藤本健のDigital Audio Laboratory
第856回
音楽プレーヤーとしても十分!? 楽天の激安スマホ「Galaxy A7」のオーディオ性能をテスト
2020年6月29日 11:47
普段はiPhoneを使っているため、最近のAndroid事情をよく知らない。少しはチェックしなくては……と最近強く感じていたのだが、疎くなっているだけに、どれを選べばいいか分からないし、いざ値段を調べると結構いい値段なので、ちょっと試すだけのために買うというのも気が引ける。そんな中、楽天モバイルが、端末代金を実質タダ同然でキャンペーン展開していると知り、よく分からないながら「Galaxy A7」なるものを先週入手した。
使ってみると、結構パワフルであり、オーディオ再生機能もしっかりしているし、USBオーディオインターフェイスとも簡単に接続することができた。試しに内蔵のオーディオ機能で音を聴いてみると悪くない感じだ。
今回はGalaxy A7の内蔵オーディオ機能がどの程度の性能を持っているのか、チェックしてみることにした。
実質タダ?! 楽天モバイルのスマホ「Galaxy A7」を取り寄せた
普段、楽天系のサービスは使っていないのだが、ここ最近は楽天モバイルの広告が一際目立つ。「Rakuten UN-LIMIT」(月額2,980円の料金プラン)や、「Rakuten mini」(世界最小・最軽量を謳う楽天のスマホ)などの情報が、自然と目に入ってくる。
最初は自分には無関係なもの……と思っていたのだが、そのうちSNSで知人、友人が「申し込んだ」、「届いた」、「実質タダだった」などというコメントをしているのを見かけて、だんだん気になってきた。
彼らの情報によると、「事務手数料3,000円+消費税はかかるけど、通信料は1年間は無料で、嫌なら途中で解約できて手数料は不要」、「“Rakuten mini”なら6月16日までに申し込めば1円で入手できるけど、Android端末としては非力」、「Galaxy A7であれば17,000円+税だけど、“Rakuten UN-LIMIT”と同時に申し込めば15,000円相当のポイントが還元される」、「オンライン契約して、Rakuten Linkを使えば3,000ポイントもらえる」、「最初に払う事務手数料の3,300円分もポイント還元されるらしい」……などなど。
情報量が多すぎて消化できないけれど、新規参入キャリアがドコモ、ソフトバンク、auと同じように顧客獲得のためのキャンペーンを行なっているのだな、ということは十分理解できる。
もしかしたら、何らかのトラップがあるのでは? とも思ったのだけれど、ちょうどAndroid端末が欲しかったところなので、祭りに乗ってみるのはアリかもしれない。ということで、申し込んでみたのが今回のGalaxy A7だったのだ。
ネットで申し込んでみたところ、2日後にはもう到着。Android端末であるということ以外、ほとんどよく分からないままに届いたが、箱を開けてみると想像して以上に軽いし、見た目にもカッコいいスマホだった。
自分が買ったAndroid端末としては2016年に買った「Nexus 6P」以来4年ぶりなので、かなりの浦島太郎状態である。
Nexus 6PがUSB Type-C端子だったので、AndroidはみなUSB Type-Cに切り替わっているのだろうと思い込んでいたら、このGalaxy A7はmicroUSB。しかもヘッドフォン端子もあった。
「結構古い機種なのでは?」と調べてみたら、発売は2019年10月だそうで、手持ちのiPhone 11 Proとほぼ同じ。もっとも海外では2018年9月に発表されていたらしいが……
端末の代金が実質タダになるキャンペーンとはいえ、手元に届いてからスペックを調べるというのも妙な話しなのだけど、Galaxy A7は、CPUが8コアのExynos 7885/オクタコア 2.2GHz+1.6GHzというもので、RAMは4GB、ストレージ容量は64GB。
そしてディスプレイは、約6インチのAMOLEDで、解像度はFHD+(2,220×1,080ドット)。そしてメインカメラは約2,400万画素(広角)+800万画素(超広角)+500万画素(ぼけ)というトリプルカメラ構成だった。使わずに放置状態だったNexus 6Pと比較すると、断然パワフルなマシンだ。当初はテザリング専用機として使えばいいかと思っていたけれど、これは結構遊べそうだ。
ちなみに、楽天モバイルは楽天回線エリアなら容量無制限で使えるらしく、調べてみると横浜の自宅周辺は完全にエリア内となっている。これはラッキーと思い、電源を入れてチェックすると、パートナー回線=au回線と表示された。
まあ、ウチの周辺は電波が弱いのかな……と駅まで歩いてみたけれど、やはりパートナー回線のまま。そこから東横線に乗って渋谷に向かっていったが、横浜市内はずっとパートナー回線のまま。川崎市に入ってもその状況は変わらない。
それから、しばらくしてちょうど多摩川に差し掛かったところで、楽天回線エリアという表示になった。その後、都内をいろいろ回ったが、地下鉄エリア以外は、ほぼ楽天回線エリアという感じだった。サービスエリア・マップにおいて東横線沿線をエリア内と表示しているのは、かなり誇張があるのでは……という印象ではあるが、パートナー回線であっても月に5GBまで使えるようであり、とりあえずはタダで使っているのだから、文句を言う筋合いではないのかもしれない。
Galaxy A7のオーディオ性能を検証する
さて、ここからが本題だ。
このGalaxy A7に内蔵されているヘッドフォン端子からのオーディオ出力、どの程度の性能があるのかチェックしてみよう。テストは、以前iPhone X(第743回)や、iPhone XS(第782回)で行なったのと同じ方法だ。iPhone 11 ProのときはLightning接続のアダプタを通じてのヘッドフォン出力であり、iPhone XSのときと完全に同じだったので、測定は見送ったが、どの程度の違いがあるのだろう?
