レビュー
高音質でコスパ最強!? JBLなのに実売3,300円から“Essential”とは何か
2022年7月21日 08:00
値上がりが相次ぐオーディオ業界
円安の影響で様々な製品が値上がり。AV機器も例外ではなく、「買おうか悩んでいたら手が届かなくなっていた」なんて事も。消費者としては、今まで以上にコストパフォーマンスに注目し、賢い商品選びをしたいものだ。
しかし、AV機器の場合“コスパの追求”が結構むずかしい。通販サイトで“安い順”に並べて、名前を聞いたことがないメーカーのスピーカーを買ったが、音がショボくてガッカリ……だと、買った意味がない。もちろん、有名オーディオメーカーの最新モデルを買えば間違いない……のだろうが、それは高価で手が出ない。“ちょうどいい製品”を選ぶのは、結構ハードルが高いのだ。
そこで注目の“製品ライン”がある。あのJBLから販売されている“Essential”という名前の製品ラインだ。結論から言えば“安くて音が良い、コスパ最強スピーカー”だ。
Essentialラインとは何か
JBLは現在、Bluetoothスピーカーとして小型の「GO」と「CLIP」、ペットボトルサイズの「FLIP」、モバイルバッテリー機能搭載の「CHARGE」、カラフルに光る「PULSE」、大音量再生できる横型の「EXTREME」、さらに大型サイズの「BOOMBOX」というシリーズを展開。各シリーズで世代を重ね、音質や機能を充実させている。
例えば「GO」シリーズの現行モデルは「JBL GO3」で価格は5,280円。しかし、GoのEssentialラインである「GO Essential」の価格は3,300円と、かなり安い。
見た目で比べると、GO3とGO Essentialはデザインが違うのがわかる。GO Essentialは、GO3よりも1世代前の「GO2」(4,268円)をベースにして開発されたもので、それゆえ、価格を抑えられている……というわけだ。
「なんだ、古いモデルを名前だけ変えて低価格ラインとしてラインナップしているだけか」と思われるかもしれないが、そうではない。ここにEssentialラインの“面白さ”がある。
大きな特徴は以下の3つ。
- 旧製品の金型やテクノロジーを活用してコストダウン
- 音質など、スピーカーとして重要な部分にコストを集中して強化
- 激安ながら、老舗オーディオランドならではのクオリティと品質
具体的に「GO Essential」、「Charge Essential 2」、「FLIP Essential」の3製品について、“ベースとなったモデル”と“Essential”の違いを見ていこう。
モデル名 | JBL GO2 | JBL GO Essential | JBL GO3 |
出力 | 3.1W | 3.1W | 4.2W |
再生時間 | 5時間 | 5時間 | 5時間 |
防水対応 | IPX7防水 | IPX7防水 | IP67(防塵防水) |
Bluetooth | 4.1 | 4.2 | 5.1 |
内蔵マイク | あり | なし | なし |
ユニット径 | 40mm | 40mm | 43×47mm |
USB端子 | microUSB | microUSB | USB-C |
実売 | 4,268円 | 3,300円 | 5,280円 |
表で見比べるとわかりやすいが、GO Essentialは、前世代のGO2とまったく同じ仕様ではない。ユニットや出力、内蔵バッテリーでの5時間再生などは同じだが、Bluetoothのバージョンが4.1から4.2に進化、一方でマイクは省かれている。そして、価格もGO2よりも安くなっている。
また、GO3が新製品らしく充電用USB端子にUSB-Cを採用しているのに対し、前世代のGO2はmicroUSBであり、そのGO2と同じプラットフォームの製品であるGO EssentialもmicroUSBとなっている。
つまり、GO Essentialは、GO2の“名前を変えただけのモデル”ではなく、GO2のプラットフォームを使う事でコストを抑えながらも、まったく新しい製品として開発し、進化できるところは進化。内蔵マイクなど、「便利ではあるけど、Bluetoothスピーカーとして全ユーザーが使うものでもないよね」的な機能は大胆にカット。“Bluetoothスピーカーとしてのベーシックな機能”に注力する事で、大幅な低価格化を実現した製品というわけだ。
「Charge Essential 2」も見てみよう。
モデル名 | JBL Charge 4 | Charge Essential 2 | JBL Charge 5 |
出力 | 合計30W | 合計40W | 合計40W |
再生時間 | 20時間 | 20時間 | 20時間 |
