レビュー
よりワイドで大迫力。新GoPro「HERO3+ ブラック」の実力は?
マイナーチェンジではない性能向上を体感
(2013/12/5 10:50)
11月13日に、アクションカメラの代名詞「GoPro」の最新モデル「GoPro HERO3+」の発売が開始された。「HERO3+」のラインナップは、「ブラックエディション アドベンチャー」と「ブラックエディション サーフ」(いずれも43,050円)、そして「シルバーエディション」(33,600円)の3種。「ホワイトエディション」(25,200円)は一部ハードウェアの変更はあるが「HERO3+」ではなく、これまで通りHERO3の名称で継続販売となる。
「GoPro HERO3+ ブラックエディション」は、基本的な動画撮影性能について従来と変わるところはそれほどないが、ハードウェアの仕様変更・改善、撮影モードや設定の追加などが施されている。
“HERO4”ではないだけに、HERO3のマイナーバージョンアップモデルとされ、HERO3ユーザーにとって買い替えを検討するほどの大きな違いはないように見えるが、果たして実際のところはどうなのか。HERO3とHERO3+のブラックエディション2機種を同時に使用して比較してみた。
ハウジングは実用性重視で小型・軽量化
改めて説明すると、GoProはスポーツやレースといったアクションシーンから日常の風景まで、通常の大きなデジタルカメラやビデオカメラでは撮影しにくいシチュエーションでの利用に向いた、アクションカムと呼ばれるカテゴリーのカメラだ。どちらかというと手で持って撮影するものではなく、付属のハウジングや多彩なマウントを組み合わせて身につけたり、モノに固定して撮影することを前提にしている。小型ながらも高品質な映像を残せるため、プロの映像制作の現場でも活用されることが多い製品だ。
冒頭に述べた3つのエディションのうち、最上位機種となる「GoPro HERO3+ ブラックエディション」は、1080p/60fpsや720p/120fps、4K/15fpsなどでの動画撮影が可能となっている。多くの部分は従来製品と同じなので、詳しくはHERO3のレビューをご覧いただきたい。今回はそのHERO3と「HERO3+」の違いを中心に解説していこうと思う。
まず「HERO3+」で外観上大きく変わったのはハウジングだ。従来は60m防水だったところ、40m防水にして小型・軽量化を図った。デザインはシンプルになり、ロックするラッチ部分の構造も大きく変わっている。具体的なサイズは、HERO3までのハウジングが77.8×76.5×41mmの重量87g、HERO3+では69.5×70.5×39mm/62gで、見た目で明らかにひとまわり小さくなっていることがわかる。
防水性能がダウンした点は、ダイビングなどで使いたいユーザーにとってはネックになるところかもしれないが、60m防水に対応するハウジングは別売りもされているため心配はない。むしろ、ある意味オーバースペック気味だった防水性能を、ダイビング以外の用途に合わせて抑制し、実用性の向上を図ったものと言えるだろう。また、新しいハウジングでは3つあるボタンがすべて大きく、押しやすくなったのもうれしいところだ。
その他、付属品で大きく変わるものはなく、防水が不要な場面で使える交換用のスケルトン後部ドアの構造が若干変更され、実測で17gから13gに軽量化した程度。リモコンとして使える「Wi-Fiリモート」も従来と同じものが付属する。
プレビューは高速化。稼働時間向上もポイント
GoPro本体の外観上の変化はわずかだ。モノラルマイクが側面から上面に移動し、アラーム用スピーカーが1つ減った。あとは電源/モードボタンのマークがプリントから立体的なエンボス状のものに変わり、レンズ周りのデザインが多少変化している。
バッテリ込みの重量は、カタログスペックおよび実測で74g、HERO3は実測75gとなっている。ちなみに、容量の増えたHERO3+のバッテリは25gで、HERO3の23gより重いことから、本体が3g分どこかでシェイプアップしたことになる。本体サイズはまったく同じで、背面の拡張ポートももちろん用意されているため、従来のマウントやバックパックなどのアクセサリー類も、HERO3対応のものがそのまま使えることになる。
ハードウェア面では、描写性能の向上で映像の鮮明さが増し、歪みが少なくなったこと、バッテリー容量が1,050mAhから1,180mAhに増加し、内部的な電源マネージメントの最適化によって稼働時間が30%向上したこと、チップの変更によりWi-Fiが4倍高速化されたことなどが主な変更点として挙げられる。