といっても、以前行なった測定はとてもシンプルなもの。48kHz/24bitのフォーマットのWAVファイルで-3dBの1kHzを再生し、それをWindowsで取り込んだらどうなるかを見るというものだった。今回オーディオインターフェイスには、Steinbergの「UR22C」を使用している。
一つ気になったのは、プレイヤーアプリに何を使うかという点だ。標準ではGoogleのPlay Musicというアプリが入っているが、余計な加工などをせず、そのままシンプルに出せるアプリはないだろうかと思い、探して見つかったのが「foober2000」だった。普段Windows版のfoober2000は活用しているが、Android版があったのは知らなかった。ネットの情報を見る限り、これを使えば間違いはなさそうなので、これをインストールし、サイン波を再生し、測定を行なった。
iPhone XSの結果とGalaxy A7の結果を並べてみるとその差が見えてくる。
iPhone XSだとS/Nが82.56dBであったのに対し、Galaxy A7は80.63dB。グラフを見てもiPhone XSでは高調波が少し出ているという感じだが、Galaxy A7はiPhone XSと同等の高調波に加え、低域も高域もノイズ成分が確認でき、それが数字にも表れている格好となった。
もう一つ行なった実験が、同じ48kHz/24bitフォーマットで20Hz~24kHzまでのサイン波のスウィープ信号を流すとどうなるかというもの。これもiPhone XSのものとGalaxy A7のものを並べてみたが、こちらは見た感じではほとんど変わらない印象だった。
iPhoneの測定において、48kHz/24bitフォーマットとしていたのは理由がある。
iPhoneの場合、アプリ上では96kHz/24bitでも192kHz/24bitでも再生することは可能だし、USB接続のオーディオインターフェイスやUSB-DACを利用すれば、これらのハイレゾデータはもちろん、DSDデータの再生も行なえる。
しかし内蔵するオーディオ機能を使った場合は、48kHzのサンプリングレートまでにしか対応していないため、アプリ上で再生しても強制的に48kHzにダウンコンバート。最高周波数はサンプリングレートの半分である24kHzまでとなっていた。
ただ、それはiPhoneでのことで、Galaxy A7はハイレゾ対応している可能性もある。ところが、スペックを調べてみてもオーディオ関連情報はなく、ネット検索してもそれらしい情報も見当たらない。
ならば、実験を行なって検証するまでだ。そこで用意したのは、192kHz/24bitフォーマットで20Hz~96kHzまでに設定したスイープ信号。これを先ほどと同様、foobar2000を使って再生し、Sound Forgeを使ってWindowsに取り込んでみた。
再生中の音をヘッドホンでモニターしながらSound Forgeの画面を見ていると、だんだん音が高くなっていき18kHzあたりで、筆者の耳ではまったく聴こえなくなった。が、Sound Forgeの画面上ではしっかり信号は出ているようで、まだまだ伸びていく。しかし、最後までいかずに途中でストンと落ちて消えてしまった。やはり、iPhone同様、実際のサンプリングレートは48kHzが限界で24kHzまでの音域ということなのだろうか。これを改めてWaveSpectraで解析した結果がこちらだ。
これを見ると、48kHzまでは音が出ていて、そこが限界となっている。ここでバッサリ落とすローパスフィルターが入っているということは考えにくいので、Galaxy A7が扱えるサンプリングレートが96kHzまでとなっていることが推測できる。
つまりハイレゾプレーヤーとしても十分使える機材だったのだ。これが実質タダで入手できたのだから、かなりお得だったような気がする。
さらにDTM系のアプリをいくつかインストールして試してみたところ、シンセサイザー・音源系のアプリにおいては、iOSとほとんど差がないほど、レイテンシーは小さくなっており、違和感なく弾けるようになっている。また、microUSB端子にOTGアダプタを接続の上、オーディオインターフェイスに接続してみたところ、SteinbergのUR22Cでも、RolandのRubix24でも、しっかり使うことができた。
ついでにAndroid版のDAWであるFL Studio mobileを起動した上で、OTGアダプタ経由でMIDIキーボードのKORG「nanoKEY 2」を接続してみると、これもしっかりと認識し「nanoKEY 2」で演奏することもできた。
ただし、iOSでのCoreMIDIのように接続すれば、即どのアプリで使える、というわけにはいかない模様。アプリによって認識の可否はあり、設定が必要なもの・不要なものそれぞれではあったが、とりあえずはMIDIキーボードも利用できそうだ。
これらについてはまた機会があれば紹介してみようと思うが、ひとまずは当面いろいろ遊べそうなAndroidオモチャが手に入ったという印象だ。