レビュー
Netflix 4Kも見られるAmazonの「Fire TV」を試す
プライムビデオ対応の一番手軽な4Kプレーヤー
(2015/11/13 11:00)
9月24日に、日本で「Amazon プライムビデオ」がサービススタートした。Amazonの会員サービス「Amazon プライム(税込3,900円/年)」のメンバーであれば、追加費用無しに映像見放題サービス(SVOD)を利用できるため、多くの加入者を集めているようだ。Amazonプライム会員がそのままAmazonプライムビデオ加入者といえる状況なわけで、一躍要注目の映像配信サービスに踊りでたと言える。
そのプライムビデオのスタートにあわせて、日本で10月28日から出荷されたのが、Amazonオリジナルのメディアプレーヤー「Fire TV」と「Fire TV Stick」だ。HDMIでテレビやディスプレイと接続し、プライムビデオやAmazonビデオのほか、ゲームやアプリも楽しめるメディアプレーヤーだ。価格はFire TVが12,980円(税込)、Fire TV Stickが4,980円(同)。
上位モデルのFire TVは、4K出力に対応。Amazon プライムビデオの4Kコンテンツのほか、Netflix 4K作品も視聴できるなど、より高品位な映像体験を実現する製品になっている。現時点ではプライムビデオの4K配信が視聴できるのは、Fire TVのみだ。
また、Netflixの4K配信対応機種は、現状2015年モデルの4Kテレビや、実売40万円のDIGA「DMR-UBZ1」程度。1万円程度の追加投資でNetflix 4K利用できるFire TVは、Netflixプレーヤーとしても魅力的と言える。今回プライムビデオとともにFire TVの実力を検証してみよう。
プライムビデオ概要
プライムビデオは、Amazonの映像配信「Amazonビデオ」に統合されたプライム会員向けの定額制映像配信(SVOD)サービス。配達指定やセール優待などを含む、年間3,900円のプライム会員であれば、無料で利用できる。月額にすると325円でSVODもついてくるAmazon会員サービスだ。
対応デバイスは、パソコン(Webブラウザ)のほか、Androidスマートフォン/タブレットやiPhone、iPad向けにアプリを提供。もちろん、Fireタブレット、Fire TV、Fire TV StickなどのAmazonデバイスにも対応する。テレビでは、パナソニックのVIERA CX700/CX800シリーズと、ソニー「BRAVIA」の2014年モデルが対応。'15年のAndroid TV搭載BRAVIAも'15年内に対応予定としている。
プライムビデオの配信コンテンツは、最新作というより、少し前の人気作品やドラマシリーズが多い。また、日本のドラマやバラエティなども結構充実している。SVODといえば「海外ドラマ」というイメージをお持ちの方も多いと思うが、最近は各社とも日本の作品に力を入れており、プライムビデオ スタート時の会見でも「日本のコンテンツが7割」と強調していた。
PC版で見る限り、作品数は11月11日時点で1,735件と表示されている。外国映画447本、日本映画460本と、日本映画が多く、テレビドラマが259本、ミュージック232本、アニメ200本、お笑い・バラエティ34本などが続いている。10万本以上のdTVなどと比べると、少なく感じるが、少なくとも数カ月は楽しめるコンテンツ数とはいえる。また、「内村さまぁ~ず SECOND」など、先行コンテンツも強化していくようだ。
Amazon Studioによる自社制作にも取り組んでおり、殆どの作品は4K制作となっている。Amazon Studioでは2016年には日本市場向けに40作品以上を製作予定とのことで、ドラマ、バラエティ、アニメなどのオリジナル作品を強化していく方針。
なお、現時点でプライムビデオを4Kで視聴できるのは、Fire TVのみ。PCやタブレットなどではHDが上限となる。
実際にプライムビデオを見てみると、PCではAmazonで作品を探しながらすぐに再生できて、ながら視聴に便利。また、PCでウォッチリストに追加した番組をスマホやFire TV、PS4で見るといった連携にも対応している。
プライムビデオの特徴といえるのが「ダウンロード」対応。あらかじめ、スマホなどにコンテンツをダウンロードしておけば、飛行機などのインターネット回線がない場所でも快適に映画やドラマなどを楽しめる。また、バラエティ番組や日本のドラマも結構揃えているので、例えば30分枠のバラエティやアニメをダウンロードして、電車通勤中にパケット通信料を気にせず楽しむ、といったことも可能だ。