バッテリの持続時間については、実際に1080p/30fpsで撮影したところ、カタログスペックの通りHERO3より30分以上長い約2時間という結果になった。比較用のHERO3はカタログスペックの1時間30分から若干短くなっているが、すでに1年以上使用しているもののため、妥当なところだろう。
バッテリー持続時間実測値
- HERO3+:2時間00分57秒
- HERO3 :1時間26分00秒
- *1080p/30fps ワイドで連続撮影時
無線LAN(Wi-Fi)はカタログ上はどの規格に対応しているか明記されていない。スマートフォンから接続した時の54Mbpsというリンク速度と、5GHz対応ではないことから、HERO3から変わらずIEEE802.11b/g対応と考えられるが、専用スマートフォンアプリの「GoPro App」での映像プレビュー時のタイムラグはかなり少なくなっている。
HERO3で1.5秒ほどあったタイムラグがHERO3+では0.5秒ほどに短縮しており、これまでのようにプレビューしながら位置/角度調整する際に戸惑うことは少なくなった。なお、GoProの開発元によれば、HERO3の課題であった、熱をもちやすい問題もHERO3+で改善したとしている。
新機能は視野が広がる「スーパービュー」と、暗所撮影用「オートローライト」
機能面での変更点は、「スーパービュー」と「オートローライト」が加わったことだ。実は、これ以外の変更はほとんどないと言ってもいい。
1つ目の「スーパービュー」は、GoProのセンサーサイズ全体を使って撮影したアスペクト比4:3の映像を、16:9に変換するものだ。中央付近はほぼ変えず、左右端にいくにつれて引き延ばす割合を大きくするような処理となっており、見た目の不自然さを極力抑えつつ、約170度の画角となるこれまでの“ワイド”よりも一段と広い視野を表現する。この「スーパービュー」は1080pと720pの解像度でのみ使用できる。
次の「オートローライト」は、GoProがあまり得意としていなかった暗所性能を向上させる機能。被写体の明るさを自動判定し、それをもとにフレームレートを落として適切な明るさで撮影できるようにする仕組みだ。暗い室内や夜間の撮影のほか、トンネルを通過する走行シーンなど、撮影中に明暗の差が激しくなるような場合にも役に立つ。この機能は48fps以上のフレームレートに設定している時のみオンにすることが可能となっている。
その他、4Kと2.7Kのシネマサイズが「17:9」という呼び方に変わっていたりと、細かい変更点はわずかながらあるが、動画撮影の解像度、フレームレート、画角のほか、静止画の撮影機能、連写やコマ撮りのスピードなど、基本的な撮影モードの仕様はHERO3と一切変わらない。
「スーパービュー」と「オートローライト」の効果を検証する
以上をまとめると、新モデル「HERO3+」と従来のHERO3との機能差は、小さく軽くなったハウジング、長時間もつバッテリー、高速なプレビューという3点と、「スーパービュー」と「オートローライト」という撮影機能の拡張だ。HERO3のユーザーがHERO3+に買い換えるかどうかは、これらの差に魅力を感じるか、そしてスーパービューなどの“出来”にかかっていると言える。
というわけで、「スーパービュー」と「オートローライト」それぞれの効果がわかるサンプル映像を用意した。まずは「スーパービュー」で他の画角とどれくらい違いがあるのか、動画から抜き出した静止画でご覧いただきたい。
「スーパービュー」では、ワイドの画角でも見えなかった左右端はもちろん上下方向にも視野が広がり、ビル全体を余裕でカバーしている。左右端の方では歪みがかなり大きくなっているので、使いどころは選ぶかもしれないが、可能な限り視野を広く取りたい場面や狭い場所で効果的に使えることは間違いない。
画質については、「HERO3+」の方がコントラストが強めに出ているように感じる。また、次のサンプルで見ると「HERO3+」の方が若干彩度が濃く出ていることもわかる。このあたりは動画編集時に調整できる部分でもあるし、好みもあるかもしれないが、“描写性能が向上した”とアピールしている通り、HERO3とはわずかに異なる色味になると思っておくとよいだろう。
動画で通常のワイドと「スーパービュー」の違いも見てみたい。最初の動画2つは同じシーンをHERO3+とHERO3を同時に、ワイドの設定で撮影したもの。最後の1つがHERO3+で「スーパービュー」で撮影したものだ。
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