防水対応 | IPX7防水 | IPX7防水 | IP67(防塵防水) |
Bluetooth | 4.2 | 5.1 | 5.1 |
Partyboost | ◯ | × | ◯ |
JBL APP | ◯ | × | ◯ |
内蔵マイク | あり | なし | なし |
端子 | microUSB、AUX | USB-C | USB-C |
実売 | 16,368円 | 14,800円 | 17,600円 |
Charge Essential 2(14,800円)のベースとなるのがJBL Charge 4(16,368円)だが、出力は30Wから40Wへと強化。Bluetoothのバージョンも4.2から5.1へと進化している。充電用のUSB端子はどちらもUSB-Cだが、外部入力端子のAUX入力がCharge Essential 2では省かれている。
様々な設定が可能なアプリとの連携と、複数台のスピーカーを連携させて再生する「パーティーブースト」機能もCharge Essential 2では省かれた。その代わりに、約2,000円低価格になっており、最新世代のCharge 5と比べると約3,000円低価格だ。
ペットボトル程度のサイズが使いやすい「FLIP Essential」も比較する。
モデル名 | JBL FLIP4 | JBL FLIP Essential | JBL FLIP6 |
出力 | 8+8W | 8+8W | 20+10W |
再生時間 | 12時間 | 10時間 | 12時間 |
防水対応 | IPX7防水 | IPX7防水 | IP67(防塵防水) |
Bluetooth | 4.2 | 4.1 | 5.1 |
ユニット径 | 40mm×2 | 40mm×2 | 45×80mm、16mm |
内蔵マイク | あり | なし | なし |
JBL APP | JBL Connect+ | × | JBL PORTABLE APP |
端子 | microUSB | microUSB | USB-C |
実売 | 12,880円 | 7,700円 | 12,100円 |
FLIP Essential(7,700円)のベースモデルになるのが、FLIP4(12,880円)。出力は8+8W、内蔵ユニットは40mm×2で共通だが、FLIP Essentialの音はブラッシュアップされており、FLIP5、FLIP6の開発で培った知見を投入し、再チューニングを施しているという。
内蔵バッテリーの再生時間がFLIP4の12時間に対し、FLIP Essentialの方が10時間と少し短い。マイクも省かれているほか、アプリ「JBL Connect+」との連携もFLIP Essentialは非対応だ。充電端子はどちらもmicroUSBで、最新のFLIP6がUSB-Cを採用している事と比べると、1世代前のプラットフォームだとわかる。
だが、FLIP Essentialの実売は7,700円で、12,880円だったFLIP4や、12,100円のFLIP6よりも約5,000円も安い。これは大きな魅力だろう。
GO Essentialは、ブラックがAmazon限定、ブルーとレッドが直販限定でJBLオンラインストア、JBL公式楽天市場店、JBL公式PayPayモール店、JBL Store横浜での販売となる。
Charge Essential 2は直販限定のみで、JBLオンラインストア、JBL公式楽天市場店、JBL公式PayPayモール店、JBL Store横浜で販売。そして、FLIP EssentialはAmazon限定販売となっている。
3機種のEssentialを見ていくと、いずれもBluetoothスピーカーとして一番重要な音質の部分はベースモデルを活かしたり、さらに進化させているのがわかる。その一方で、通話用マイクや、アプリ連携など、「あれば嬉しいけど、まぁ無くても別にいいかな」的な機能を省いているのがわかる。
さらに、Essentiaラインは製品パッケージにプラスチックを使わず、紙素材とし、エコにも配慮しているそうだ。Bluetoothスピーカーの世界シェア50%を誇るJBLは、累計出荷台数も1億7,000万台と桁違いに多いので、細かいポイントではあるが、環境負荷低減には大きな意味がある。
GO Essential
では、スマホとペアリングして、この3モデルの実力を体験しよう。
まずは手のひらサイズの「GO Essential」から。前面のグリル部分にJBLロゴが大きく描かれており、背面にもしっかりJBLロゴ。デザイン性が高いだけでなく、可愛さも感じさせる。
最大の特徴は86×71.2×31.6mm(幅×高さ×奥行き)という小ささと、約177gの軽量さだ。ズボンのポケットはもちろん、頑張ればワイシャツの胸ポケットにも入るんじゃないかというくらい小さい。
