ

外形寸法は1,178×110.6×75mm(幅×奥行き×高さ)。ユニット数の増加のためかSonos Arcから36mm幅広になったが、高さは12mm、奥行きは5.4mmサイズダウン。質量も0.35kg減の5.9kgだ。実物はそれなりに大きくて重いので、設置できるスペースがあるかはあらかじめ確認しておきたい。

普段「Sonos Beam(Gen2)」を設置している様子。こちらは「Nintendo Switch」を置く余裕もある
「Sonos Arc Ultra」を設置すると、サウンドバー置き場からはみ出してしまう

セッティングの手順はシンプルで、電源ケーブルとHDMIケーブルを接続したら、あとはアプリからセットアップを進めることになる。

背面の中央に端子部は集中している

すでにSonos Beam(Gen2)で経験済みということもあり、設定はすぐ終わった。ここで重要なのは、部屋の環境にあわせてサウンドを最適化する「Trueplay」機能だ。

部屋に合わせてサウンドを最適化する「Trueplay」機能は必ず実施したい

従来はiOSデバイスに搭載されたマイクを使って測定・調整をしていたが、Arc Ultraでは本体内蔵のマイクを使って測定を行なう「Quicktune」にも初めて対応している。これによりAndroidスマホでも測定ができるようになった、というのがポイントである。

しかし、Quicktuneを試した後に、iPhoneのマイクを使って測定してみたところ、感覚として大きな差があった。もちろんやらないよりは全然良いのだが、もし自分がAndroidユーザーで、家族にiOSユーザーがいるのであれば、借りてでも測定した方がいい。いずれAndroidデバイスのマイクでも測定できるようになるのを待ちたい。

また、今回はワイヤレスサブウーファーの新モデル「Sonos Sub 4」も一緒にお借りしたので、組み合わせたサウンドについても触れておこう。

ワイヤレスサブウーファー「Sonos Sub 4」(109,800円)

さすがは最上位サウンドバー、サラウンド感が明らかに違う

セッティングを終えて試聴を開始すると、まず音の明瞭さがすぐに感じられる。Sonos Beam(Gen2)に比べると音にぼやけがなくなり、セリフもハッキリと耳に届くようになった。邦画では何を喋っているのか聴き取れないシーンがあり、セリフにあわせて音量を上げると爆発音などのSEにびっくりする、ということがよくあるので、この変化はとても嬉しい。

Arc Ultraを設置して色々な映画作品を試聴した

そして、Sound Motionドライバーの低音再生能力が効果を発揮している。この時点ではサブウーファーをオフにしているにも関わらず、相当にパワフルだ。これはSonos Beam(Gen2)だけでなく、他社の単体サウンドバー上級モデルと比べても出ている方だと思う。それもボワンと肥大した低音ではないので、激しいアクションシーンなどでも一音一音にインパクトがある。

ただ、映画では臨場感を高めてくれるこの低音は、地上波放送ではややうるさく感じるかもしれない。たとえば健康飲料のCMにズンズン響く低音が流れていることにArc Ultraで初めて気づいたのだが、正直落ち着かない気分になった。基本的にサウンドバーはテレビと連動してつけっぱなしの人が多いと思うので、普段はイコライザーで低音を抑えることをオススメしたい。

サラウンド感の向上も目覚ましい。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオープニングで、いくつもの時計が映されるシーン。カメラがパンする映像とシンクロして音が流れていくのだが、この音の動きが隙間なく滑らかであることに驚かされる。“画面の外”から「チン」という音がして、パンが焼けたことが伝わってくる。音がテレビ画面のサイズを大幅に飛び超えて、空間から聴こえてくるようだ。

デロリアンが前方から後方に走り抜ければ、音が自分を貫いて通り過ぎていく。自宅の環境では背後にまで音が回り込むというのは難しかったが、イメージとしては耳の10度後ろにまでサラウンド空間が広がっているように感じた。このサラウンド空間の広さは、Sonos Beam(Gen2)から大きくレベルアップしている。

もし後方の再現性が物足りない場合は、“リアル”サラウンドスピーカーとして「Era」シリーズを増設することもできるのも、Sonosの強みだ。同じく拡張性という面では、サブウーファーの追加による効果も大きい。

Sub 4との組み合わせも体験

Sub 4が加わると、単純に大きな低音が出るというものではなく、低音に階調表現がついたような印象を受けた。「ボン」という爆発音があるとして、誇張するなら「ボウンンン……」といったように高解像度に聴こえるといったイメージだ。爆発音1つとってもこれだけ細かく表現される。これが常に続くとなれば、リアリティが高まることは想像してもらえるかと思う。

空間オーディオによる音楽再生も試してみた。まず、単純に音質が良くなっているため、普通にステレオ再生した場合でも、パワフルな低音が下支えする定位感の良いサウンドが楽しめる。これが空間オーディオ音源になると、サウンドバーを中心に奥行きが生まれるイメージで、空間的な広がりが感じられる。

ライブ音源が特にわかりやすく、空間オーディオでは自分が客席にいて、ステージにいるアーティストの奏でる音を聴いているような感じだ。これがステレオ再生になると、平面ではあるが音が前に出てくるので楽しく聴くことができる。音源の相性があるようにも思えるが、それだけ変化が楽しめるということでもあるので、ぜひ色々と聴いてみてもらいたい。

どうせならいきなり最上位モデルを選んだ方がいい

Sonos Beam(Gen2)を導入して、そのサウンドで十分だと思っていたし、事実、これまで上位モデルへの買い替えをしてこなかった。

しかし、今回Arc Ultraを体験して、「やっぱり上のモデルってすごいな」と思い知らされた。もちろん予算の都合や、実際に置けるかどうかなどのハードルはあるだろうが、もし選べるならケチらず最上位をチョイスした方がいい。

取材を終えてSonos Beam(Gen2)に戻したら、これまで満足していたはずなのに寂しさを感じてしまった。

小岩井 博

カフェ店員、オーディオビジュアル・ガジェット関連媒体の編集・記者を経てライターとして活動。音楽とコーヒーと猫を傍らに、執筆に勤しんでいます。