ミニレビュー

M3版iPad Airは「性能アップでお得」に

13インチ iPad Air(M3)。価格は12万8800円から。

アップルが先日発売した「13インチ iPad Air(M3)」をチェックしていこう。

iPad Airは昨年5月、iPad Proとともにモデルチェンジしており、その時に詳細なレビューもお届けしている。

今回はその時の印象に加え、筆者が日々使っている「13インチ iPad Pro(M4)」とも比較しながら、新製品の価値を探ってみたい。

13インチ iPad Pro(M4)

プロセッサー変更で

今回の新モデルの変更は、主にプロセッサーを軸にしたものだ。

ご存じのように、アップルは一度デザインを決めるとしばらく同じデザインで製品を作る。今年はデザイン変更のフェーズではなく、状況に合わせたパフォーマンスアップの年ということのようだ。カラーについても、スペースグレイ・ブルー・パープル・スターライトで変更ない。

iPad Air・パープル。本体下面の端子部。ロゴなどはない
iPad Pro。こちらにはロゴがある

プロセッサーは昨年モデルが「M2」(CPU8コア・GPU9コア)から、「M3」(CPU8コア・GPU9コア)に変わった。ベンチマークは最後に掲載する。

iPad Airは、「iPad Proから人気・ニーズの高い要素を集めて、入手難易度を下げたモデル」と定義できる。

P3対応の高色域ディスプレイ・Apple Pencil Proの対応が主軸である。特に昨年モデルからは「13インチ版」が追加された。「大きいサイズが良いがそちらはiPad Proだけ」という状態ではないので、その点も重要だろう。

同じ13インチ版同士で比較すると、iPad Proは21万8,800円から、iPad Airは12万8,800円からで9万円異なる。これはかなり大きな差だ。

もちろん、差はいくつもある。

一番大きいのは発色の違いだろう。

写真は発色をコントロールする「True Tone」をオフにした場合のもの。iPad Proは有機ELを採用、輝度も色温度も高めだが、iPad Airは輝度が低く、色温度も低い。ある意味で「いかにも液晶らしい」色合いと言える。

True Toneをオンにすると色合いは近くなるが、輝度はiPad Proの方が高く、HDRでの色合いが映える。動画をとにかく高画質で楽しむなら、やはりiPad Proの方が良い。

上がiPad Pro、下がiPad Air。精細感は同じだが発色はけっこう違う
iPad Airでの表示。単体でみると決して悪くない
iPad Proでの表示。色温度がかなり異なる

内蔵スピーカーでの音の立体感も、iPad Proの方が上だ。

重さと厚みも違う。厚みにして1mm、重量37gの違いは、手にしてみるとはっきりわかる。

左がiPad Pro、右がiPad Air。厚さは1mm異なる

とはいうものの、そもそもiPad Airの品質が低いかというと、そんなことはない。HDR表現にこだわらなければiPad Proとの差は小さいと感じるし、ウェブなどを表示させた時の差も小さい。解像度・画素密度はProもAirも同じだ。

iPad Airでのウェブ表示。これはこれでかなり見やすい
iPad Proでのウェブ表示。True Toneオフだと輝度・色温度が高め

性能面を比較すると、当然M4搭載のiPad Proが一番速いのだが、iPad Proは昨年モデルが継続販売されている。それに対してiPad Airは、M2モデルと同じ価格でM3になったので、「価格据え置きでiPad Proとの差が縮まった」と言える。

Geekbench 6によるベンチマーク。赤枠内がM3版のiPad Airだが、かなりM4に近づいている

iPadはコンテンツ消費の道具としても優れているが、Apple Pencil Proでイラストを描いたり、動画編集をしたりと幅広い用途がある。「PCやMacでいい」という人もいるだろうが、片手で持って作業できること、屋外でも使いやすいことなど、PCとは異なる、ある種の「機動性」がある。

その点を考えると、iPad Airは「画質やカメラ、ストレージ容量以外の部分での機能」でいえばiPad Proに近く、かなりお買い得という見方もできる。

iPad Airのカメラ部。単眼で12メガピクセル
iPad Proのカメラ部。LiDARとフラッシュを搭載している
iPad Airの電源部には指紋認証機能である「Touch ID」が埋め込まれている

逆に言えば、コンテンツを見るだけではもったいないタブレット……ということも言える。

Magic keyboardは「Air」「Pro」それぞれ専用

なお、今回のiPad Airの発売に合わせ、iPad Air向けのMagic Keyboardが発売された。

左がiPad Air用、右がiPad Pro用Magic keyboard
上がiPad Pro用、下がiPad Air用。カメラが入る切り欠きが異なる

デザインはパームレスト面の素材とカメラ部の切り欠き以外、違いがないように見える。日本語キーボードでは「英数」「かな」が「ABC」「あいう」へと表記が変わっているが、機能自体に違いはない。

他方で、デザインは似ているがiPad Pro版のMagic KeyboardをiPad Airで使うことはできないし、逆もまた無理だ。内部のマグネットが異なるようで、うまくくっつかないのだ。間違えて購入しないようご注意を。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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