このサイズであれば、書斎からリビング、お風呂場など、いろいろな場所に気軽に持ち運べる。旅先に持参して、ホテルの部屋で音楽を流したり、公園でランチしながら再生みたいな使い方も可能だ。
問題は、このサイズでまともな音が出るか? だが、スマホのAmazon Musicアプリで「コールドプレイ&セレーナ・ゴメス/Let Somebody Go」を再生すると、ゆったりとしたムーディーな中低音が厚めに出てきてぶったまげる。
普通、このサイズのスピーカーは中低音がまったく出ず、ハイ上がりの“スカスカ”した音になってしまうのが普通だ。しかし、GO Essentialではベースのグォーンという低音がしっかり感じられて、バランスの良いサウンドが再生できている。ちょっとした魔法を見ているようだ。
秘密は、このサイズながら40mm径と大口径のフルレンジスピーカーに加え、パッシブラジエーターまで内蔵している事。よくこの筐体に搭載できたものだ。もちろん、このサイズなので地鳴りのような低音は出ない。しかし、サイズを超えた低音が出ているのは事実だし、なにより全体のバランスが非常にうまくチューニングされており、不自然さが無い。
さらに驚くのはボリュームを上げていっても、このバランスの良さが維持され、中高域のクリアさ、音のシャープさが変わらないところだ。小さなスピーカーの場合、大音量になると筐体が振動に負けて、盛大に“鳴いて”しまい、筐体の響きが再生音を汚してボワボワした音になってしまう製品が多い。しかし、GO Essentialは部屋に充満するような音量まで上げても「ぜんぜん余裕っすよ」みたいな顔でボーカルやコーラスをシャープに描写してみせる。
試しにシャワーを浴びがてら浴室で聴いてみたが、しっかりした音量が出せるため、シャンプーをシャワーで洗い流している最中でもしっかり音楽が耳に入る。この鳴りっぷりの良さ、クリアさ、タイトで迫力のある低音などは、まさにJBLらしいサウンド。手のひらサイズでも“JBLの音”を楽しませてくれるのは見事だ。しかも3,300円なので、満足度は高い。
Charge Essential 2
“小さいけれどスゴい音”に驚かされたので、次は大きな「Charge Essential 2」を聴いてみよう。大きいと言っても外寸は220×93.4×96mm(幅×高さ×奥行き)、重さは930gなので、片手でひょいとつかんで別の部屋に持っていける気軽さは維持している。絶妙なサイズ感と言えるだろう。
楕円形ウーファー×1、ツイーター×1に加え、パッシブラジエーター×2も搭載するだけあり、低域の再生能力は圧巻。「機動戦士ガンダムUC」サントラから、オーケストラによる「MOBILE SUIT」を再生すると、文字通り“腹に響く低音”がズンズンと押し寄せてくる。
出力が40Wに強化された事もあり、10畳の部屋に音を充満させるパワーを持っている。アパートやマンションの場合は、「隣の家から何か言われるかも」と心配になるほどの音が出せる。片手で持てるサイズでこのパワーはとにかくすごい。
パワフルなだけでなく、低音のキレも良い。ボワボワした不明瞭な音ではなく、楽器の輪郭がしっかり見えるシャープな低音だ。聴いていると心地良いので、ついボリュームを上げてしまうが、それでも音が破綻しない。
秘密は、本体を手に取るとわかる。筐体両側面に搭載しているロングストロークのパッシブラジエーターが、ものすごい勢いで振幅しているのが目に見えるのだが、筐体に触れると、ボディ自体はほとんど振動していない。両端に搭載する事で、余分な振動を打ち消し合っているのだろう。これが、ボリュームを上げていっても、音の明瞭さが低下しない理由だろう。
また、底部にしっかりしたゴム足が用意されているのも良い。机などに設置した時に、安定するだけでなく、筐体の振動をしっかり吸収して、机に振動を伝えない。これにより、大音量再生でも机が鳴いて、机自体の音が音楽を汚すことがない。クリアなサウンドには、こうした細かな配慮も寄与している。
これだけの音が出せるので、音楽だけでなく、映画やゲームをプレイする時にも使える。スマホのNetflixアプリで「シン・ゴジラ」を見てみたが、映画ならではの重厚なBGMや、自衛隊がゴジラにヘルファイアや戦車の主砲を打ち込む時の爆発音など、迫力のサウンドが映画の魅力を引き立ててくれる。ぶっちゃけ、そこらへんのサウンドバーに負けていない。
スマホの小さな画面で映画を見ると、どうしても世界に入り込めず、“内容の確認”になってしまうものだが、音がリッチになると、一気に映画の世界に没入できる。映画を見る事自体がグンと面白くなる。
Essentialラインは、Bluetoothスピーカーとしてベーシックな機能に注力しているが、このCharge Essential 2は大容量バッテリーを搭載している事を活かし、スマホなど、別の機器を充電する機能も備えている。
