レビュー
PCとスマホを約5,000円で1ランク上の音に。クリエイティブ「Sound Blaster E1」
(2014/6/6 11:30)
クリエイティブメディアが5月中旬に発売した「Sound Blaster E1」は、パソコンに接続して利用できるUSBオーディオインターフェイスでありながら、ポータブルヘッドフォンアンプとしても利用できる面白い製品だ。直販価格は5,280円と、3万円前後の製品が多いポータブルヘッドフォンアンプの中ではお手頃な値段と言える。ポータブルアンプに興味はあるものの、値段がネックで購入には至らない、という人でもちょっと試してみたくなる価格ではないだろうか。早速その使い勝手を試してみた。
2つのヘッドフォン出力やマイク内蔵など、ユニークな特徴を備える
Sound Blaster E1は、パソコンやMacとUSB接続して、オーディオ再生やマイク入力が可能な小型のUSBオーディオインターフェイスだ。また、ステレオミニのライン入力も1系統備え、200mAhのバッテリを内蔵しているので、スマートフォンやポータブルオーディオ機器とステレオミニケーブルで接続して、アナログ接続のポータブルヘッドフォンアンプとしても使うことができる。バッテリ動作時の連続使用時間は約25時間となっている。
ユニークな特徴として、ステレオミニのヘッドフォン出力を2系統(1つはマイク入力兼用)搭載しており、最大2つのヘッドフォン/イヤフォンを繋いで同時に音声を聴くことができる。友人や恋人と音楽を一緒に楽しみたい場合や、大きな音を出せない場所で一緒に動画を視聴したいときなどに使えそうだ。
パソコン接続時にはUSBバスパワーで動作し、44.1kHz/24bitまでの音源に対応する。Windows PC接続時はASIO再生(44.1kHz)も可能だ。対応OSは、Windows Vista/7/8/8.1とMac OS X 10.6.8以上となっている。
本体の外形寸法/重量は35×66×19mm(幅×奥行き×高さ)/約25gと、100円ライターを少し幅広くしたような小型サイズで、背面に備えたクリップで胸ポケットなどに取り付けて使用できる。このクリップはバネ式で、ポケットにつけたまま落し物を拾おうとかがんでもズリ落ちない。
外装は黒のプラスチックで、メッシュ部分が赤くなっており、デザイン的なワンポイントとなっている。このメッシュ部は内蔵マイクとなっており、パソコンでのボイスチャットや、付属の4極アナログケーブルで接続したスマートフォンでの通話に利用可能だ。操作系は、電源ボタンと再生/一時停止/電話応答ボタン、音量スライダーを側面に装備する。赤色のステレオミニケーブルとUSBケーブルが付属しているので、ケーブルを別途用意する必要はない。
なお、発売時期は未定だが、Bluetoothを搭載し、96kHz/24bitまでのハイレゾ音源にも対応する上位機種の「E3」も今後発売される予定。
ポタアンとしての実力をチェック
まずは、ポータブルヘッドフォンアンプとしての実力を試してみよう。テストは、iPhone 5とE1を付属のステレオミニケーブルで接続し、再生にはiPhoneの標準ミュージックプレーヤーアプリを使用。イヤフォンは日頃から愛用しているShure「SE215」を使った。マイケル・ジャクソンの新作「Slave To The Rhythm」(AAC 256kbps)を再生してみると、iPhoneに直接繋いだときよりもバスドラムのドーンという低音に厚みが増し、重量感が加わる。打ち込み系のダンサブルな曲なので、低音が出ると全体的に引き締まった印象になる。ただし、音の傾向自体は大きく変わらないので、聴く音楽のジャンルを選ばず使えるだろう。
接続に使用しているステレオミニケーブルは4極タイプで、スマホとの接続時にはE1から再生/一時停止の操作が行なえる。スマホを取り出さずに操作できるのは便利だが、曲送り/曲戻しもできるとさらに良かった。バッテリは25時間連続再生できるというだけあって、1日2時間程度の利用で1週間は充電せずに使えた。
気になったのは、ボリュームがスライダー式なのだがロック機構がないため、カバンやポケットなどに入れると、不意にスライダーが動いて予期せぬボリュームになってしまうこと。突然最大音量になるとビックリするので、E1のボリュームは最大にしておき、プレーヤー側のボリュームで音量を調整するなど工夫したほうがいいかもしれない。
