レビュー
「一生モノのオーディオ!」私がアキュフェーズのE-700プリメインアンプを推す理由
2024年6月13日 08:00
音楽とオーディオが好きになってしまい、シニア世代になった現在もオーディオ熱が冷めやらぬ私は、オーディオファイル=オーディオマニアを自認している。今年の5月8日~12日は、AVCATを主宰する大嶽クンと一緒にドイツのミュンヘンで開催された「HIGHEND2024」という、ピュアオーディオに特化した世界最大のオーディオショウに出かけていた。日本のfinalや韓国のAstell&Kernなど、ヘッドフォン&イヤフォンやポータブルオーディオも見かけたけれども、オーディオショウのメインはなんといってもスピーカーやアンプ、プレーヤーなどの本格的オーディオコンポーネントなのである。
さて、ここでは「一生モノのオーディオ!」と題して、音質と内容がともに充実している本格派のオーディオ機器を紹介していきたい。トップバッターで登場いただくのは、純A級プッシュプルのハイエンドなプリメインアンプ・アキュフェーズ「E-700」である。価格は946,000円という、かなり高価なプリメインアンプ。だけれども「一生モノのオーディオ!」としての価値が大いにある逸品なのだ。
アキュフェーズは1972年6月1日に設立された、日本を代表するオーディオメーカー。今年で創立52周年を迎えた老舗企業である。オーディオメーカーのトリオ(現在のJVCケンウッド)に在籍していた有志が、本物志向のオーディオ機器を造りたいという情熱からスピンアウトして設立されたという経緯がある。当初は社名がケンソニック株式会社でブランド名がアキュフェーズだったが、創立10年目の1982年にはブランド名と商号を統一してアキュフェーズ株式会社になった。
デビュー作はプリアンプ「C-200」とパワーアンプ「P-300」、そしてFM/AMチューナーの「T-100」。そう、アキュフェーズは現在もFMチューナー(T-1200=44万円)をラインナップしている稀有なオーディオメーカーだ。
CDプレーヤーの分野に進出したのは1986年から。スーパーオーディオCDを推進している同社は現在、セパレート機と一体型機(2モデル)のSACD/CDプレーヤーに加えて、CD再生専用の1モデルもラインナップ。いずれもUSB-B端子を搭載しているので、ハイレゾ音源の再生も可能になっている。
プリメインアンプに関しては、2023年10月の総合カタログを見ると価格順に以下の6機種がラインナップされている。
- 「E-5000」(AB級) 104万5,000円
- 「E-800」(純A級) 113万3000円
- 「E-650」(純A級) 83万6,000円
- 「E-4000」(AB級) 69万3,000円
- 「E-380」(AB級) 52万8,000円
- 「E-280」(AB級) 39万6,000円
この「一生モノのオーディオ!」で紹介していくE-700は、「E-650」の後継機種となる純A級プッシュプルの新製品プリメインアンプ。E-650は7年前の2017年に発売されたロングセラー機で、E-700が登場することで製造を終えている。アキュフェーズはおおむね5年~7年のスパンで新技術を盛り込んだ製品を発表していくらしく、E-700は現時点で同社最新のプリメインアンプということになる。E-700の発売は2024年4月から。私は3月の後半にアキュフェーズの試聴室でE-650とE-700を比べながら音を聴くことができた。
E-700は純A級プッシュプルのプリメインアンプで、その出力は35W+35W(8Ω負荷)。4Ω負荷では70W+70W、2Ω負荷は140W+140Wと、理論値通り倍々になるパワーを実現している。これは強固な電源部を搭載している証でもある。ダンピングファクター値は1,000という高性能ぶり。純A級のアンプはオーディオマニア層を中心に高い人気を誇っているけれども、実のところ世界的にはマイノリティ(少数派)な存在なのである。
アキュフェーズはA-300(モノーラル・パワーアンプ)とA-80(ステレオ・パワーアンプ)、そしてA-48(ステレオ・パワーアンプ)を加えて、合計5機種もの純A級プッシュプル機をラインナップしているが、たとえばラックスマンは「L-595A LIMITED」の1機種のみで、それも製造完了になってしまった。
純A級プッシュプルアンプとは
ところで、純A級プッシュプルとはどんなものだろうか?