ご覧いただければわかるように、「スーパービュー」では上下に広くなっていることもあり、ワイドでは見えなかった手元のハンドル操作まで確認できるうえ、左右への広がりが大きくなったことで臨場感、没入感が増している。こういった一人称視点でスピードを出すようなシチュエーションだと、「スーパービュー」の利点がより活きてくるようだ。「スーパービュー」の映像を見た後にワイドを見ると、これまでのミディアムくらいの狭さに思えて物足りなさを感じてしまうほどである。
次に、「オートローライト」のオンとオフでどれくらい見え方に差が出るのか、街灯のあまり多くない夜道で撮影して確かめてみた。
「オートローライト」の有無で、見え方には明らかな違いがあることがわかる。オフの場合はところどころにある街灯付近か、前照灯で照らしている場所以外はほとんど真っ暗で何も見えないが、オンにすると見える範囲はかなり広がる。明るくなると内部的なフレームレートが落ちて滑らかさが薄れることも感じ取れるが、気にするほどではなさそうだ。夜間の撮影に「オートローライト」は必須と言えるかもしれない。
とはいえ、少し気にかかるのは、撮影をスタートしてから暗さを認識して明るく調整されるまで1~2秒ほどかかっているところ。今回は検証に適切なシーンを見つけられず試すことはできなかったが、明るい場所と暗い場所を頻繁に行き来するような場面では、自動調整が間に合わず、逆に見にくくなる可能性も否定できない。
稼働時間と「スーパービュー」に価値を見いだせるなら、買い
HERO3ですでに画質的にも、サイズ的にも満足度の高い製品に仕上がっているため、「HERO3+」における画質の改善、ハウジングの小型・軽量化に魅力を感じる、という人はそれほど多くないかもしれない。一方で、ハードウェア面では、劇的とは言えないまでも稼働時間が長くなったことにメリットを見いだせる人は多いのではないだろうか。バッテリバックパックを併用すれば3時間前後の撮影にも対応でき、使い方の幅も広がりそうだ。
機能面では、「スーパービュー」が想像していた以上に“使える”機能だと感じた。見たままの映像ではなく、ある意味“過剰な演出”を施している部分に違和感を覚えて使うのをためらう人もいそうだが、臨場感重視で撮りたいのであれば、これほど簡単に面白い映像を撮れる機能はない。もし機会があれば、ぜひ自分のアクションを「スーパービュー」で撮影してこれまでの映像と見比べてみてほしいところだ。
結論を言えば、個人的には稼働時間の向上と「スーパービュー」の2点で「HERO3+」は購入に値する製品だと思っている。ただ、これは、筆者が仕事では取材時に映像の押さえとしてGoProを使い、趣味では今回のサンプルにあったカートレースのようなシーンを撮るというように、まさに稼働時間と臨場感の両方に重きを置きたいというニーズに「HERO3+」の改善点がうまくマッチしたから、というのもある。ただ、対応シーンが拡大したことで、ユーザーの「したいこと」により柔軟に対応できるようになったというのが、重要なポイントだろう。
HERO3+ ブラック | HERO3+ シルバー | HERO3 ホワイト | |
---|---|---|---|
4K/2.7K | 4K/最高15fps 2.7K/最高30fps | - | - |
1080p | 60p SuperView | 60p | 30p |
720p | 120p SuperView | 120p | 60p |
CMOS | 12メガ | 10メガ | 5メガ |
Wi-Fi | ○ | ||
Wi-Fi リモート | ○ | - | - |
オート ローライト | ○ | - | - |
ProTune | ○ | - | - |
価格 | 43,050円 | 33,600円 | 25,200円 |
「ブラックエディション」はたしかに高機能・高性能で魅力的なアイテムではあるけれど、あくまでもプロもしくはエンスージアスト向けの製品だ。より“魅せる”映像を撮りたいなら今回の「GoPro HERO3+ ブラックエディション」がおすすめだが、バッテリのもちを重視したいなら、1080p 30fpsで3時間撮影できる「シルバーエディション」も魅力的だ。今回のラインナップでは、実際の用途から自分に必要なエディションを判断しやすくなったとも言える。エントリーモデルの「ホワイトエディション」も含め、購入に際しては用途をしっかり見極めて選びたいところだ。
GoPro HERO3+ ブラックエディション アドベンチャー | GoPro HERO3+ ブラックエディション サーフ |
---|---|