ミニレビュー
「水星の魔女」から入った人も楽しめる?「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」
2025年1月24日 08:30
【ネタバレ注意】この記事では、公式サイトのあらすじに加えて1月20日18時に公開された映像の内容までを扱っています。お気をつけてください。
年齢的な意味でも“やや厄介なガンダムおじさん”と化している友人に「GQuuuuuuXの前売り券を買ったから初日に観に行くぞ」と言われ、公開初日の17日に休暇を取って「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」を視聴してきた。
厄介なおじさん:興味ないと何度も伝えているのに、自分が好きな作品の視聴をしつこく進めてくるおじさんのこと
筆者は、ガンダムシリーズで視聴済みの作品は「水星の魔女」と、上記の友人に見せられた「閃光のハサウェイ」の第1作目くらいというガンダム超ライト層。水星の魔女を視聴した理由も、ダブルヒロインであったことに加えて、「ギルティクラウン」や「甲鉄城のカバネリ」の大河内一楼がシリーズ構成と脚本を担当していたからという理由で、ガンダムシリーズに特別な感情を抱いているわけでもない。
今作GQuuuuuuXについても、スタジオカラーが制作に関わっていて、鶴巻和哉監督のもと、脚本に榎戸洋司&庵野秀明の名があり、おまけにキャラデザは戯言シリーズやポケモンにも関わっている竹と、制作陣に興味がありつつも、「地上波と配信が始まってから観ればいいでしょ」と思っていたし、今でも自分と同じスタンスの人が無理して映画館で観る必要はないと思っている。
しかし、視聴後に真っ先に浮かんだ懸念点が、この内容がそのまま1〜3話だった場合、「【推しの子】」のように初回3話一挙放送しないと、水星の魔女からガンダムを観た人は1話で離脱しそう、ということ。
一方で、後半の内容は筆者のようなライト層が楽しめるだけでなく、件のガンダムおじさん曰く「新しい要素を認められるガンダムおじさんでも楽しめる」とのことだ。
もちろん、「一部話数を劇場上映用に再構築したもの」としているので、必ずしもこの内容が1話〜3話とは限らないので、どうなるのかは地上波放送されるまでわからない。
ここから先についても、水星の魔女から入って、ダブルヒロインものを楽しみたい人の目線で紹介する。筆者はホロライブリスナー(ホロリス)でもあるので、すいちゃん(星街すいせい)が挿入歌を担当することが判明して、「ガンダム観たことないけど楽しめるかな?」と思っているホロリスや星詠み(星街すいせいのファンネーム)にも、参考になれば幸いだ。
「何を観せられているんだ?」エヴァQ初見の感覚がフラッシュバック
21日に公開された映像をガンダムファンが観ると「宇宙世紀の話」であることがわかるらしい。要は「機動戦士ガンダム」第1作目の世界ということだ。通常であればガンプラにも「HG」の付近にUNIVERSAL CENTURYと付くそうなのだが、GQuuuuuuXのガンプラには「HG」までしか表記されておらず、徹底的に隠されていたそうだ。そこまでして隠していた要素を週明けに公式からぶちかましていくんだ…… ちなみにこの話も友人談だ。間違っていたら彼を責めてほしい(Xで引用リツイートなどしてもらえれば本人に見せます)。
そんなわけで映画も赤い彗星の話からスタート。少し古い作品だが、地上波で「喰霊-零-」のアニメ第1話を観た時の唖然とした感覚と「エヴァンゲリオン新劇場版:Q」を最初に観たときの呆然とした感覚が混ざって襲いかかってきたような感覚に陥った。一体何を観せられているんだ?