IPX7防水でもあるので、例えばアウトドアのキャンプなどをする時に、BGMとして音楽を再生させつつ、スマホを充電する……デジタル機器の“母艦”のような役割も果たしてくれるだろう。この“頼りになる相棒感”で14,800円は、確かに安い。
FLIP Essential
FLIPシリーズは、JBLのBluetoothスピーカーを代表するモデルであり、同時に、Bluetoothスピーカー市場を代表するモデルと言っていい。サイズはGO EssentialとCharge Essential 2の中間で、外寸は64×169mm(直径×高さ)、重量は470g。350mlペットボトルのような感覚で扱えるスピーカーだ。
「コールドプレイ&セレーナ・ゴメス/Let Somebody Go」を再生すると、GO Essentialの低音を遥かに超える、音圧豊かなベースが「ズズン」と押し寄せてくる。空間をパワフルに振動させるエネルギーに満ちた低音に押されて、肺を圧迫されるような迫力を感じる。Charge Essential 2の低音にも驚かされたが、「このサイズでこんな低音が出せるの!?」という驚きは、FLIP Essentialの方が上だ。
「藤井風/まつり」も、ベースやドラムの迫力が心地よい楽曲だが、FLIP Essentialでは「ズシン」と深く沈む低音が音楽全体をしっかり下支えし、その上にボーカルやギターやコーラスが展開、笛の鋭い高音が広大な空間にどこまでも広がっていく。音楽がどのように構成されているかが目に見えるようで、楽曲の旨味がしっかりと味わえる。
Charge Essential 2と同様に、ボリュームを上げてしまうが音が破綻しない。この製品も筐体の両端にロングストロークのパッシブラジエーターを搭載しており、それが低音を増強しつつ、両端に配置する事で余分な振動を打ち消し合い、音の明瞭度が低下する事を防いでいる。
なお、FLIP Essentialは本体に紐がついているので、落下防止で手首に通して持ち運んだり、ちょっとした場所に本体をくくりつけてぶら下げて使う事もできる。部屋の少し高い位置に設置すると、部屋全体に音楽が充満し、360度スピーカーのように使うこともできる。使い勝手とともに、活用シーンが多いスピーカーと言えるだろう。
低価格ラインのモデルとはいえ、“FLIP”の血筋である事を実感させる完成度の高さ。この音と、使いやすさで7,700円は、はっきり言って“激安”だ。
高音質で使い勝手が良く、完成度が高い。コスパ最強の3機種
音質に関しても、3機種すべてが想像以上のサウンドで、このサイズから想像できない低音再生能力があり、非常に“鳴りっぷり”が良く、聴いていて気持ちが良い。それでいて、ボワボワ、ドンドンと膨らむだけの不明瞭な低音ではなく、情報量の多さ、タイトさを兼ね備えている。それに負けない中高域のクリアさも当然確保されており、気持ちが良いだけでなく、しっかりとした実力を持っているのが好印象だ。
もちろん、安いので我慢する部分もある。前述の通り、アプリで何かを調整したり、複数台を連携させて鳴らす事もできない。ただまぁ、音に何かの不満はないし、そもそも複数台持ってないしという人が大半だと思われるので、このあたりの付加価値は無くても個人的には気にならない。
最大のネックは、GO EssentialとFLIP Essentialが、プラットフォームが古いので充電がmicroUSB端子という部分。USB-Cにしてほしかったというのが正直なところだが、microUSBのケーブルは本体に付属しているので、充電自体は問題なくできるし、スマホのように毎日充電するものでもないので、使っているとあまり気にならなくなる。USB-Cになっていたら、価格もここまで安くならないと思われるので、このあたりは割り切りも必要だろう。
3機種を使っていて感じる共通の特徴は、“安いのに全体としての完成度が高い事”だ。前述のように音質が良いだけでなく、本体の持ちやすさ、質感の高さ、ボタンまわりの操作性、設置した時の安定感など、様々な部分にクオリティの高さを感じる。このため、“安かろう悪かろう”感はまったくない。このあたりは、Bluetoothスピーカーのトップシェアブランドらしい貫禄を感じる。JBLのサウンドと安心感の両方を低価格で入手できる事が、Essentialライン最大の魅力だ。
(協力:ハーマンインターナショナル)
JBL GO ESSENTIAL ブルー/レッド(JBL公式楽天市場店)
JBL GO ESSENTIAL ブルー/レッド(JBL.com)
JBL GO ESSENTIAL ブルー/レッド(JBL公式 PayPayモール店)