dTVのように同様のダウンロード機能があるサービスもあるが、HuluやNetflixはダウンロード非対応。ダウンロード/オフライン対応を重視する人であれば、プライムビデオは安価で魅力的な選択肢になりそうだ。なお、ダウンロードはAndroid/iOSのみで、PCやFire TVには非対応となっている。
四角いプレーヤー「Fire TV」
Fire TVのパッケージには、Amazonビデオやミュージックのほか、GYAO! やゲームのファイナルファンタジーのロゴもプリントされており、Amazonサービス以外でも使える点をパッケージデザインでも表現している。同梱品は必要最小限で、Fire TV本体のほか、ACアダプタ、リモコンのみ。
Fire TVの外形寸法は115×115×17.8mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は270g。テレビの脇に置くのは新Apple TVより幅は大きいが高さが低いため、多くのテレビの下には置きやすいはずだ。正方形のシンプルなデザインで、フットプリント的にはGoogleのNexus Playerよりも小さい。
CPUは、MediaTekの2GHz/クアッドコアで、GPUにはPower VR GX6250を採用。ハイパフォーマンスが要求されるゲームもプレイできるという。アプリの追加も可能。ストレージ容量は8GBとされているが、設定画面を見るとユーザーが利用できるのは5.6GBのようだ。OSは、Fire OS 5.0.3。背面には、HDMI出力とUSB端子、DC入力、microSDカードスロットなどを装備。microSDでメモリ容量の拡張にも対応する。
無線LAN接続も可能で、IEEE 802.11a/b/g/n/ac(MIMO)に対応する。
リモコンはBluetooth接続で、購入時にペアリング済みとなっているため、最初から問題なく利用できる。設定画面からFire TVゲームコントローラやリモコン、ゲームパッドの追加も可能だ。詳しくは後述するが、Bluetoothの採用により、音声操作に対応したのもFire TVの特徴といえる。
Fire TVでプライムビデオ再生。4K画質も良好
Fire TVを起動すると、画面がでる。KindleやFireタブレットと同じく、最初から購入者のAmazonアカウントに紐付いているので、初期設定は楽だ。このあたりはAmazonならではで、迷いなく利用できる。
付属リモコンのサークル状のボタンで上下左右移動を、サークル中央で決定。サークルの上には音声操作用のマイクのイラスト入りボタン、サークル下には[戻る]、[ホーム]、[オプション]の3つのボタンを備えている。
最初に動画のチュートリアルで操作方法を案内。あとはコンテンツを選んで決定を押すだけで、再生が可能だ。Fire TVのトップページは、[検索]、[ホーム]、[プライムビデオ]、[映画]、[TV番組]、[ウオッチリスト]、[ビデオライブラリ]、[ゲーム]、[アプリ]、[ミュージック]、[写真]などの検索メニューからコンテンツを絞り込む形だ。
ホームには、[プライムビデオ]のほか、[ゲーム]、[アプリ]なども用意。追加したアプリを呼び出せる。[映画]、[TV番組]はプライムビデオだけでなく、都度課金/レンタル方式のAmazonビデオのコンテンツ検索/購入が行なえる。
プライムビデオ関連は、基本的に[プライムビデオ]以下にまとめられており、[最近追加された作品]、[おすすめプライム作品]、[人気のプライム作品(日本映画/洋画)]、[映画/TV番組のおすすめ]、[プライムの4K/Ultra HD作品]などから好みのコンテンツを選択できる。[プライムのヤクザ映画]など、妙にこだわったジャンルがあるのが不思議なところだ。
今回は4K REGZA「50Z10X」とのFire TVの組み合わせでテストした。4K再生のためには、4K/HDCP 2.2対応のテレビと、15Mbps以上のインターネット接続環境が必要となる。
ブラウズしていて気づくことは、吹き替え版、字幕版がそれぞれ登録されていること。HuluやNetflixでは作品を選んで再生してから音声や字幕を選ぶが、プライムビデオやAmazonビデオではそれぞれ別バージョンとして登録されているようだ。