半導体(トランジスター)増幅のアンプでは、プラス(プッシュ=押す側)の波形とマイナス(プル=引く側)の波形に、コンプリメンタリー(対称的な動作を行う)なペアの出力素子をあてがった、AB級プッシュプルの構成が一般的。バイポーラ・トランジスターではNPNとPNPの極性、MOS-FETではNチャンネルとPチャンネルの極性で、オーディオ用の半導体ではメーカー推奨のコンプリメンタリー素子がある場合が多い。
AB級プッシュプルはB級プッシュプルをベースにしており、僅かな領域だけをA級動作にすることで、小音量時にプラス波形とマイナス波形が交差するポイントでタイミングのズレなどによるクロスオーバー歪の発生を抑えている。だから、AB級といわれるのだ。B級をベースにしていると述べたけれども、私はオーディオ用アンプで純B級プッシュプルというのは見たことがない……。
これに対して、純A級のプッシュプル動作では、コンプリメンタリーな出力素子がプラス波形とマイナス波形を分別することなく増幅していく。こうすることでクロスオーバー歪の発生が出力値に関わらずなくなるのだが、音声信号の有無に関わらず常に定格出力までの電流をアンプ(出力素子)が消費していくことになる。結果として、純A級アンプはAB級アンプのように出力に応じて消費電力が増減することはなく、一般論として消費電力が大きい。
E-700の無信号時の消費電力は178Wである。定格出力よりも低い時や無信号時にはそのぶんが熱として消費されていくため、MOS-FET出力素子やヒートシンクが熱くなってしまう。だから、E-700のような純A級プッシュプル機を部屋に設置するときは、本体の熱が内部にこもらないよう放熱に配慮しなければならない。私の経験では、オーディオラックの最上段に置くのが最善策だと思うのだが。
オーディオファイルから純A級アンプが支持されるのは、純A級のアンプに得難い音質的な魅力があるからだろう。アキュフェーズは純A級プッシュプル機の出力素子にパワーMOS-FETを採用しており、AB級プッシュプル機ではバイポーラ・トランジスターを出力素子に使うというふうに分けている。
MOS-FETは真空管の音質傾向に近いと言われており、加えて純A級によってNチャンネルのMOS-FETとPチャンネルのMOS-FET素子が同時に動作することによる、独特の音の滑らかさや厚みが好まれているのだと思う。個人的にも、MOS-FETの出力素子は音の柔らかさの表現に長けているという印象がある。
一方、バイポーラ・トランジスターの出力素子は、音の鮮明さやメリハリの表現が得意なようだ。オーディオアンプにも効率の高さが求められる時代にあって、純A級はその正反対に位置する効率の低い古典的な増幅形態といえる。しかしながら、オーディオアンプの主目的が良質な音を得ることだと考えれば、純A級アンプの存在は輝かしく際立ってくるのだ。
独自のAAVAがポイント
話を変えよう。驚かれるかも知れないが、アキュフェーズのアンプには、抵抗タイプのボリューム素子が存在しない!