とくにシャアは、“赤いザク”に乗っていて3倍速い人かつアムロの敵役、くらいの知識しかない。それでもなんとなくこの話が第1作のIFになっているっぽいことだけ察した。なんならアムロも主人公でガンダムに乗ってることくらいしかわからないので、もうノリで観るしかない。
これがTVアニメ第1話として地上波で流れたら筆者でも1話で視聴を諦めてしまう。竹さんキャラデザのダブルヒロインものを楽しみにしてたのに、蓋を開けたら戦争と男の戦いを観せられては詐欺もいいところだ。隣のガンダムおじさんは超楽しそうだけど。
筆者はかろうじてエヴァンゲリオンシリーズを全て視聴していたため、「ああ、この辺エヴァっぽいな〜」「お前赤くなったらまんま2号機じゃねえか」と、別の視点でなんとか楽しんでいた。ほかにも「トップをねらえ!」や「フリクリ」っぽさもあるらしい。この2作は未履修なので筆者にもわからないが……
正直な話をしてしまうと、ダブルヒロインものが好きで観に来て、上記の3作も知らない状況、かつストーリーだけに着目してしまうと前半はかなり辛い時間になると思う。
マチュ&ニャアン、シュウジの登場で“観たかったもの”が始まる
ストーリーラインを語るつもりはないのだが、予告などで登場していたアマテ・ユズリハ(マチュ)、ニャアン、シュウジ・イトウが登場すると、今まで観ていたものはなんだったのかと思うくらい、なにもかもが変わる。同時上映の別作品を観せられているような感覚に陥るのだが、ここからは内容がかなり受け入れやすくなる。
というのも、この作品は劇場版で完結するのではなく、TVアニメの序盤の先行上映。新たな謎が出てくるのは当たり前なわけで、そこにどんどんと引き込まれていく。状況説明もしっかりとあるので、どういった背景なのかわかりやすい。
主人公は女子高生ということで、水星の魔女に近いモノを感じるかと思うが、公式のあらすじに「非合法なモビルスーツ決闘競技《クランバトル》に巻き込まれる」とある通り、水星の魔女の「決闘」とは異なる命の危険が伴う苛烈なバトルになっている。
しかも、何がマチュを突き動かすのか、初っぱなから殺意強めに色々とぶっ放していくので清々しい。このあたりまで来るともう、筆者のようなライト層でも物語の世界に引き込まれて楽しめる。しかもこのタイミングで流れる挿入歌がすいちゃんの新曲「もうどうなってもいいや」だ。
盛り上がる展開に、声と歌い方ですぐにわかるすいちゃんの楽曲。このシーンがホロリスである筆者が最高潮に楽しめたシーンだ。疾走感溢れる曲調に、「大人になりきれない気持ちを歌った」という歌詞も雰囲気がバッチリ嵌っている。赤い彗星に“青いすいせい”をぶつけてきたのも面白い。
この楽曲は3rdアルバム「新星目録」にも入っていない、完全に未発表の曲だ。シングルの発売/配信日もとくにアナウンスされていないことから、「もう1曲あるんじゃないか?」と今後の展開にも期待してしまう。
そして、最近のTVシリーズ先行上映作品のクオリティが高くなっていることで、若干当たり前のようになってしまっているが、作画も素晴らしい。シーンによってまるで別作品かのようになる表現の違いや、舞台ごとの背景表現、1つ1つの細かい部分にも注目してみてほしい。内容に触れられない故、このようなぼんやりとした表現になってしまうが、全体を通して、空気感までしっかり描かれていて、その要素が後半の没入感に繋がっているように思う。
劇場で観ることを強く推奨するわけではないというスタンスは視聴前も今も変わらないのだが、ライト層の人はまとめて観ておいた方が、面白く感じ始めるところまで離脱せずに観られるだろう、というのが筆者の考えだ。マチュとニャアンの活躍や、すいちゃんの未公開曲が気になる人も、きっと視聴後には「面白かった」「続きが気になる」と思えるだろう。
ちなみに宇宙世紀の話も履修済みの“厄介ガンダムおじさん”な友人は、冒頭から最後まで大興奮だったそうで、視聴後も興奮冷めやらぬ様子でパンフレットを開き、「この辺りは本来は〜」と早口で色々語っていた。地上波放送/配信への期待もさらに高まったとのことだ。