E1のヘッドフォン出力は最大600Ωまで対応しており、一般的なヘッドフォンを使う分には申し分のないスペックとなっている。実際に、手元にあるヘッドフォンの中でも、ドライブしにくいAKG「K172 HD」で試してみた。K172 HDのインピーダンスは55Ωで、ポータブルで使うには高インピーダンスな部類に入る。ポータブルアンプを使わずにiPhone 5に直接繋いでみると、ボリュームバーの80~90%くらいまで音量を上げないと満足する音量にならなかった。ちなみにShure「SE 215」(20Ω)では、30~40%くらいのところに設定している。
iPhoneのボリュームを通常使用している音量(ボリュームバーの30~40%あたり)に設定し、E1のボリュームを最低のところから徐々に上げてみたところ、ボリュームを最大にしても音量は足りなかった。そこで、iPhoneのボリュームを最大にして、同様にE1のボリュームを最低のところから動かしてみると、少しスライドさせただけでも結構な音量が出た。さらに動かしていくと、スライダーの半分より手前のところで十分な音量となり、半分までいくとうるさいくらいの音量となった。出力にはまだ余裕があるので、もっとインピーダンスの高いヘッドフォンにも対応できそうだ。
K172 HDは、出力の低いプレーヤーだと低音が出ずに大人しい音になりがちだが、E1を通すと低域がしっかり聴こえるようになり、ダンスミュージックなどにもマッチするサウンドとなった。高インピーダンスのヘッドフォンをプレーヤーに直接繋いで使用している人は、一度ヘッドフォンアンプを試してみると、音の印象が変わるかも知れない。
Lightning-USBカメラアダプタを使ってデジタル接続を試す
最初に述べたように、E1はパソコンとUSB接続して44.1kHz/24bit音源対応のオーディオデバイスとして使用できる。そこで、メーカーが推奨する使い方ではないが、iPhone 5に別売の「Lightning-USBカメラアダプタ」(2,900円)を装着し、付属のUSBケーブルでE1と繋げて音が出るか試してみた。ちなみにテストにはiOS 7.1.1のiPhone 5を使用している。
カメラアダプタを介してUSBケーブルをE1に接続してみると、あっさりと音が出てしまった。さらに、その状態でハイレゾ再生アプリ「FLAC Player」(1,000円)を使い、192kHz/24bitのハイレゾ音源を再生したところ、こちらも音が出ているのを確認できた。デジタル接続時は、ボリュームはアナログ接続と同様にE1、iPhoneのどちらでも操作できるが、E1からの再生/一時停止の操作はできなくなる。
FLAC Playerの表示では、ステレオミニケーブルによるアナログ接続の場合、デバイスはヘッドフォン、サンプルレートは48,000Hzとなるが、USB接続時には、デバイスはSound Blaster E1、サンプルレートは44,100Hzとなり、アプリがE1を認識していることが確認できる。192kHz/24bitのハイレゾ音源は44.1kHz/24bitにダウンコンバートされていると思われるが、iPhone 5からE1へのデジタル出力は可能なようだ。
音質は、ステレオミニケーブルでのアナログ接続よりも解像感が高く、特にハイレゾ音源再生時は顕著な差を感じる。192kHz/24bitのハイレゾ音源であるマーヴィン・ゲイの「Let's Get It On」では、音の重なりに立体感が出てボーカルとコーラスのハーモニーが際立ち、セクシュアルに歌い上げるボーカルをより堪能できる。また、ストリングスやブラスなどの音の輪郭も明確になるので、バンドの演奏もしっかり楽しめる。
E1本体とLightning-USBカメラアダプタ、それにハイレゾ再生アプリを加えても合計1万円弱なので、iPhoneとデジタル接続できるポータブルアンプと考えればお得感は高いと感じる。ただし、このLightning-USBカメラアダプタ経由での接続時には、E1がUSBバスパワー動作になるため、iPhoneのバッテリが1曲再生する間に2~3%ほど減っていく。長時間の使用には注意が必要だ。
パソコン接続時にはサラウンドなどの機能を利用可能
パソコンに接続すると、ドライバなしでもUSBオーディオとして認識される。アクティブスピーカーを接続すれば、映画などを大音量で楽しむことも可能だ。