プリメインアンプやプリアンプには音量調節の機能が必ずあるもので、一般的にはボリュームIC(たとえば内部は抵抗ラダー型でコントロールが電子式)や、固定抵抗器を組み合わせる固定抵抗マトリクス方式、そしていわゆる「回転ボリューム」の連続可変抵抗器を使う、という場合がほとんどだ。
しかし、アキュフェーズは違う。
同社技術陣は2002年のプリアンプ「C-2800」から、独自のAAVA(アキュフェーズ・アナログ・バリ-ゲイン・アンプリファイア)という独自の音量調節回路を開発して、それを進化させてきた。
AAVAでは、音声信号が可変抵抗器を経由することなく、すべてアナログ領域のままでの音量調節が可能になっている。世界中のオーディオメーカーを見渡しても、こんな画期的な音量調節回路を搭載しているのはアキュフェーズだけ。どうやら、AAVAはアキュフェーズの特許技術らしいのだが……。
AAVAの仕組みは複雑そうに見えるが、理論的にはいたってシンプル。入力された音声信号(電圧信号)は、まずV/I(電圧/電流)変換回路を経由して電流信号になる。ここで1/2から1/65536の異なる16種類の電流信号に変換され、16個の電流スイッチでそれらを組み合わせてI/V(電流/電圧)変換を行ない、電圧信号へと戻すのだ。
これで抵抗器による熱雑音成分から回避でき、しかも左右のレベル偏差が皆無な(音量調整済みの)音声信号が得られる。基本的にAAVA回路はシングル構成なのだが、E-700プリメインアンプや前作のE-650プリメインアンプでは、左右の各チャンネルをバランス(2回路構成)にしたバランスドAAVAを採用することで、さらなる雑音成分を相殺した音声信号を獲得している。
AAVAの回路基板は最初のC-2800ではかなり大きかったが、設計ノウハウが蓄積された集積化により、現在はコンパクトに仕上がっている。
そしてE-700プリメインアンプで付け加えたいのは、AAVAのI/V(電流/電圧)変換回路に、これもアキュフェーズが独自開発した歪成分の低減技術であるANCC(アキュフェーズ・ノイズ・アンド・ディストーション・キャンセリング・サーキット)が加えられたことだ。
ANCCは、メインのアンプ回路に雑音と歪を打ち消す効果があるサブアンプを加えたものだ。これもAAVAと並び称されるくらいの巧妙な回路であり、アキュフェーズの特許技術なのである。
アキュフェーズが公表しているANCCの利点として、全高調波歪率の向上が挙げられる。表を見ると、1kHzの信号においてANCC回路が出力電圧1V以上のところから大きく効いているのがわかる。
ANCC回路は前作のE-650プリメインアンプの開発時点ではまだ発明されていなかった。音量調整回路のAAVA回路にANCC回路を加えるという踏み込んだ手法は、E-700プリメインアンプを開発する起爆剤にもなったに違いない。ちなみに、上位機のE-800プリメインアンプにもANCC回路は使われていない。
もういちど、純A級プッシュプル動作に話を戻そう。E-700プリメインアンプではスピーカーを駆動する電力を発生させるのに、パワーMOS-FETの電力出力段を採用しているということは述べた。これは前作のE-650プリメインアンプでも同じである。
ただし、そのプッシュプル構成がE-650では3パラレル(並列に3組)だったのに対して、新製品のE-700では4パラレル(並列に4組)に増強されている。これは得られるパワーの違いにあらわれている。
E-650の3パラレル・プッシュプルから4パラレル・プッシュプルに強化されたE-700では、出力の増大と同時にアンプとしての出力インピーダンスがE-650よりも低くなるというメリットを獲得した。使われているパワーMOS-FETの素子であるが、前作のE-650とE-700は同じビシェイ製(Vishay Siliconix)によるコンプリメンタリー素子のようだ。旧IR社(インターナショナル・レクティファイアー)の流れを汲んでいる、定評あるパワーMOS-FET素子である。
新鮮味の溢れる力強い音
さて、E-700プリメインアンプの音である。前述しているが、私はアキュフェーズの試聴室で音を聴いている。この試聴室は2020年の6月末に完成したもの。手掛けたのはスタジオの設計や施工、そしてパーソナルなリスニングルームのデザインにも定評がある「日本音響エンジニアリング(株)」である。アキュフェーズの試聴室は、彼らのWebサイトで詳しく紹介されている。
この試聴室には英国B&Wの「800D3」と英国ファインオーディオの「F1-12S」が置かれている。私が試聴に使ったのはB&Wのほうである。ファインオーディオの音も魅力的なのだが、音のモノサシという観点から私はB&Wを選んだ。アキュフェーズには、開発陣が毎日のように使っている製品開発用の試聴室もある。