作品選択から再生開始までは待たされることなく、即座に再生が始まる。ただし、4Kコンテンツの再生時のみ、[Ultra HD再生を最適化しています]との表示が出て、2秒ほど待たされることがある。再生開始してしまえば、HD/4Kの違いを感じることはほとんどない。
リモコンの左右ボタンによる早送りのレスポンスも良く、一気に1時間程飛ばしてもきっちり追従してくれる。シンプルながらわかりやすい操作性だ。画質は作品次第だが、50型テレビで見てもノイズや解像度の不足を感じることはほとんどない。
4Kコンテンツについては、ほとんどがAmazon Studio作品で「BOSCH」、「ハンド・オブ・ゴッド」「モーツァルトイン・イン・ザ・ジャングル」などで十数作品。プラス風景モノが幾つか程度なので、正直まだまだ物足りない。
4K/24pで配信されており、BOSCHやハンズ・オブ・ゴッドを見てみると確かに肌の艶感やディテール、映像全体からうける立体感などところどころ「4Kならでは」と感じさせる部分がある。4KとHDを切り替えることはできず、基本的に帯域さえ足りていれば高画質で配信するようだ。
4Kだからこその魅力は間違いなく感じられるだけに、もう少しコンテンツの拡充を期待したい。
シンプルだが、無料作品も[レンタル]できてしまう
ユーザーの視聴履歴をベースに、作品をオススメするレコメンド機能も備えているとのことだが、今回試した限りでは、その魅力を実感できるほどでは無かった。もう少し使い込んだり、作品数が増えないと違いが出ないのかもしれない。
シンプルなUIで戸惑うことは殆ど無い。ただし、わかりにくいと感じたことは、プライムビデオの[見放題]だけでなく、Amazonビデオの[レンタル]や[セル]が混在して表示されること。例えば、プライム会員であれば、無料で視聴できる[キカイダーROBOT]の選択画面では、[今すぐ見る。プライム会員は無料]という項目のほか、[レンタル](HD 540円)も並列に表示されており、レンタルできてしまう。
無料作品のはずなのに、有料への誘導ボタンが表示されているため、きちんと確認してからでないと決定/再生開始できない。確認すればいいだけではあるが、サクサクブラウズして好みのものを自由に再生する、という一般的なSVODの感覚からすると、再生までの心理的なハードルが少し上がっているように感じた。
プライムビデオで見られる作品については、この表示は出さないとか、レンタルやセルの項目を小さくするなどの配慮がほしいところだ。
音声検索は便利! TVOD融合も魅力の一つ
リモコンでの操作のほか、Fire TVアプリもAndroid/iOS向けに提供。アプリではタッチパッドを用いてFire TVの操作が行なえる。個人的にはリモコンのほうが使いやすく感じたが、リモコンが見つからない時などには重宝しそうだ。
Fire TVの特徴といえるのが、リモコンやアプリを使った音声検索機能で、[トランスフォーマー]のようなドラマや映画のタイトル、俳優名やジャンル名でコンテンツ検索が行なえる。また、[ダースベイダー]といったキャラクタ名でも検索できる。
リモコンのマイクボタンを押しながら音声で、見たい番組名を言うだけなので、リモコンでの文字入力より断然気軽で使いやすい。認識率もなかなか良く、キーワードの一部だけでも、候補を出してくれて検索しやすい。すごく「使える」機能だ。
ただし、検索結果には、上記のようにプライムビデオ以外の、Amazonビデオのレンタルやセルなど“有料”番組も一緒に出てくるので、しっかり確認してから選択してほしい。
もっとも、Amazonビデオが統合されていることで、まだプライムビデオに入っていない、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」や、「ターミネーター:新起動/ジェニシス」といった最新作にすぐにアクセスして、レンタル/購入できるというのは、プライムビデオならではの魅力。音声で検索し、都度課金(TVOD)で最新作を楽しむというユーザーにとって、Fire TV+Amazonビデオの組み合わせはかなり魅力的といえる。
なお、Netflixやniconico、HuluなどAmazon以外のサービスの作品は、音声検索できない。
操作はシンプルでわかりやすいが、リモコンで欲しかったのはボリュームボタン。Fire TVはHDMI CEC対応で、テレビとの連動動作が可能。Fire TVリモコンのボタンを押してテレビを起動し、自動でFire TVに入力切替し、Fire TV操作を行なうところまではできるのだが、Fire TVリモコンではテレビの音量操作はできない。結果的にテレビのリモコンも使うことになる。