さらに、クリエイティブのサイトからドライバやアプリケーションをダウンロードし、パソコンにインストールすれば、音質調整やバーチャルサラウンドなど様々なオーディオ機能を利用できる「SBX Pro Studio」や、マイク入力時のノイズ低減などを設定できる「CrystalVoice」、ゲームプレイ時に敵の足音などを強調して発見しやすくする「スカウトモード」などの様々な機能を利用することができる。対応OSはWindows Vista/7/8/8.1と、Mac OS X 10.6.8。
今回はWindowsパソコンとE1をUSB接続し、Olasonicのステレオアクティブスピーカー「TW-D7IP」をE1とステレオミニケーブルで繋いで音質調整機能を試してみた。メニュー画面の左側にはたくさんの項目が並んでいるが、映画や動画を見る場合は、サラウンド効果や高音/低音の調整ができる「SBX Pro Studio」、チャット時などはマイク音声の調整ができる「CrystalVoice」、音楽を聴くときにはプリセットEQや10バンドイコライザでの調整ができる「イコライザー」を選ぶと良いだろう。イコライザーやSBX Pro Studioは併用可能なので、組み合わせて利用することで、より好みに合ったサウンドに設定もできる。
まず、「イコライザー」モードを選択し、音楽を再生してみた。このモードには"ロック"や"クラシック"といったプリセットEQが用意され、再生するジャンルに合った音質に簡単に調整することができる。マイケル・ジャクソン「Slave To The Rhythm」を再生し、プリセットEQから"ダンス"を選ぶと、イコライザをオフにした時と比べ、低音と高音が強調され華やかなサウンドになった。さらに低音を強くしたい場合は、10バンドイコライザで細かく調整することも可能だ。
続いて、「SBX Pro Studio」を選択して、設定を変えながらDVDで「ゼロ・グラビティ」を視聴してみた。劇中で、シャトルでの船外活動中に宇宙ゴミが衝突し、サンドラ・ブロックが宇宙空間に投げ出されるシーンがあるが、サラウンドをオンにすると、上下左右に目まぐるしく視点が変わる場面に合わせ、音も激しく移動する様子がよりリアルに感じることができた。ステレオ音声でも、サラウンド機能を使うと音の広がりを実感できるが、5.1chや7.1chのサラウンド音声が収録されているDVDやBDでは、さらに音に奥行きが生まれ臨場感のあるサウンドを楽しめるので、映画などを見る際はサラウンドを常にオンにしてもよいだろう。
Windows PCでは、再生音楽とマイク入力音声を同時に録音できる「再生リダイレクト(ステレオミックス)」機能も利用できる。ゲームのプレイ動画をキャプチャする際に自分の実況音声をのせたり、「演奏してみた」、「踊ってみた」などの動画にナレーションを加える時などにも活用できる。サウンドカードやPC用マイクなどを個別に用意せず、E1で気軽に音声配信ができるので、ニコ生中継などのネット配信を始めてみたい人の入門機にも良いだろう。
これらの音質調整機能はパソコン接続時のみ利用できるが、ポータブルアンプとして使う場合にもそれらが使えれば、なお良いと感じた。最近はパソコンを立ち上げずに、タブレットやスマホでYouTubeなどの動画や、映画・アニメなど動画配信を見ることが多いので、その際にSBX Pro Studioなどを利用できれば、E1の使用シーンがさらに広がるだろう。そういう意味では、最近人気の小型Windowsタブレットとの組み合わせなどは面白いかもしれない。
PC/ポータブル環境をアップグレードさせる入門機として最適
Sound Blaster E1は約5,000円とリーズナブルでありながら、価格と機能のバランスが優れている製品だ。先に述べたように、スライダーボリュームがロックできなかったり、音質調整がパソコンでしか利用できないなど、もう少し頑張って欲しいところもあるが、この価格なら納得できる。
E1は、これからPCオーディオやポータブルオーディオの環境を整えようと考えている人や、あまりお金をかけずにオーディオ環境をアップグレードしたいという人におすすめだ。また、インピーダンスの高いヘッドフォンを外でも使いたいが、手持ちのプレーヤーでは十分な音量が出せないという不満を持っている人も、試してみて欲しい。
Sound Blaster E1 |
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(協力:クリエイティブメディア)