私は自分の試聴音源をUSBメモリーに収めて持参した。それを試聴室にあるfidata AS1のミュージックサーバーに移し、fidata AS1とアキュフェーズが誇る最高峰の単体DACである「DC-1000」をUSBケーブルで接続。そこからのバランス出力をE-700プリメインアンプのバランス入力に接続するというバランス伝送で聴くことにした。試聴音源の選択に使ったのは、iPadの「fidataアプリ」である。
最初に耳の感覚を慣らす目的も兼ねて、試聴音源をすべてE-650プリメインアンプで聴き、それから新製品のE-700プリメインアンプで試聴音源を聴いた。電源周りやケーブル類は同じなので、きわめてフェアな比較試聴環境でもある。試聴音源はCDリッピングの44.1kHz/16bitから、352.8kHz/24bitのPCM(FLAC)フォーマットである。
E-650とB&Wのモニタースピーカーとの組み合わせも素晴らしく感動的な音を聴かせてくれたが、新しいE-700プリメインアンプは回路技術の進化と4パラレル構成のMOS-FETプッシュプルという強化策が音にストレートに反映されていると実感させる、実に新鮮味の溢れる力強い音で私を魅了した。
AAVA音量調節回路は、音量を絞りこんでも音の解像感が失われないという特徴がある。それはE-650で試聴音源を聴いていてもハッキリと判るのだが、E-700ではANCC回路が加わったことで更に性能アップしているようだ。
試聴音量を絞っても音粒がシッカリと立って音像描写の立体感がまったく失われない。音量の大小に関わらずに音離れの良さがじゅうぶんに得られているし、情報量も損なわれないのだ。
たとえば、ヴァイオリン奏者ネマニャ・ラドゥロヴィチのアルバム「ルーツ」からの「マケドニアの娘」では、E-700プリメインアンプは柔らかさや繊細さを感じさせるヴァイオリンの複雑で悲哀がこもった音色を引き立てながら、徐々に壮大さを増してくる演奏が見事だ。
激しくパルシヴな和楽器の演奏が心地よい和楽器集団WASABIの新作「ビーミング」からの「刹那、その手を握れ」は、ダイナミックな太鼓や津軽三味線の音色に隠れがちになる琴の旋律もしっかりと聴くことができた。これもE-650との比較で音の違いがとても大きかった楽曲の一つ。
E-650プリメインアンプの3パラレル構成プッシュプル回路とE-700の4パラレル構成プッシュプル回路の音の違いは、とりわけ低音域で顕著に感じられる。
例えば、スティング「ザ・ブリッジ」の冒頭曲「ラッシング・ウォーター」では、締まったキックドラムの押し出しがE-700プリメインアンプのほうが強い音になり、低音の沈み込みが深いぶん音楽の重心が低く安定してくるのだ。
ジャズ・トランペットの松井秀太郎のデビューアルバム「ステップス・オブ・ザ・ブルー」で聴く「カラー・パレット」は、後半で展開されるドラムソロの迫力もE-650のそれを越えているのだが、トランペットやサキソフォンの鳴りに勢いがあるため演奏のダイナミックなコントラストが高く、演奏の臨場感が抜群なのだ。E-650の音は決して古いわけではないけれども、E-700の音からは技術の進歩と同時に格上の音という印象が得られたのが、私の偽らざる音の感想である。
音量を調整しながら便利だなと感じたのは、コンペンセンターと呼ばれる低音域のレベルアップ。フロントパネルでは「COMP」と表示されているのでコンプレッサーと誤解されないだろうかと心配してしまうのだが、小音量で音楽を聴くときに有効なファンクションだ。
E-700プリメインアンプは小音量再生の時も音の解像感が高く、コンペンセンターによって音調バランスがローエンドまで整うのだ。ラウドネスとは異なり、高音域の補正をしないのもコンペンセンターの特徴といえる。
音質とは直接的に関係ないけれども、私がE-700を「一生モノのオーディオ!」として推す理由のひとつに、操作の感触の良さがある。
特に、音量調整用のノブを手で操作するときの重く粘りのある感触は、ベテランのオーディオファイルからも高く評価されている。最近のプリメインアンプやプリアンプは音量調整の機構にロータリーエンコーダーを使う場合が多くなり、ノブをクルクルと回転させて使うのが一般的。私が自宅で使っている米国パス・ラボラトリーズの「X32」プリアンプもそうだ。
しかし、アキュフェーズはまるで「回転ボリューム」の連連続可変抵抗器を扱うように最小(MINI)と最大(MAX)の位置が明示されている。時計の文字盤でいうと7時が最小で、17時が最大というイメージ。
