ミニレビュー

sMedioのWindows 10音楽プレーヤーを待望していた理由

OneDrive連携が魅力の「sMedio TrueLink+Hi-Res」

 DTCP-IPプレーヤーや、BD/DVDプレーヤーなど、PC向けソフトウェアを展開しているsMedio。そのsMedioの最新製品が音楽プレーヤーの「sMedio TrueLink+Hi-Res Edition」だ。

 Windowsストア経由で販売されるUWPアプリ(ストアアプリ)と呼ばれるWindows 8.1/10で利用できるソフトウェアとなる。sMedio TrueLink+Hi-Res Editionは、既に東芝のWindows PCなどにバンドルされていたsMedio TrueLinkに、ハイレゾ対応機能を追加した市販版となる。

 AV Watchの記事で押していたのは、DSD 11.2MHzやUSB DAC対応といったハイレゾ関連の機能だったが、PC業界を中心に活動する筆者(笠原一輝)の興味はそこではない。筆者的に大注目の機能、それがOneDriveへのダイレクトアクセス機能だ。

sMedio TrueLink+Hi-Res EditionでOneDrive上に保存している音楽ファイルを再生

 sMedio TrueLink+Hi-Res Editionが発売された12月4日、筆者はいち早くこのソフトウェアをWindowsストアで購入した。12月4日~6日は発売記念で通常価格1,500円が100円になっていたからというのも、もちろん大きな理由だが、実は発売を首を長くして待っていたのだ。

音楽は基本クラウドに

 なぜかということを説明するととても長くなるのだが、少々我慢してお付き合い願いたい。

 今年(2015年)の7月29日にWindows 10が正式にリリースされる前、筆者は自分のPCのOSはWindows 8.1だったが、その際は「Xbox Music」というWindowsストアアプリを利用して音楽を再生していた。というのも、Xbox Musicには、Microsoftのクラウドストレージ(オンラインの記憶領域のこと)である「OneDrive」に直接アクセスする機能(以下、OneDriveダイレクトアクセスと呼ぶ)が用意されていたから。これがあると何ができるかというと、PCに音楽ファイルを置いていなくても、ネットワーク経由でOneDrive上に保存されている音楽ファイルを読み込みにいき、ストリーミング再生できるのだ。

 実は筆者は既に、2011年頃からクライアントデバイス(PCやスマートフォン)のローカルストレージに、音楽ファイルを保存しなくなっている。というのも、2011年にGoogleが米国でサービスを始めた、Google Play Music(スタート当時はGoogle Music)を、米国出張時に登録して以来ずっと使い続けているからだ。

 Google Play Musicは現在こそ定額のダウンロードサービスなども用意されているが、スタート当初はいわゆるロッカー型の音楽サービスとしてスタートしており、ユーザーの音楽データをクラウドにアップロード(当初は2万曲、現在は5万曲)して、ストリーミング再生する仕組みになっていた。Google Play Musicが優れているのは、AndroidとiOS向けに用意されているクライアントソフトウェアに、キャッシュ機能が用意されており、必要に応じてよく聞く曲やプレイリストを、クライアントデバイスにキャッシュとして保存しておけることだ。これにより、通信データ量に制限がある環境や、飛行機のようなネットがない環境でも、曲の再生がオンラインの時と同じようにできるのだ。

お気に入りのOneDriveダイレクトアクセス連携。Windows10で……

 ところが、この便利なGoogle Play Musicにも欠点がある。Windows向けのクライアントソフトウェアがないのだ(以前はサードパーティのソフトウェアがあったのだが、Google Play Music側の仕様変更により現在は利用できなくなっている)。このため、Chromeブラウザなどを利用して、常にストリーム再生することしかできず、キャッシュ機能が利用できないのだ(厳密に言えば、Chromeブラウザを利用した場合には、曲をダウンロードできるが、キャッシュではなく、あくまでのダウンロードなので他のプレーヤーを利用して再生しなければならない……)。

 そこで、Windows 8.1時代に前述のXbox Musicを使い始めた。OneDriveへのダイレクトアクセス機能を持っていたため、固定回線があるところではOneDriveにアップロードした曲にアクセスできるし、OneDriveの同期ツールを利用すると、よく聞く曲だけキャッシュとしてPCに保存しておくことが可能だったからだ。これにより、スマートフォンで曲を聴く場合はGoogle Play Musicを利用し、PCで曲を聴く場合はXbox Musicと使い分けることができていた。

 ところが、Windows 10がリリースされ、Windows 8.1からアップグレードした後、Xbox Musicの後継ソフトウェア「Grooveミュージック」で、前述のOneDriveへのダイレクトアクセス機能がサポートされなくなってしまった。厳密に言うと、Grooveミュージックにも、OneDriveへのダイレクトアクセス機能は引き続き用意されているのだが、この機能を利用できるのは、Microsoftアカウント(Windows 10を利用するのに必要なID)の登録が米国地域になっている必要があるのだ。筆者のように日本地域のアカウントを使っているユーザーは、この機能が利用できない。