HDMIメディアプレーヤーにそこまで求めなくても、とは思うが、同時期に発売の新Apple TVでは、リモコンにボリュームボタンを装備。電源ON/OFFからコンテンツ選択、ボリューム操作まで行なえて、これがなかなか快適なのだ。
NetflixやGYAO!など他サービスにも対応。Netflixは4K対応
Fire TVではアプリの追加も可能。NetflixやHulu、GYAO!、niconicoなどの映像配信サービスに加え、DLNAプレーヤーのVLC、ベルリンフィル・デジタルコンサート、BBC、TED、NHK Worldなど多くのアプリが用意されている。
注目したいのはNetflix対応。というのも、Netflix対応の4Kテレビは2015年に数多く発売されたものの、テレビ以外のデバイスでは、Netflix 4K対応はほとんどない。例を挙げればパナソニックのBDレコーダ「DMR-UBZ1」や「NVIDIA SHIELD」程度。Fire TVは、現状1万円強でNetflix 4Kが体験できる希少なデバイスなのだ。
プライムビデオとNetflixのライバル関係を考えると皮肉ではあるが、この節操の無い対応ぶりが、「映像だけで利益を得るのではなく、プライム全体で利益が出ればいい」というAmazonの強みともいえる。
UIはPlayStation 4やテレビのNetflix機能とほぼ共通で、プライムビデオともそれほど変わらないので、戸惑うことはない。PS4でHD画質で全話見た「ナルコス」を見てみたところ、再生開始当初はさほど違いは感じなかったのだが、じっくり作品を見ていると町並みの汚れやクローズアップ時の顔と背景の奥行き感、森を空撮した映像の立体感や精細感などでしっかりと違いが感じられる。お気に入りの作品を、改めて4Kで見ると新たな発見があるかもしれない。
Netflixの4Kコンテンツも、「ナルコス」、「デアデビル」、「センス8」、「ブラッドライン」などオリジナルコンテンツが大半を占める。個人的にはオリジナル作品自体の魅力では、Netflixのほうが好みだ。ただ、Fire TVを買えば、Netflixもプライムビデオも、それぞれの4Kコンテンツを視聴できるという点は大きな魅力と感じる。
YouTubeやHulu、GYAO!などのアプリも用意されており、どのサービスを利用していてもFire TVで一通り楽しむことが可能だ。Huluは新Apple TVでまだアプリが用意されていないが、Fire TVではしっかり対応されている。ただ、いろいろアプリを切り替えるたびに、それぞれのサービスの操作方法がまちまちで、UIの統一感という意味ではわかりにくさは残る。
また、音楽や写真の連携機能も備えており、Amazonミュージックで購入した音楽や、Amazon Cloud Driveにアップロードした写真の表示も可能。オーディオシステムとしても利用できる。またアプリストアでダウンロードしたゲームにも対応する。
「いま4Kを見たい」に最適なプレーヤー
Netflixの参入というトピックもあり、盛り上がりを見せた2015年の映像配信。その中でも、プライムサービスという付加価値とともに、サービス開始したプライムビデオの立ち位置はかなりユニークだ。
一般的なSVODサービスと捉えると、正直コンテンツ数はまだ物足りないが、ある意味、プライム会員向けの“おまけ”で、SVODがついてくると考えると、「これだけ揃っていればお得だな」と感じてしまう部分はある。それでいて、4K対応やオフライン再生など機能面ではトップクラス、さらに独自の4Kコンテンツなど、お得感とコンテンツ、機能のバランスが優れている。
Fire TVもよく出来たメディアプレーヤーで、Amazonサービスと密接に連携した音声検索や4K対応など飛び抜けた特徴が何より魅力的。特にNetflix非対応の4Kテレビユーザーや4Kディスプレイの組み合わせで、「いま4Kを手軽に見る」という点においては、Fire TVは最もリーズナブルでこなれた選択肢といえる。
Amazon Fire TV | Fire TV Stick | Fire TV Stick 音声認識リモコン付属 |
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