アキュフェーズのオリジナルによるこのボリュームセンサーは、モーター駆動対応でアルミブロックから切削したボディと真鍮製の極太シャフトを採用するなど、指で動かした時に精密さがダイレクトに伝わってくるように設計されている。実際の音量調整はバランスドAAVA回路なのだが、E-700に搭載された自社製ボリュームセンサーは電子回路をアナログ的な操作感でコントロールする優れたインターフェースなのである。
LEDを採用した高感度の対数圧縮型バーグラフメーター(ピークパワーメーター)も、E-700プリメインアンプの特徴に挙げられる。アキュフェーズではAB級プッシュプルのプリメインアンプやパワーアンプにはトラディショナルな針式のアナログメーターを使っているが、純A級プッシュプルのアンプではLED点灯のバーグラフメーターというふうに分けている。
これには針式のアナログメーターを製造する国内の企業が減ってしまったという切実な背景がある。針式メーターの入手が困難になった時のことを考慮したようで、ある時から針式メーターの雰囲気を持たせたLED点灯のバーグラフメーターを自社開発した。
視認性が高いことと同時に、針式メーターのようなオーバーシュートの振れが発生しないため、きわめて正確な表示が可能になっている。よく見比べると、E-700のはE-650よりも文字を僅かに大きくするなどの工夫がうかがえる。メーターを消灯することも可能だ。
E-700の背面パネルは、E-650とほぼ同一のレイアウト。XLR端子のバランス入力は2系統で、プリアウトとメインイン(パワーアンプ入力)のXLR端子も装備している。RCA端子のシングルエンド入力は5系統あり、あまり使われないかもしれないがテープ入出力も1組備えている。そしてプリアウトとメインイン(パワーアンプ入力)のRCA端子もある。スピーカー端子は2組なので、たとえばバイワイヤ接続も楽にできるはずだ。
オプションスロットが2つあるのも、E-700の便利なところ。アキュフェーズでは11.2MHzのDSDと384kHz/32bitまでのPCMに対応するUSB-B端子と、一般的といえる同軸と光を備えたデジタル入力ボード「DAC-60」(99,000円)に加えて、MC型/MM型に対応した超ローノイズのアナログディスク入力ボード「AD-60」(77,000円)と、RCA端子のライン入力を増設できる「LINE-10」(8,800円)を用意している。
フォノイコライザー回路を標準搭載しなかったのは、アナログディスク再生を求めないユーザーも少なからず存在するという現実面から。たとえば2台のアナログプレーヤーや2本のトーンアームがあるとしたら、2つのスロットに「AD-60」ボードを組み込んで使うこともできる。
E-700プリメインアンプは、高効率の大型トロイダル電源トランスフォーマーを搭載している。そして、電源部のフィルターコンデンサーには56,000μFのカスタム仕様が2基使われている。E-650プリメインアンプでは50,000μFのカスタム仕様が2基だったので、電源部も強化されているのだ。総重量こそE650の25.3kgよりも僅かに軽い24.9kgだが、これは正面ガラス窓の拡大など機構設計を変えたことによるものだろう。
サイズもパワーもちょうど良く、音も抜群
最後に。アキュフェーズには純A級プッシュプルのプリメインアンプとして、フラグシップ機の「E-800」がある。こちらは6パラレル構成のMOS-FETプッシュプルで50W+50W(8Ω負荷)というハイパワーを誇る巨漢。価格も113万3,000円するハイエンド機だ。
それでも私が「一生モノのオーディオ!」としてE-700プリメインアンプをオススメするのは、サイズ的にもパワー的にもちょうどいい大きさで、しかも音質も優れているからだ。E-700プリメインアンプは発売されたばかりの新製品。これから長い年月にわたり、アキュフェーズを代表する純A級プリメインアンプとして最前線で活躍してくれるはずだ。
試聴室の写真を撮るためにアキュフェーズを再訪したら、デジタル・チャンネル・ディバイダーの新製品としてDF-75が発表になったばかりだった。
内蔵するA/Dコンバーター素子がAKMの高性能モデルになり、D/Aコンバーター素子はESSテクノロジーの「ES9028PRO」に改められている。デジタル演算を行うDSPの性能も向上したことで、前作のDF-65よりも音質が向上すると同時に調整範囲が広がっているという。
チャンネル・ディバイダーを活用しているオーディオファイルは多くないだろうが、DF-75の登場はオーディオシステムの音質をワンランク以上アップできるはずなので、注目していきたい。