Windows 10標準の「Groove ミュージック」。日本のMicrosoftアカウントではOneDrive上のファイルが再生できない

 Windows 8.1で普通に使えていた機能がWindows 10になって使えなくなるとか、“なにしてくれてんねん”と、Microsoftに言いたいわけだが、使えないものは使えないので、何か別のソリューションを考えないといけないと模索していた。その時にある発表会で紹介されていたのが「sMedio TrueLink+Hi-Res Edition」。OneDriveへのダイレクトアクセス機能があるとされていたので、そのリリースを首を長くして待っていたのだ。

sMedio TrueLink+Hi-Res Editionを利用してOneDrive上の音楽ファイルを直接再生

 sMedio TrueLink+Hi-Res Editionは、ローカル、ないしはネットワーク上(ホームネットワークとOneDrive)にあるメディアファイル(音楽、静止画、動画)をブラウズして、それを再生するソフトウェアだ。

 それに加えて、ハイレゾ音源配信サービス「e-onkyo music」で購入したハイレゾ音源を直接ダウンロード/再生する機能も用意している。

e-onkyo musicの[マイページ]で発行される認証キーを入れると、購入したファイルを直接ダウンロードできる

 さて、筆者が最も熱望していたOneDriveへのアクセス機能だが、最初にOneDriveのアカウントとの紐付け作業が必要になる。それが終わると、左上に表示されるアイコンをクリックすると、ローカル以外の選択肢として"OneDrive"が表示されるようになる。すると、音楽、ビデオ、写真、フォルダという4つの選択肢が表示される。

 音楽、ビデオ、写真は、ライブラリ全体をブラウズしてファイルを探してくれる機能だが、筆者のOneDriveは既に写真や音楽ファイルなどで400GB近くのファイルがあがっており、ファイル数も膨大になっている。このため、結構待ってみたのだが、ファイルの検索が終わらなかった。ファイル数が多い場合にはおそらく同じような状況になると思うので、フォルダという項目を利用してフォルダ単位でブラウズしていく方が現実的だろう。

フォルダのブラウズ機能を利用すると、OneDrive上に保存してあるファイルをフォルダ単位で探すことができる

 筆者のライブラリは、元々はiTunesを利用して構築したもので、フォルダの階層はアーチスト>アルバムとなっている。アルバム単位のフォルダまで降りていき、曲のファイルをクリックすると再生が開始され、その後はフォルダにある曲が全部再生される。1曲だけ再生、リピート再生、ランダム再生などができる。ただし、フォルダのある階層を横串で再生とかの機能はない。例えば、あるアーチストのフォルダにあるアルバムを全部再生するといったことは、現在のバージョンではできない。将来のバージョンではぜひ対応して欲しい。

再生している様子
ストリーム再生している証拠に、Wi-Fiをオフにすると再生が途切れる
種類別のブラウズ機能は、OneDriveにファイルが多数あるとなかなか終わらない。フォルダブラウズ機能を使うほうがよい

プレイリスト同期対応を希望。Groove MusicもOneDrive対応を!

 曲を再生していると、"ダウンロード"というボタンが用意されている。これはもしかしてキャッシュ機能かと思ったのだが、このダウンロードを選ぶと、文字通りダウンロードされ、Windows 10標準のミュージックフォルダ(C:\Users\[ユーザー名]\Music)にダウンロードされる。ただダウンロードされるだけなので、フォルダ構成などは維持されない。OneDriveの曲をキャッシュとしてPCに保存したいのであれば、OneDriveの同期ツールを利用してフォルダ単位でPCに保存した方が使い勝手が良い。この方がフォルダ構造なども維持されるので、整理もしやすいし、必要がなくなればフォルダ単位で同期をオフにできるので、より便利だろう。

OneDriveの同期ツールを利用して、ローカルのストレージにキャッシュしておいたファイルはローカルの再生機能を利用して再生できる

 ただ、筆者的に1つだけ課題となっているのは、現状OneDriveに音楽を保存すると、プレイリストの仕組みが用意されていないことだ。例えば、Google Play Musicでは、iTunesで作ったプレイリストをクラウドへアップロードする時にGoogle Play Musicのプレイリストに変換してアップロードしてくれる。このため、デスクトップPCで使っているiTunesプレイリストがそのまま使えて便利なのだが、OneDriveにはそうした仕組みは用意されていない。このあたりは、Microsoft純正のGrooveミュージックで、日本でもOneDriveへのダイレクトアクセス機能がサポートされるのを待つ必要があるだろう。

 フォルダ単位の横串再生など、sMedio TrueLink+Hi-Res Editionにもいくつかの課題はあるものの、「OneDriveへのダイレクトアクセス」という点において、Grooveミュージックに比べて圧倒的に便利だ。筆者と同じような不満を持っているのであれば、sMedio TrueLink+Hi-Res Editionは試してみる価値があるはずだ。

笠原一輝